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オフィスでいちご栽培!「City Farming with Okamura」誕生の裏側

2024.03.14
株式会社オカムラは、経営理念「オカムラウェイ」のもと、「人が活きる社会の実現」を目指しています。そのオカムラウェイをテーマに、さまざまな角度からオカムラがこの先目指す姿を紹介していくのが、本連載「Okamura Way and Beyond」です。

オカムラでは2023年8月、オフィス向け体験型コミュニケーションパッケージ「City Farming with Okamura」の共同開発を日本出版販売株式会社(以下、日販)とスタートしたことを発表しました。これは毎日新鮮ないちごが収穫できる植物工場を生活空間に提供するサービス「City Farming」を手がける日販と、さまざまな働く場の空間づくりを提供してきたオカムラの共同パッケージです。オフィスでのいちご栽培を通じて従業員同士のコミュニケーションを活性化し、持続可能なコミュニティをつくることを目指しています。「City Farming with Okamura」担当者をはじめ、City Farmingにさまざまな面から関わるメンバーに話を聞きました。
 

事業部や会社を越えた「共創」で新たなビジネスが誕生

――まずは簡単な自己紹介とCity Farmingへの関わり方を教えてください。
 

フューチャービジネス推進事業部 事業部長 佐藤 直史
フューチャービジネス推進事業部 事業部長 佐藤 直史
佐藤 直史(以下、佐藤):オフィス環境事業本部 フューチャービジネス推進事業部の佐藤です。事業部名の通り、新規ビジネス開発を進める部門の責任者を務めています。既存事業にとらわれず、「オカムラが新しくできることはなんだろう?」とビジネスの種を探すことからやっています。今回は、私がCity Farmingをオフィスへも導入してはどうかと提案したことからオフィス向けパッケージの共同開発が始まりました。
もともと商環境事業本部で桒本さんをはじめとした担当者でショーケースの製品開発を進めていた中、所属拠点のメンバーや岡本さんとオフィスでの展開を検討するなど、いろいろな部門のメンバーに声をかけ、定塚さんをはじめ日販の方々と一緒に進めています。
働き方コンサルティング事業部 ワークデザイン統括部 クリエイティブディレクションセンター 兼 WORK MILL統括センター コミュニティマネージャー 岡本 栄理
働き方コンサルティング事業部 ワークデザイン統括部 クリエイティブディレクションセンター 兼 WORK MILL統括センター コミュニティマネージャー 岡本 栄理
岡本 栄理(以下、岡本):オフィス環境事業本部 働き方コンサルティング事業部の岡本です。オカムラでは「はたらく」を変える活動、としてWORK MILLを展開していて、その一環である「共創」をメインで担当しています。いろいろな人が一つのテーマについて意見を交わしながら新しい価値を創出することを共創と位置付けて、社外の人も交えながらさまざまな「はたらく」にまつわる共創イベントを企画運営しています。
社内の共創にももっと力を入れたいと思っていたところ、佐藤さんから「City Farmingで共創をやってみない?」と声をかけられ、関わることに。2023年夏にはCity Farmingを活用した社内向けのイベントを実施しました。
商環境事業本部 リテイル・ソリューション本部 冷熱機器部 冷熱開発課 桒本 正太郎
商環境事業本部 リテイル・ソリューション本部 冷熱機器部 冷熱開発課 桒本 正太郎
桒本 正太郎(以下、桒本):商環境事業本部 冷熱機器部の桒本(くわもと)です。普段は冷凍冷蔵ショーケース(以下、冷ケース)の製品開発をしています。今回は、City Farming用の冷ケース「ファームケース」の開発を担当しました。
商環境事業本部 首都圏営業本部 西支店 営業一課 第一係 木村 真梨江
商環境事業本部 首都圏営業本部 西支店 営業一課 第一係 木村 真梨江
木村 真梨江(以下、木村):商環境事業本部 西支店の木村です。営業としてスーパーマーケットなど小売業のお客様を担当しています。私自身、City Farmingのオフィス向けパッケージには直接関わっていませんが、商環境事業としてもこれから本格的にスーパーマーケットなどへ、新しい店舗の提案やSDGsの観点から展開を進めていく予定です。
日本出版販売株式会社 プラットフォーム創造事業本部 事業統括マネージャー 定塚 友理さん
日本出版販売株式会社 プラットフォーム創造事業本部 事業統括マネージャー 定塚 友理さん
定塚 友理(以下、定塚):私は日販で事業開発をする部署にいます。さまざまな会社との共創に取り組むことも多く、City Farmingではオカムラさんとの共創によって、オフィス向けパッケージを開発できました。
――では、本題に入ります。City Farmingとは何か? その概要から教えてください。

定塚:City Farmingは、生活空間にいちごの植物工場を提供する日販のサービスです。私たちは出版商社ですが、書店が減少していく今、地域に新たに“人と文化がつながる交流拠点“を生み出すため、さまざまな取り組みを進めています。そうした中、文化的生活を根幹から支えるには、生活の基盤を守る場づくりが必要だと考えました。「食のサステナビリティ」を実現する手段として「場」そのものをソリューションの対象とする植物工場に着目。2020年頃から検討を開始、2022年から実証実験を進めています。ちなみに“City Farming”と付けた通り、栽培技術と場づくりを掛け合わせ、農業の空白地帯である生活圏に植物工場を拡げることを目指しています。

――多くの人が気になるところだと思いますが、なぜ、いちごを選んだのでしょうか。

定塚:いちごは華やかで交流促進力があるからです。いちご狩りのような体験を楽しみながら、みんなが自然にコミュニケーションをとることができます。
 

ギャラリー City Farming with Okamura

オフィスでいちごを育てるメリットとは?

――オカムラとして共同開発を始めたきっかけは、どんなことだったのでしょうか。

桒本:オカムラは毎年スーパーマーケット・トレードショー(※1)に出展しています。2023年2月の出展にあたり、SDGsや何か新たな視点の製品を出したいと企画を考えていたとき、偶然、新聞で日販さんのCity Farmingを知りました。フードロスや食育へ活用できそうだと興味がわき、私が声をかけてオカムラのブースで参考出品というかたちで紹介しました。
今年(2024年)のトレードショーではオカムラで開発したファームケースを使ったCity Farmingを展示しました。1年であっという間にここまで来ましたね。

※1:スーパーマーケットを中心とする食品流通業界に最新情報を発信する商談展示会

佐藤:私は新規事業を推進する立場なので、オフィス環境事業だけでなく商環境事業も知るために昨年のスーパーマーケット・トレードショーへ見学に行き、そこでCity Farmingを目にしました。おもしろいし、働く場と掛け合わせるとさらに可能性が広がると直感しましたね。いちごの栽培には人の手による“お世話”が必要なので、定期的な共同体験が発生し、オフィスに行く理由ができる。新しいコミュニケーションを醸成できると考えたのです。
 

定塚:すでに実証実験を開始していましたが、ショーケースにはまだコストや技術に課題があり、模索している最中でした。オフィスでの展開はもともと想定していましたし、商環境事業で冷ケース開発を得意とするオカムラさんに声をかけてもらえたのは、まさにめぐり合わせでした。

桒本:商環境事業としては、まずはオカムラの冷ケースに関する技術を活かした製品開発からということで、スピード感を持って進めました。

オカムラと日販、それぞれの課題に対して互いに補い合える関係
オカムラと日販、それぞれの課題に対して互いに補い合える関係

――スタートはそんな出会いだったんですね。では、City Farmingの導入メリットを教えてください。

定塚:まず、働く人のオフィス環境に対する総合的な満足度の向上につながる点です。ESG経営(※2)にも貢献できると考えています。

※2:Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字から。環境や社会への配慮や健全な管理体制により持続可能な発展を目指す経営

佐藤:オフィスにおけるコミュニケーションの課題解決策にもなりますね。オカムラは、オフィス内にコミュニケーションエリアを長年つくり続けていますが、今もお客様からは「コミュニケーションが課題」という声をよく耳にします。生産性や効率を追い求めるあまり、コミュニケーションの余白まで失われ、イノベーションにつながる会話が生まれにくくなっているケースも考えられます。
オカムラでは従来どちらかというとハードに力を入れてきましたが、オフィスはつくるだけでなく、どう使っていくかが大事。今後はソフト、いわゆるソリューションもより求められ、City Farmingもまさにその一つになると思います。

「コミュニケーションはオフィスにおける長年の課題。空間づくりとソリューションの両方必要」(佐藤)
「コミュニケーションはオフィスにおける長年の課題。空間づくりとソリューションの両方必要」(佐藤)

岡本:家でも仕事ができる今、オフィスに集まる意味が問われています。人と人が対面で会うからこそ生まれるものがあり、オフィスで共創を進めようという提案が増えています。City Farmingはこの取り組みに合っていると思います。

桒本:純粋な“癒やし”効果もありますね。City Framingは、土を使わずに肥料を水に溶かした養液でいちごを栽培します。その養液が循環する水流の音は心が落ち着きます。また、扉を開けるといちごのいい香りも広がります。見た目も含め、視覚・聴覚・嗅覚の癒やしも魅力の一つだと思います。

――多角的なメリットが考えられますね。オカムラとしての実証実験についても教えてください。

佐藤:2023年8月に1か月限定で渋谷のラボオフィス「CO-EN LABO」に設置して拠点メンバーみんなで当番制で“お世話係”をして栽培しました。外部向けにはニュースリリースを出したところ、反響も大きかったですね。いちごの栽培が目的ではなく、コミュニケーション課題を解決するためのソリューションだと説明するとみなさん納得してくれます。

現在、CO-EN LABOに設置しているCity Farming
現在、CO-EN LABOに設置しているCity Farming

定塚:「コミュニケーションができるのはいちごだからだよね」と好意的な反応をいただけたり、「生きもの係みたいな感じだね」と理解を得られたりすることが多いですね。

佐藤:オカムラが実施した実証実験に基づくアンケート(※3)では、78.2%の人がオフィスにCity Farmingがあることで「他部門の人との会話が増えた」と答えています。実際、他部門のメンバー同士でランチをとる姿を見かける機会が増えました。特別なことではないですが、日々の挨拶も増えています。

※3:出典「City Farming『渋谷イチゴプロジェクト』に関する調査」オカムラ調べ n=55/2023年8月(事前)・9月(事後)

岡本:実証実験中に従業員の家族を招いたファミリーイベントがあり、子どもたちにいちごの収穫や受粉体験をしてもらったのですが、とても盛り上がりました。

ファミリーイベントの様子。子どもたちはいちごの栽培に興味津々
ファミリーイベントの様子。子どもたちはいちごの栽培に興味津々
佐藤:実証実験を受けて2023年11月に実施したお客様向けの展示会「オカムラグランドフェア2023」でお披露目しました。今はまたCO-EN LABOに設置し、オフィス見学にいらしたお客様にも紹介しています。

 


「CO-EN LABO(交縁ラボ)」

オカムラは自社拠点オフィスを実証実験の場と位置づけ、“ラボオフィス”と呼んでいます。「CO-EN LABO」は東京都渋谷区にあるオカムラのラボオフィスです。心と体の調和がとれ、活力が向上している状態「WELL at Work(ウェルアットワーク)」の実現をサポートするために、新しい空間づくりや働き方の提案をしています。
アメリカの認証機関IWBI(INTERNATIONAL WELL BUILDING INSTITUTE)による人の健康とウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好であること)に影響を与えるさまざまな機能の評価システム「WELL認証v2」において最高レベルのプラチナを2024年2月に取得。仮眠スペースや運動・休息スペース、さまざまなコミュニケーションスペースを設置し、周囲の会話内容を聞き取りにくくするサウンドマスキングを導入。飲料や果物・野菜などの健康的な食事の提供や窓からの自然の光を取り入れることを意識した執務席の配置などの取り組みが評価されました。

          

「共創」で広がる発想力や提案力

――City Farmingを軸にした、社内外との共創についてどう感じていますか。

佐藤:本格的なシナジー効果を出していけるのはこれからですが、オフィス環境と商環境という別の事業部が共創できた意義は非常に大きいと感じています。今までは同じオカムラでも事業部が違うと、業務で関わることはあまりありませんでしたが、最近は省力化やデジタル化など事業部を限定しないテーマも多く、ゆるやかなつながりは「他の仕事にも活かせそう」と発想を豊かにします。今回の例もオフィスだけでなく、小売業への提案やイベントへの活用もできる。そういう発想が連続的に生まれていくことが、今後のオカムラには重要になっていくはずです。

木村:私は中途入社で2年目ですが、これまで他の事業部の人たちとはつながりがありませんでした。でも今後は、オフィス製品を小売業の店舗で活用するなど、より柔軟で幅の広い提案ができそうです。

岡本:共創にはある種のノリが必要です。おもしろがる気持ちがないと共創は進みにくい。今回は佐藤さんがいろいろな人を巻き込んでくれたのも共創が進んだ要因の一つ。こうした動きは社内で他にもいくつかあり、共創の流れが加速しているのを感じます。

桒本:ファームケースの開発では新しい技術的なチャレンジもありました。従来、光源管理まではしていませんでしたし、養液を循環させる機能もこのケースならでは。視認性や作業のしやすさにも配慮して構造設計を行いました。いちごがちゃんと育つか検証と改善を繰り返し、結果的に短期間で開発できたことは、社内外の共創の成果ですし、私自身もいい経験になりました。

定塚:スピーディな開発には本当に感謝しています。それから、日販は当初からESGや持続可能性の観点でオフィスへの導入を検討していましたが、「コミュニケーション活性化の実現」を全面に出せたのは、オカムラさんでの実証実験で確認できたから。日販としても他社との新しい共創のあり方をつくれたと思っています。
 


City Farmingで「オフィスで働く人を幸せにする」

――では、City Farming with Okamuraの魅力についてもう少し伺います。どんな価値が提案できるでしょうか?

定塚:先ほど、桒本さんが“癒やし”効果について話してくれましたが、従業員がいきいきと働ける健康経営の実現に寄与できるのではないかと思っています。

木村:多くのスーパーでフードロス対応が課題になっていて、商環境事業本部内では有志メンバーでフードロスの面からお客様と一緒に社会課題の解決に向けた提案を検討しています。そうした背景からもCity Framingは時代のニーズにあった取り組み。たとえば、量り売りに対応できますし、いちご狩りをしながら買い物できる楽しさから、「またこの店に来たい」と思ってもらえれば集客率向上にもつながります。ただ、栽培には人の手が必要です。導入後の作業負荷軽減につながるサービスやメンテナンスも含めた、小売業向けのパッケージもつくれたらいいですね。

――City Farming with Okamuraに関わっての気づきや今後取り組みたいことはありますか?

佐藤:気づいたことは三つあります。一つ目は外部企業とパートナーとして連携する大切さ。二つ目は改めてものづくり企業としてのオカムラ。今回、製品開発を短期間で実現した技術力ですね。三つ目は人。事業部をまたいで仕事をすると、社内にいろいろな想いやスキルを持つ人たちの存在に気づかされます。City Farming with Okamuraはある程度かたちになったので、この先は信念を持ってやりきるフェーズ。守りに入らず、突き進んでいきたいです。
 

メンバーは「会社や事業部を越えた取り組みはいい経験。新ビジネスにもつながる」と語る
メンバーは「会社や事業部を越えた取り組みはいい経験。新ビジネスにもつながる」と語る

木村:商環境事業で手がける冷ケースや商品の陳列棚は街なかで見る機会が多くあります。City Farming が店舗で採用され、買い物に来たお客様が楽しむ様子を実際に見られたら、オカムラの従業員としても誇らしく感じるはず。今日のメンバーから聞いた共創の視点を今後の提案にも活かしたいです。

岡本:今回のように、社内で熱い想いを持っている人と、どんどん共創する流れをつくっていきたいです。おもしろそうだと始めたことが、さらなる事業部を越えたコラボになることもあるでしょう。あと、佐藤さんも言うようにオカムラの技術力は社内にいると従業員自身は気づきにくい(笑)。社外との共創からフィードバックをもらってオカムラの強みを再認識することで、また新しい取り組みに反映していけるかもしれません。

桒本:製品開発は、市場が必要とするものをつくるマーケットインも多いですが、今回は私たちがつくりたいものをつくるプロダクトアウトのカラーが強く、チャレンジが多かったです。今後も失敗を恐れず、仲間とともにチャレンジし続けたいです。

定塚:オカムラさんと1年近く一緒に取り組む中で驚いたのは、スピード感と営業力。展示会では営業の方がCity Farmingについて詳細まですぐ把握し、熱量高く説明してくれたのが印象的です。私自身、刺激の多い1年でしたね。異業種同士が会社の枠を超えて、同じ目標に向かって一緒に熱くなれるのはすごいこと。事業化を引き続き一緒に進めていきます。

――最後に佐藤さんに伺います。オカムラが目指す「人が活きる」環境づくりに、City Farming with Okamuraはどう貢献できると思いますか。そして「人が活きる」ということに対し、どんな捉え方をしていますか?

佐藤:私は、オカムラのパーパス「人が活きる社会の実現」を、一人ひとりがどう解釈して自分の仕事に落とし込むかが大事だと思っています。私にとって、それは「オフィスで働く人を幸せにする」こと。今回の例で言えば、オフィスで働きながらいちごを食べられるなんて幸せだな、と思ってくれればいいし、お世話係を一緒に担当したのをきっかけに、同じオフィスにいても名前も知らなかった同僚と話せるようになったら、それはその人に幸せを届けたことになる。そんなふうに捉えています。
 


座談会後記

渋谷の超高層ビルで元気にいちごが育っている風景に驚きました。取材後、「どうぞ、食べてみてください」と声をかけてもらい、いちご狩りを体験。1粒収穫して食べてみると、甘みと酸味のバランスがよく美味。周りの人ともこの体験や美味しさを共有したくなり、日々のお世話を通して、楽しくポジティブなコミュニケーションが生まれそうだと実感しました。事業部や会社の枠を超えた共創から生まれた、オフィスでの共創提案という新たなビジネスは、今後多くの会社のコミュニケーションの課題解決に寄与できそうです。(編集部)

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