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未来への種まき―― オカムラがクエストエデュケーションに参画する理由

2025.09.30
企業パーパスに「人が活きる社会の実現」を掲げるオカムラ。この「オカムラを知る!」では、オカムラグループのさまざまな取り組みを紹介していきます。

中高生と企業が本気で対話する「クエストエデュケーション」―― 教育と探求社が2005年にスタートした、現実社会と連動しながら「生きる力」を育む探究学習プログラムです。オカムラは、このプログラムが提供する「コーポレートアクセス」に2022年から参画。コーポレートアクセスは、企業が生徒たちにミッションを提示し、共に考え、学び合う取り組みです。
従業員が学校を訪問し、対話を重ねる中で生まれるのは、生徒にとっての気づきだけではありません。パーパスやオカムラが提供する価値を自らの言葉で語り、生徒の発想に揺さぶられることで、従業員自身も多くの学びを得ているといいます。
今回は、プロジェクトの起点から現在までの歩み、そして参画する意義について、サステナビリティ推進部 部長 遊佐希美子に聞きました。
2025年7月取材
 

中部支社の直感から始まり、全社プロジェクトへ

――まず、クエストエデュケーション「コーポレートアクセス」への参画が始まったきっかけを教えてください。

遊佐 希美子(以下、遊佐):2019年から、中部支社の共創空間「Open Innovation Biotope “Cue”」で、「中高生の学び」「探究」をテーマにさまざまな活動を展開していた背景がありました。この時の縁で、コーポレートアクセスを展開する教育と探求社さんとの接点が生まれ、2022年度にトライアルとして初参画しました。実際に参加してみたところ、共創空間のメンバーを中心とするWORK MILL(※)プロジェクトメンバーも「これはやるべき取り組みだ」と直感したそうです。
当時はまだ、部門・プロジェクト単位の活動だったのですが、参加した従業員たちから、「一部のメンバーだけではもったいない。会社全体として取り組むべきことだ」という声が強く上がったんです。その声は、サステナビリティ推進部にも届きました。
当初、私自身は「これは大変そうだな……」という印象でした(笑)。でも話を聞くうちに、「意味のある取り組みだ」と確信するようになって。翌2023年度からはサステナビリティ推進部が事務局を担い、全社プロジェクトとして本格的に動き始めました。

※ オカムラによる「はたらく」をさまざまな視点で見つめ、働き方や働く場の新しい価値を引き出すためのさまざまな活動を行うプラットフォーム
 
サステナビリティ推進部 部長 遊佐 希美子
サステナビリティ推進部 部長 遊佐 希美子
――全社で取り組んでいこうと思えた理由は、どのようなものだったのでしょうか?

遊佐:最初の頃は、「これは意味のあることだからやってみよう」という感覚でした。しかし、取り組みを重ねる中で、クエストエデュケーションの意義を私自身やチーム内でも言語化できるようになっていったんです。
まずひとつは、「次世代育成支援」であること。これは言うまでもなく、社会貢献の一環として中高生の学びや成長を支える取り組みであり、企業としての責任でもあります。
次に、「α世代への認知向上」。単に社名やロゴを知ってもらうだけでなく、オカムラの従業員がどんな考えを持ち、どんな価値観で働いているのか、その中身を知ってもらうことが、より深い理解につながると考えています。
3つ目は、「従業員自身の成長」です。中高生との対話は、日常業務とは異なる視点や問いに触れる機会でもあります。関わった従業員からは、「仕事では得られない学びがあった」「自分の価値観が揺さぶられた」という声が多く聞かれます。
そして4つ目が、「新たな価値やサービスを生み出す気づきを生むこと」です。生徒の自由な発想や柔軟な視点から、本業にもつながるようなインスピレーションを得ることも珍しくありません。
こうして見ると、「教育支援」としてだけでなく、オカムラにとって多面的な価値を持つ取り組みだと改めて感じます。
 
「継続の中で私たちが実感してきたことを改めて4つの目的として言語化」(遊佐)
「継続の中で私たちが実感してきたことを改めて4つの目的として言語化」(遊佐)

 

パーパスを共通言語に、学生たちと本気で対話する

――クエストエデュケーション「コーポレートアクセス」では、生徒との対話が中心になりますが、どのような関わり方をされているのでしょうか。

遊佐:コーポレートアクセスは、企業からミッションを提供するだけでなく、授業の場に従業員が出向いて、生徒たちの学びに伴走する点が特長です。生徒たちのグループワークに加わって一緒に考えたり、発表に対してフィードバックを送ったりと、関わり方は多様です。
中でも印象的なのが、生徒たちが事前にしっかりと企業研究をしてきてくれること。オカムラの事業内容だけでなく、パーパス「人が活きる社会の実現」についても、きちんと調べたうえで授業に臨んでくれるんですよ。
 
「生徒に語ると自分自身にも問いが返ってくる。それがこの取り組みの醍醐味」(遊佐)
「生徒に語ると自分自身にも問いが返ってくる。それがこの取り組みの醍醐味」(遊佐)
――そんなに深いところまで知ってもらえるのは、オカムラにとっても刺激になりますね!

遊佐:そうなんです。ですから、私たちも生半可な姿勢では応えられません。オカムラが何を目指している会社なのか、自分自身がどう捉えているのか——、それを自らの言葉で語ることが求められます。
同時に、パーパスが共通言語になっていることが、本当に大きなことだと考えています。私たち従業員と生徒たちが、本気で対話するための土台がパーパスなんですね。

――パーパスの共有は、オカムラにとってどんな意味を持っていると感じますか。

遊佐:この構造があるからこそ、対話の深度がまったく違ってきます。ただ提案を受けてコメントするだけでなく、「それは、まさに“人が活きる社会“につながるアイデアだね」といった、本質的なフィードバックが生まれる。単なる教える/教わるの関係ではなく、対等な関係での対話として成立していくんです。
そして何より大きいのは、その過程で従業員自身がオカムラのパーパスを再認識することです。普段の業務では、なかなか口にする機会がありませんが、生徒に伝えようとする中で、「自分はこのパーパスにどれだけ向き合えているか」と自然と考えるようになります。

――クエストエデュケーションに参加した従業員からは、どのような声がありましたか。

遊佐:実際、現場では「生徒の視点に刺激を受けた」「パーパスの意味が深く理解できた」といった声がよく聞かれます。パーパスを軸にした学び合いは、生徒にとっても、私たち従業員にとっても、等しく大切な機会になっていると感じています。
 

“伝わらなかった提案”に涙したチームが教えてくれたこと

――これまでのクエストエデュケーションで、特に印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
 
「『教える』ではなく、『一緒に考える』。その距離感が大切」(遊佐)
「『教える』ではなく、『一緒に考える』。その距離感が大切」(遊佐)
遊佐:ある学校を訪問したときのことです。複数のグループに分かれていた中で、あるチームがものすごく悔しがっていて。「このアイデア、すごくいいと思ったのに、なんで伝わらなかったんだろう」と、本気で涙を流していたんです。中間発表の場で他の生徒から発表内容を疑問に思うコメントが続いたのが悔しかったようで、「納得がいかないまま授業が終わってしまった」と。

――それはまさに、本気で取り組んでいたからこその感情ですよね。

遊佐:そうなんです。やらされている勉強だったら、そんな反応にはならないと思います。自分たちで問いを立て、調べて、考えて、出した答えだったからこそ、伝わらなかったときの悔しさも大きい。大人の私たちでも、なかなかそこまで感情を表に出す場面ってないですよね。
私はその光景を見て、「これこそ探究なんだな。この子たちは自分の頭で考えて、身をもって社会に向き合っている」と感じて、すごく心を打たれました。今後、この悔しさを糧にして「どう伝えたら相手に届くか」を考えていくんだろうなと思うと、それもまた貴重な学びなんですよね。

――生徒の姿から、大人が学びを得る機会でもあるんですね。

遊佐:そんな生徒の姿を目の当たりにしたオカムラの従業員も、大きな刺激を受けていました。あるメンバーは、「自分が仕事で否定されるのが怖くて、つい当たり障りのない提案に逃げていた」と話していて。しかし、生徒たちが真っ直ぐにぶつかって、周囲や企業からの訪問者の反応を受け止めて、また挑戦しようとしている姿に「ハッとした」と言っていました。
私たち大人は、仕事においても常識の中で「ある程度の解答を出すこと」がゴールになってしまいがちではないでしょうか。でも、生徒たちは「正解がない問い」に対しても、臆せず自分の考えを言葉にして、他者と向き合っていくんです。その姿勢に触れることは、参加する従業員たちが自分の働き方や考え方を見つめ直すきっかけになっていると思います。
 

過去の取り組みはこちらから

従業員自ら、手を挙げてプロジェクトへ参加するように

――プロジェクトに参加する従業員は、どのように募っていますか。
 
「プロジェクト参加募集のツールも工夫。参加の意義や目的が理解してもらえるようになってきた」(遊佐さん)
「プロジェクト参加募集のツールも工夫。参加の意義や目的が理解してもらえるようになってきた」(遊佐さん)
遊佐:学校訪問の対象学校に近い拠点や部門を対象として2024年度からは、学校訪問のメンバーを公募制に切り替えました。そして2025年度も立候補してくれた従業員でチームを編成しています。「やってみたい」「関わってみたい」と自発的に名乗り出てくれる人が増えてきて、大変うれしく感じています。
プロジェクトの認知度が少しずつ高くなっているのもありますが、参加した従業員からのクチコミ効果も大きいようです(笑)

――自発的に関わる人が集まってくることで、プロジェクトの雰囲気も変わりそうですね。

遊佐:はい。それがすごくいい循環を生んでいると感じています。面白いのは、学校訪問メンバーの年齢や所属・職種に偏りがないこと。若手からベテラン、営業部門、生産部門、デザイナー職の従業員や、普段人前で話す機会の少ない人まで、実に多様な人たちが手を挙げてくれるんです。
皆さん、最初は不安もあるようですが、生徒と向き合っていく中でどんどん表情が変わっていきます。回数を重ねるごとに自信がつき、自分の言葉でオカムラを語れるようになっていく。そんな姿を見ると、こちらも励まされます。

――自分の言葉でオカムラを語るということは、従業員が自分自身を見つめ直す機会にもなっている気がします。
 
「生徒たちの素直な反応や質問に触れ、オカムラへの誇りや愛着を実感する従業員も多い」(遊佐)
「生徒たちの素直な反応や質問に触れ、オカムラへの誇りや愛着を実感する従業員も多い」(遊佐)
遊佐:まさにそうです。訪問先の生徒たちの前での自己紹介の中で、これまでの仕事やキャリアを語るうちに、「自分は何を大切にして働いているのか」「この会社のどこに魅力を感じているのか」が自然と浮かび上がってくる。そして、参加した従業員の多くが、「これはもっと多くの人に経験してほしい」と言ってくれます。中には「次も参加したい」という方もいれば、「来年は別の人に譲るね」と、仲間にバトンを渡してくれる方も。そんなふうに自然と輪が広がっていくことが、何よりうれしいなと思っています。

学びを共にするパートナーとして、オカムラに感じること
(教育と探求社)

オカムラさんは、全国の中高生に学びの機会を提供するだけでなく、関わるプロジェクトメンバー自身の変容や成長にも意識を向けて取り組まれていると感じています。特に印象的なのは、「上下」ではなく「共に学ぶ」という姿勢です。生徒との距離が近く、一緒につくっていこうというスタンスが一貫して見られます。突飛なアイデアに対しても、「それは現実的ではない」と切り捨てるのではなく、むしろ面白がってくれる方が多いです。そのうえで、生徒がその発想に至ったプロセスを丁寧に問いかけてくださり、思考をさらに深めるような関わり方をしていただいています。
また、遠方や企業人との接点が少ない地域の学校にも積極的に訪問してくださり、交流そのものを楽しんでくださっている姿が印象的です。クエストカップでは、応援うちわを手づくりして生徒を励ましてくれるなど、その真摯な姿勢にはいつも心を動かされます。決まった正解がない時代だからこそ、社会人である私たちも、答えを決めつけずに共に学ぶことが大切だと思います。これからも、学びを軸とした共創が続いていくことを願っています。(教育と探求社 菅澤 想さん)


クエストエデュケーション参画は、未来への“種まき”

――ここまでお話をうかがって、非常に多くの意義や学びがあることが伝わってきました。とはいえ、企業活動として見ると、すぐに成果が目に見えにくい取り組みでもあるのかなとも感じます。

遊佐:おっしゃる通りです。たとえば、生徒たちが考えた提案の中には、「それ、実はすでにオカムラが取り組んでいる内容だよ」というものもあれば、「その視点は思いつかなかった!」という新しい気づきをもらえるものもあります。ただ、その気づきがすぐに事業化できるかといえば、なかなかそう簡単にはいきません。
それでも、生徒たちが見せてくれる柔らかくて自由な発想は、従業員の視野を広げてくれるし、「こんな価値観の人たちが数年もすると社会に出てくるんだ」と実感できる。それ自体が、企業としての気づきを生んだり、個々人の価値創造に向けた準備になったりすることもあります。

――生徒の発想が従業員にプラスの効果となっているわけですね。

遊佐:はい。そうした出会いや対話を通じて得られる気づきや視野の広がりは、すぐに事業や成果につながるものではないかもしれません。でも、だからこそ長い目で見て、しっかりと継続していく価値があると感じています。クエストエデュケーションで得られる生徒たちの発想や問いかけは、私たちの中に静かに残り続けます。そして、時間をかけて何かの形で花開いていく—— そんな“未来への種まき”だと考えているんです。
私たちオカムラがこの取り組みを続けているのは、「今すぐ成果が出るから」ではなく、「このプロセスそのものが意味を持つ」と信じているからです。そして、それを企業として受けとめ、育てていける土壌があることも、オカムラの強みだと思っています。
 
「どんな関わりでも、『その人らしさ』が自然とにじむような場にできれば」(遊佐)
「どんな関わりでも、『その人らしさ』が自然とにじむような場にできれば」(遊佐)
――冒頭で、クエストエデュケーションは「パーパスを軸にした学び合い」とうかがいました。遊佐さんは「人が活きる社会の実現」というパーパスをご自身の仕事を通してどのようにとらえていますか?

遊佐:サステナビリティ推進部の仕事は、社会とオカムラが将来にわたってサステナブルでいられるように「推進」することです。「サステナブルでいられる」とはすなわち「活きる」、活き活きした状態なのだと解釈しています。
人が活きるためには地球が活き活きした状態でなければいけないですし、人とはオカムラの直接的なお客様だけでなく、オカムラが創り出した空間に関係する「人」と捉えて、すべての人がハッピーになれるような、そんなことが私のオカムラ人生の中でできたらいいな、といつも思っています。文字にすると…… 強烈ですね(笑)

――サステナビリティ推進部の仕事は、パーパスを包含していて、クエストエデュケーションの取り組みにも通じますね。

遊佐:クエストエデュケーションへの参画を通して、私たちは企業として、ただ課題を提示するのではなく、ひとりの大人として、生徒たちに本気の対話で向き合うことを大切にしてきました。そこにあるのは、評価や成果を求める関係ではなく、目の前にいる相手を信じて、時間と気持ちを重ねていく関わりです。従業員が懐をひらいて語りかけることで、生徒たちもまた心を開き、互いに影響を与え合う関係が生まれていく。それは、未来を生きる世代との間に築ける、かけがえのない信頼の形だと感じています。
企業の中身—— つまり、働く人たちの姿勢や価値観が伝わってこそ、初めて“オカムラらしさ”が届くのだと思います。この活動を通じて、そうした企業の本質が伝わり、少しでも社会にあたたかな循環が広がっていけばうれしいです。
 
インタビュー後記
取材を通じて感じたのは、「学びの機会を届けている側」であるはずのオカムラの従業員自身が、実は一人ひとり強く学び、変化していることでした。生徒たちのまっすぐな言葉に触れ、パーパスを語り、自らの働く意味を見つめ直す。そのプロセスが社内に小さな風を吹き込み、やがては会社全体の空気を少しずつ変えていく。そんな静かなうねりのようなものを、確かに感じました。クエストエデュケーションは、単なる社会貢献活動ではなく、未来の社会と企業をつなぎ直す「共創」の場になっている。そんな実感をもらえるインタビューでした。(編集部)
 

Profile

遊佐 希美子
サステナビリティ推進部 部長
樹木に興味を持ち農学部(森林科学)で学ぶ。学生時代に学んだ木材に携わる仕事を志望して、2005年、株式会社岡村製作所(現:株式会社オカムラ)に入社。初任地は木製品を製造する高畠事業所で、生産管理を経験。その後、環境マネジメント部、総務部、この間2度の産・育休を経て2020年よりサステナビリティ推進部。2024年より現職。

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