オカムラのDXについてはこちらを参照
現場の声から始まるDX―― オカムラが2021年から実施している人財育成プログラム「DXラーニングプラットフォーム(以下DXLP)」は単なる研修ではなく、従業員一人ひとりがデジタルを活用して「やりたいこと」を実現できる場でもあります。個人の本気の思いを、会社を動かす原動力へ。すでにいくつかの社内プロジェクトがかたちになっており、オカムラライブスマイルでも紹介してきました。今回は、DX戦略部 DXアカデミー担当 宇高 沙織に、DXLPの意義と取り組みへの思い、修了生たちが起こしている変化やこれからの展望について聞きました。
2025年8月取材
インプットとアウトプットの両軸で進めるプログラム
――まずはDXLPがどのようなプログラムなのか教えてください。宇高 沙織(以下、宇高):DXLPは、オカムラグループ内の幅広い領域において、現場から新規事業や業務改善のアイデアが湧き上がるDX風土を醸成することを目的にした人財育成プログラムです。
研修プログラムではありますが、他の研修と違うのは会社や上司からの指示ではなく、立候補制で参加者を募っていること。それと最後にプロポーザルというかたちで会社に提案すること。学んで終わりではなく、必ずアウトプットにつなげるのが特徴です。アウトプットがあるからインプットにも一層力が入ります。質の高いアイデアを引き出すためにインプットにも力を入れている点が、一般的な社内ビジネスコンテストなどとも違うところですね。
DX戦略部 DXアカデミー担当 宇高 沙織
宇高:2021年に開始し、今年(2025年)で5期目を迎えています。初年度の定員は50名で、100名以上の応募がありました。スケジュールとしては、例年6月から約半年間でセミナーを10回ほど開催し、その後チームまたは個人でプロポーザルを提出してもらう流れです。選考を経て一部は年明けに社長・役員プレゼンに進み、特に有望なものは社内プロジェクト化されます。これまで出された提案は約150件。そのうち10数件が社内プロジェクト化され、すでにかたちになったものもあります。
――オカムラが人財育成にDXを取り入れた理由は何でしょうか。
宇高:人財育成ありきで始めたのではなく、DXをするためには人財育成が必要だと考えたのがスタートです。昨今、デジタル技術の普及で個人の発信力が高まり、ソーシャルメディアでも社会の多様性が可視化されていますよね。元々世の中は多様なものだったと思いますが、それがデジタルの力、スマートフォンの普及などでちゃんと見えるようになった。多様な社会に対応していくためには、企業に所属している従業員一人ひとりの声や視点も活用していく必要があります。またトランスフォーメーションの推進には、常に学び続けられる風土が欠かせません。そのための仕組みとして、DXLPを立ち上げることにしたのです。
試行錯誤しながら全社に広げた変革の裾野
――宇高さんは最初からDXLPの検討に関わってきたそうですね。これまでの取り組みを振り返って、どのような進化や変化を感じますか。「修了生の活躍が可視化され、次の参加希望者が生まれる好循環に」(宇高)
宇高:2021年のプロジェクト発足当初は、DX戦略部の前身であるDX推進室にいました。第1期は手探りでのスタートでしたが、それでも「やりたい」と手を挙げてきてくれた人たちと試行錯誤しながら進めました。コロナ禍だったので当初はオンラインのみで、第3期から少しずつリアル開催を増やしました。今、第5期が活動中ですが、修了生はすでに200名を超え、ほとんどの部門にDXLPの修了生がいる状態。社内でメンバーの裾野がかなり広がったと思います。
最近では日々の業務で新たな経験を重ねた修了生から、「またプロポーザルを出したい」という声が上がっており、2024年度は修了生からのプロポーザルも受け付けたところ、5組の応募がありました。
――デジタル技術の進化によっても、取り組みの内容は変わっていきそうですね。
宇高:そうですね。この5年間で大きかったのは、生成AIの登場です。第1期や2期では技術的に不可能だった提案が実現可能になるなど、実現できることの幅が一気に広がりました。また第3期ではローコード(※1)ツールを社内に浸透させる市民開発プロジェクトが立ち上がり、身近な業務改善の実現性も向上しました。テクノロジーの進化で土台が強化され、継続していることでちゃんとパスがつながっていることを実感しています。運営としては、提案の精度を高めるために中間段階ですべての提案にフィードバックを返すことや、企画力を上げるための壁打ちを丁寧にすることを意識しています。
※1:ソースコードをできるだけ書かず、視覚的な操作によって短期間で高品質なシステム開発を行う手法
――DXLPを推進する中で新たな気づきはありましたか。
宇高:オカムラの社内に熱意と能力をもつ人がこれほどたくさんいるのを目の当たりにして、心強く感じました。これは私だけでなくて、参加してくれた他のメンバーも言っています。修了生からは、「現状のシステムや仕事の進め方を変えたいという声を上げてもいいんだと初めて実感しました」といった声もよく聞きます。トランスフォーメーションへ向けた風土醸成が少しずつ進められていると思います。
最近では日々の業務で新たな経験を重ねた修了生から、「またプロポーザルを出したい」という声が上がっており、2024年度は修了生からのプロポーザルも受け付けたところ、5組の応募がありました。
――デジタル技術の進化によっても、取り組みの内容は変わっていきそうですね。
宇高:そうですね。この5年間で大きかったのは、生成AIの登場です。第1期や2期では技術的に不可能だった提案が実現可能になるなど、実現できることの幅が一気に広がりました。また第3期ではローコード(※1)ツールを社内に浸透させる市民開発プロジェクトが立ち上がり、身近な業務改善の実現性も向上しました。テクノロジーの進化で土台が強化され、継続していることでちゃんとパスがつながっていることを実感しています。運営としては、提案の精度を高めるために中間段階ですべての提案にフィードバックを返すことや、企画力を上げるための壁打ちを丁寧にすることを意識しています。
※1:ソースコードをできるだけ書かず、視覚的な操作によって短期間で高品質なシステム開発を行う手法
――DXLPを推進する中で新たな気づきはありましたか。
宇高:オカムラの社内に熱意と能力をもつ人がこれほどたくさんいるのを目の当たりにして、心強く感じました。これは私だけでなくて、参加してくれた他のメンバーも言っています。修了生からは、「現状のシステムや仕事の進め方を変えたいという声を上げてもいいんだと初めて実感しました」といった声もよく聞きます。トランスフォーメーションへ向けた風土醸成が少しずつ進められていると思います。
DXLP 第5期キックオフの様子
DXLPから生まれた社内プロジェクトとそこから始まる社内共創
――DXLPをきっかけに生まれた社内プロジェクトについて具体的に教えてください。宇高:先ほどお伝えしたとおり、すでに10数件が社内プロジェクト化しています。従業員ならではの視点からさまざまなプロジェクトが生まれており、例えばオフィス環境事業ではオフィスデザイン・レイアウト診断「OFFICE KIT(オフィスキット)」、商環境事業では「商環じたん道具DX」といった新しいサービスやシステムが続々と登場しています。
「OFFICE KIT」担当者から
コロナ禍で働き方が多様化し、お客様企業において従来は主に総務部門が担当していたオフィスづくりを、部門横断プロジェクトなどで進めるケースが増えてきました。オフィスづくりの未経験者の参加も増える中、検討の道しるべとなるようなサポートを提供したいと考え、ウェブ診断ツールとして「OFFICE KIT」を開発しました。2024年12月の公開以来、非常に多くのお客様に体験いただき、「診断結果から社内の議論が活発になった」「さまざまなアイデアを知ることができ、オフィスづくりへの考えが深まった」など嬉しい声をいただいています。
オフィス環境事業本部 デマンドセンター 青木 佳織
「商環じたん道具DX」の担当者から
長年、時間と手間をかけて対応している商環境での課題、「積算業務(※2)」と「レイアウト作図業務」の効率化を図りたいという思いから提案し、開発に至りました。積算業務効率化についてはPDF形式の図面ファイルから積算することで、「CAD依存」、「手書き積算」、「積算ノウハウの属人化」から脱却できるシステムです。レイアウト作図業務効率化については、「誰でも」「正確に」「素早く」作図ができ、作図した図面が積算システムとも連携できるシステムです。
商環境事業本部 店舗デザイン部 杉本 昌則
※2:平面図や仕様書などから什器や材料などの数量を算出し、見積もりを算出すること
宇高:「声を上げることで会社を変えられる」「よりよい仕組みを自分たちでつくっていける」という実感をもてることは、風通しのよい風土づくりに貢献していると思います。事業部をまたいだチーム編成でプロポーザルを出す人もいて、社内共創の機会としても機能しています。
「業務改善を中心にさまざまなプロジェクトが立ち上がっている」(宇高さん)
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プログラム修了後も続く挑戦の機会
――現時点で見えている課題や今後取り組んでいきたいことがあればお聞かせください。宇高:課題は参加者の通常業務とのバランスの取り方や、プロポーザルが社内プロジェクト化された場合の推進体制などですね。通常業務もある中でDXLPを受講するのは大変なこともありますから、本人の熱意任せではなく、所属部門の理解やリソースの調整、取り組みを適切に評価する仕組みなども整備していく必要があると考えています。
アイデア出しは習慣化が大事なので、継続的にアイデアを出せる機会もつくっていきます。現在、修了生を対象にした「アドバンスドシリーズ」という試みの一環として「宇宙ワークショップ」を企画しています。宇宙飛行士の宇宙滞在中の悩みをヒントに、地上における新たなアイデアを出してみようという内容です。修了生同士の交流機会にもできそうです。
「DXLP発の社内プロジェクト推進は、全社を巻き込んで取り組みたい」(宇高さん)
宇高:会社にとってはトランスフォーメーションの原動力に、参加する個人にとっては自分の思いを実現する機会になるとよいと思っています。個人が本気でやっていることだからこそ、会社のトランスフォーメーションの原動力になるものが生まれると思いますし、そこに会社も取り組むことで、個人はさらに本気になれる。両輪で動かしていくのが理想です。
――DXLPは、本気で取り組む人を後押しする場ですね。
宇高:はい。オカムラでは今たくさんのプロジェクトが生まれていて、トランスフォーメーションの原動力になっています。社内には現業の事業以外にも、新しいことを考えたり、新しいものに触れたり、新しい人脈をつくれる機会があったりします。DXLPもその一つで、仕事をするうえでの疑問やアイデアを提案できる場であり、「働きがい改革 WiL-BE2.0」の一環でもあります。刺激や発見が多い環境が、変革の原動力になっていると思っています。
インタビュー後記
スタートした当時、まだ内容が固まっていない段階で100名以上が「やりたい」と手を挙げ、5年間で約200名がプログラムを修了。通常業務をこなしながら、約150件の提案を生み出すのは、決して容易ではなかったはずです。それだけの熱意をもった人が大勢いること自体が、オカムラの強みなのでしょう。このインタビュー後に実施された「宇宙ワークショップ」も、活発な意見が飛び交い大いに盛り上がったそうです。デジタル技術はあくまで手段。一人ひとりの「変えたい、よりよくしたい」という意志を変革につなげる風土の醸成こそが、DXLPの意義なのだろうと思いました。(編集部)