My Okamura Way Vol.10
オフィス環境事業本部 フューチャービジネス推進事業部に所属する小貫 絢子(おぬき・あやこ)。2017年に新卒で入社、赤坂支店で法人顧客向けの営業を6年半経験後、社内「チャレンジ制度」(公募制度)を活用して、現在の部門へ異動。2023年9月から新規事業の創出と育成を担当しています。オカムラの未来をひらく新たな事業の創出に向けて取り組む、小貫のこれまでとこれからについて聞きました。2024年5月取材
お客様の想いを「読み解く力」を磨いた、営業時代
――はじめに、入社の経緯について教えてください。小貫 絢子(以下、小貫):大学で行われた企業説明会にオカムラが参加しており、興味を持ってエントリーしました。その過程でショールームを見学して、初めて触れたオフィス向けの家具やオフィスを想定した空間に惹かれたんです。それまで、インテリアに対する興味が薄くて、一人暮らしの自分の部屋も布団とテーブルしかないほどシンプルで、友人に「刑務所みたい」って言われてしまうほど(笑)。でも、オカムラのショールームに足を踏み入れたとき「自分もこんな空間づくりに携わりたい」と胸が高鳴りました。オカムラが提供する製品やサービスが、機能やデザインだけでなく、働く人々の生活スタイルに寄り添い、働くことを楽しくしようとしている点に共感しました。よくSNSなどで「出社が憂鬱」という投稿を目にしますが、出社が心待ちになるようなオフィス空間をつくりたいと思い、オカムラに入社しました。
――オカムラのショールームの見学は、小貫さんの価値観に影響を与えたんですね。入社後はどのような業務を担当されましたか?
小貫:総合職として、赤坂支店でオフィス環境事業の営業を6年半経験しました。オカムラの製品の購入を希望されているお客様のご要望をふまえ提案を行い、設計、生産・物流部門、関連会社などと協力しながら物件対応を進めていきます。
「初めてオフィスを移転する」「10年ぶりにオフィスを改装する」など、お客様のご要望はさまざまでしたが、共通して言えるのは、「オカムラを選んでもらうことは、決して当たり前ではない」ということ。だからこそ、安心して仕事を任せてもらえるように、お客様に寄り添って接することを心がけていました。
――「お客様に寄り添う」ために、どのようなことを大切にしていましたか?
小貫:お客様のニーズを理解し、その背景にある想いや企業の目標を読み解くことを大切にしていました。例えば、お客様企業の中期経営計画を読んで、理念やビジョンを理解し、提案に反映します。常にお客様に一歩踏み込んで対応し、ご依頼の裏にあるお客様の想いや願いを汲み取れるよう努めていましたね。そうすることで、ご依頼通りの提案にとどまらず、より深いレベルでお客様のニーズに応えられるようになると考えていたからです。
施工現場にもよく足を運び、納品にも立ち合っていました。営業の直接の担当業務ではないのですが、お客様の声を現場で聞く機会でもあるので、お客様目線を育むことにもつながります。お客様との信頼関係が強くなる実感を得られました。さらに、自分の提案内容が現場でどのように具体化されるのかを知ることができ、勉強になると同時に楽しさも感じられました。
目標はterminal.0 HANEDAでの共創と新規事業の創出
――現在は、フューチャービジネス推進事業部に所属されていますが、異動は小貫さんご自身の希望でしたね。小貫:はい、新しいチャレンジをしたくて、フューチャービジネス推進事業部が「チャレンジ制度」、いわゆる社内公募でメンバーを募集していることを知り、異動を希望しました。一番の理由は、オカムラの未来をつくる仕事をしたかったからです。
2018年、オカムラが制作した未来の働き方やオフィス環境を描いた動画(※1)が公開されました。その動画では、AI、IoTを活用した効率的かつ快適なスマートオフィス、それらを導入することで実現できる、少し先の活き活きとした働き方や暮らしが紹介されていました。とくに仕事のスケジュール管理だけでなく、同僚とのランチや家族イベントまで提案してくれるAIアシスタントのいる生活は、とてもワクワクしましたし、こんな未来を生み出してみたいと思いました。
2022年4月に設けられたフューチャービジネス推進事業部は、未来のビジネス機会を探索し、新たな事業や製品の開発を推進するための部門です。チャレンジ制度で募集を知り、2018年に動画を見てワクワクしたことを思い出し、自分の業務として携わりたいと応募しました。
※1:2018年に公開された『Tomorrow Work 202X:OKAMURA Future Vision』。「はたらく」の未来を描いたストーリーで、AIが生活に溶け込んでいる(公開終了)
小貫:もう一つの理由は、提案の幅を広げたかったからです。営業の仕事の中でも、提案することに楽しさを感じていたので、フューチャービジネス推進事業部に異動することで、既存の製品だけでなく、ソフト面も含め新しい切り口から、提案の幅を広げられるのではないかと感じました。現在の業務内容は企画の色合いが濃いですが、基本的には営業のマインドを持って仕事に臨んでいます。
オカムラのチャレンジ制度とは
新規事業や事業拡大により新たにメンバーが必要な場合や、部門の戦略上、知識を持つ人や有資格者が必要となった場合に社内で公募する制度です。社内の人財に新たな挑戦の機会を提供し、キャリアの幅を広げることを目的としています。また、新規事業や事業拡大に必要な人財を社内で募集することは、組織全体の活性化とスピードアップにもつながります。このチャレンジ制度の背景には、「一人ひとりの意見を尊重し、挑戦を後押しする」という、創業時から変わらないオカムラの企業文化があります。
小貫:オカムラの3年から5年後のビジネスになっていくような新規事業プロジェクトにいくつか取り組んでいます。今回は、具体例として「terminal.0 HANEDA(ターミナル・ゼロ・ハネダ)」でのプロジェクトについてご紹介しますね。
terminal.0 HANEDAは、今年(2024 年)開業した施設です。
羽田空港のさまざまな課題に対し、オープンイノベーションで研究開発を行っていく新たな拠点として、オカムラの他にも多くの企業が参画・入居しています。
空港施設を再現したモックアップスペースを整備し、本物の空港に近い環境で実証実験できるところが特徴です。「保安検査場」「空間デザイン」「DX」「未来空港関連」などの項目ごとに、企業がコラボレーションして、研究や検証に取り組んでいます。
小貫:ここでは、いろいろな実証実験をして、それを空港に実装し、改善点などをterminal.0 HANEDAにフィードバックするかたちで、PDCA(※2)を回しながら事業の創出を目指しています。
※2:Plan(計画)・Do(実行)・Check(測定・検証・評価)・Action(対策・改善)の頭文字。マネジメントの品質管理を行う、仮説検証型フレームワーク。
小貫:オカムラの各事業部で培ってきた、知見や技術を掛け合わせることによる「新たな価値の創出」です。terminal.0 HANEDAでの取り組みは、すでに展開中のpoint 0 marunouchi(※3)での活動とも連動しています。point 0 marunouchiでは、働く場に留まらず、新たな空間へ価値提供への挑戦をしていますが、その発想を空港にも応用したのが、terminal.0 HANEDAです。
※3:オカムラをはじめ、多くの参画企業による協創/共創を目的としたコワーキングスペース。2019年オープン。詳しくは、こちらの記事を参照。
――オフィスや働く場での知見を空港に応用する視点が興味深いですね。
小貫:その一例が、ダイキン工業と共同開発した「ウィンドユニット」という送風ユニットです。空港の保安検査場にウィンドユニットを導入することで、待ち時間を快適に過ごせるようにできないか検討を進めています。
ウィンドユニットは、ダイキン工業が開発した自然の風を再現する大型送風機「Wind Creator」を、オカムラのオフィスファニチュアシリーズ「Lives」のシェルフに組み込んだもの。空気の流れをつくることで、空気の質を改善したり、体感温度を下げたりできます。流れてくる風は、軽井沢の測定データを元に再現しているんですよ。さらにほかの企業とのコラボレーションで、香りを追加すればより五感を刺激される場づくりができるかもしれない、ということも検討しています。
小貫:また、オカムラはオフィス環境事業だけでなく、商環境事業や物流システム事業も展開しています。社内事業部同士の共創(※4)で、例えば店舗設計や物流システムの面からも空港に新しいビジネスが展開できないか、検討したいと思っています。私たち、フューチャービジネス推進事業部は、これの窓口の役割を担っています。
※4:オカムラでは、いろいろな人が一つのテーマについて意見を交わしながら新しい価値を創出することを共創と位置付けている
――terminal.0 HANEDAは、共創の舞台でもあるわけですね。
小貫:そうです。同時に、先ほど例に挙げた「ウィンドユニット」のように、外部企業連携によって生み出される新しいソリューションやサービスの実験場でもあります。空港を起点とした未来の街づくりや地方創生までを視野に、社会課題解決とオカムラの事業領域の拡大を将来的に目指したいと考えています。
――おもしろいですね。小貫さん自身、terminal.0 HANEDAの他には、どんなプロジェクトに関わっていますか?
小貫:日本出版販売(以下、日販)とコラボレーションしている「City Farming with Okamura」を提案する仕事もしています。City Farmingは、年間を通して新鮮ないちごが収穫できる植物工場を生活空間に提供する日販さんのサービスです。オフィスに導入するパッケージを「City Farming with Okamura」として日販さんと一緒に進めています。また、オフィス家具のサブスクリプションサービスなども企画検討しています。
挑戦が支える成長と、感謝の気持ちが生む共創の連帯感
――新たな部門で、さまざまな社内や企業の皆さんとの共創を進めていますね。そんな小貫さんにとって、仕事のやりがいを感じるには、どんなときですか?
小貫:新しい事業やサービスを創出するプロセスそのものにやりがいを感じます。例えば、terminal.0 HANEDAでは、組織の枠を超えて技術やアイデアを持ち寄り、それらをどう組み合わせれば、どのような課題を解決できるのか、前向きな議論を交わしています。ビジネス化を目指し新しい価値を生み出そうとするムードの中で、当事者として参加できることがモチベーションにもなっていますね。また、共創の場では上下関係がなく、パートナーとして、各社各メンバーが創造的で建設的な仕事に取り組むことができます。
――フューチャービジネス推進事業部で取り組みたいこと、また、将来の目標について教えてください。
小貫:長期と短期で何ができるか、やりたいこととやれることは何か。難しいけれど、常に考えながらチャレンジすることが大切だと実感しています。
まずは、空港での新しいサービスや体験価値を生み出す、terminal.0 HANEDAの推進ですね。「City Farming with Okamura」でも、オフィスのコミュニケーション活性化をサポートできたらと思っています。
将来的には、さきほど話した動画で描いていた世界観を現実にするために、AIを手がける企業とのコラボレーションに挑戦してみたいと考えています。具体的には、AIが働く人々のパートナーとして日常業務をサポートする環境を実現したいです。
オカムラは働く場づくりに関する長年の経験と実績、柔軟性とカスタマイズ力、人間中心のデザインに強みがあります。AIアシスタントも、ユーザーの使いやすさを最優先にしたAI製品を生み出せると思います。
プライベートの趣味は、成長を実感できる「筋トレ」と感性を磨くための「読書」
文武両道を目指しています(笑)筋トレは、重量や回数を更新することで、日々の進歩を物理的に体感できるところが楽しいです。忙しい時は週2回、時間が取れる時は週3~4回トレーニング。レッグプレスは、最初は20キロだったのが、70キロまで上げられるようになりました。また、読書を通じて、自分がどういう人間でありたいかを見つめ直し、足りない知識を補っています。小説からビジネス書まで幅広く読んでいますが、最近は季節を感じる感性を取り戻すために『古今和歌集』を読み始めました。山あいの地域で育ったため、自然への愛着が強いのもあって、都会の中でも自然を感じる心の余裕を持つ人でありたいと思っています。(小貫)
――小貫さんにとって、オカムラで働く魅力とは、どのようなものでしょうか。
小貫:最初の提案が具体化する場に立ち合えることです。社内外の人たちと協力して仕事を進める過程も楽しく、それぞれの専門知識を活かしながら一つの目標に向かって取り組むことで、強い連帯感を感じます。
小貫:今の部門に異動してからは、所属するオフィス環境事業部以外の社内メンバーとの出会いを通じて、新しい人間関係や会社の仕組みに詳しくなる楽しさも感じました。
共創は小さなことの積み重ねかもしれませんが、オカムラの持続的な成長に必要だと考えています。ただ、新規事業に取り組む際、社内で協力を得ることは当たり前ではありません。多くの従業員にとって日々忙しい中、これから事業化を目指す取り組みへの参加は、必須のタスクではなく、プラスアルファの部分です。興味を持って協力してくれる人が大勢いることはありがたく、しっかりと感謝の気持ちを伝えるようにしています。
――オカムラのパーパスは、「人が活きる社会の実現」です。最後に、小貫さんが考える「人が活きる社会」とは、またそれをどのように実現したいか、お聞かせください。
小貫:私にとっての「人が活きる社会」は、誰もが能力や個性を最大限に発揮できる環境にいる状態、というイメージです。その点では、働く人が毎日楽しく健康的に過ごせるオフィスを提供するという面で、オフィス環境事業は製品・空間や研究データと幅広く寄与していますし、新しい提案も続けていく、ととらえています。私自身、最近は特に、自分の業務範囲を限定せず、事業部やオカムラ全体での視点を意識するようになりました。社内外と共創するマインドをもって仕事に向き合うことで、自分が活きていると実感できています。
インタビュー後記
新しいチャレンジを求めてフューチャービジネス推進事業部へ異動した小貫。学生時代はインテリアに興味がなかったという彼女が、オフィス環境事業を通じてオカムラの未来をつくる仕事に挑戦している姿勢が印象的でした。赤坂支店では営業経験を通じてお客様目線の大切さを学び、異動後には、新たな業務や企業の枠を超えたコラボレーションで視野を広げています。特に、共創の重要性を理解しながら、新規事業の創出に取り組む姿が頼もしく見えました。インタビューを通じて、「人が活きる社会の実現」を目指す小貫の熱意と、オカムラの一員としての誇りを感じました。今後も活躍を期待しています!(編集部)