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新規事業の種「0.1」の量産をめざす「0次開発プロジェクト」とは

2026.10.09
企業パーパスに「人が活きる社会の実現」を掲げるオカムラ。この「オカムラを知る!」では、オカムラグループのさまざまな取り組みを紹介していきます。

オカムラの「0次開発プロジェクト」は、新規事業の「0→1」のさらに手前にある「0.1」、つまり事業になるかもしれない可能性の「種」を量産しようという取り組みです。その成果の第1弾が、2026年6月18日~26日に開催された「0次開発プロジェクト vol.1 まだ存在しない未来の職業展 2045」。6000件を超えるオカムラの特許技術をベースに導き出した50の未来の職業をパネルで紹介し、うち2つはプロトタイプとして体験できるようにした展示会です。プロジェクトを推進したオカムラの小貫 絢子とKonelの清水 陸さんに、立ち上げの背景から共創の手応え、今後の展望までを聞きました。
2026年8月取材

誰でも挑戦できる風土をつくる「0次開発プロジェクト」

――まずは自己紹介と、「0次開発プロジェクト」での役割をお聞かせください。
オカムラ ワーク&ライフクリエイション事業本部開発創造本部 フューチャービジネス企画部 小貫 絢子
オカムラ ワーク&ライフクリエイション事業本部
開発創造本部 フューチャービジネス企画部 小貫 絢子
小貫 絢子(以下、小貫):オカムラの小貫です。新規事業を担当するフューチャービジネス企画部に、2023年9月の立ち上げ当初から所属しています。「0次開発プロジェクト」には、プロジェクトオーナーとして携わっています。
 Konel プランナー/コミュニケーションデザイナー清水 陸さん
 Konel プランナー/コミュニケーションデザイナー
清水 陸さん
清水 陸(以下、清水):Konelの清水です。Konelは、デザインとテクノロジーとビジネスを掛け合わせてさまざまなことに取り組むクリエイティブカンパニーです。私自身はプランナー、コミュニケーションデザイナーという肩書きで、企画から実現まで伴走しており、0次開発プロジェクトにも企画の初期から最後まで携わりました。
――あらためて、「0次開発プロジェクト」とはどのような取り組みなのでしょうか。

小貫:新規事業の可能性を探索するために立ち上げたプロジェクトです。フューチャービジネス企画部は、新規事業を専門に担う部門として新設されたので、オカムラとしてそれをどう進めていくか、仕組みづくりから考える必要がありました。新規事業はよく「0→1、1→10、10→100」の3つの線で語られますが、その順番で進むだけでは、なかなかスピードが上がりません。そこで、手前の「0.1」を量産し、クイックに価値検証できる仕組みをつくろうと考えました。それによって誰でも新規事業にチャレンジできる風土を醸成したかったんです。

――オカムラには従業員の挑戦を後押しする文化がありますよね。もっとそういう場をつくりたかったということですか。

小貫:そうなんです。オカムラにはものづくりへの情熱が強い従業員が多いのですが、それを発揮できる場は限られていたと思います。世の中のニーズに気づきやすいのは、現場に近い従業員たちですから、まずは「やっていいんだ」という空気感を全社的につくり、みんなのものづくりマインドに着火したかったんです。また、社内の縦割り文化への課題感もありました。オカムラの事業それぞれを掛け合わせてこそ新しいものが生まれると思うので、0次開発プロジェクトは部門横断型で、さまざまな部門の人に参加してもらっています。

――0次開発プロジェクトの共創パートナーであるKonelとは、どんなきっかけでつながったのでしょうか。

小貫:Konelさんが別の企業とコラボレーションしていた展示会を見に行ったとき、「ぜひ実験場(Konelの制作拠点である日本橋地下実験場)に遊びに来てください」と声をかけてもらったのをきっかけに、オカムラとの共創の話も進みました。クリエイティブ領域はKonelさんにお願いしていましたが、きっちり線引きするというよりは、互いに越境しながら一緒に育ててきた感覚です。

清水:プロジェクトの進め方の指針として掲げていたのが、「混ざり合う」という言葉です。お互いの領域を気にしすぎず、はみ出し合おうと。実際、「ここはこうしたほうがいいんじゃないか」と気軽に言い合いながら、対等な立場で議論ができていたと思います。
 

特許技術から未来の職業を発想した
「まだ存在しない未来の職業展 2045」

――清水さんはオカムラにどんなイメージを持っていましたか。

清水:一般的には「オフィス家具の会社」というイメージが強いですよね。ただ、共創を始めた当初に歴史を教えてもらい、過去には自動車をつくっていた時代もあるなど、いろいろなものづくりをしてきた会社だと知って驚きました。実際にオフィス家具だけでなく、さまざまな事業や空間全体、WORK MILLでの発信など、はたらき方の可能性をずっと広げてきていますよね。知財も豊富ですし、当社のideaflow(現idea Landscape※)を活かせば、特許×AIでできることが広がりそうだと思いました。

※公開されている特許情報から、AIで事業アイデアを大量に生成するアイデア共創プラットフォーム

 

「オカムラが、“オフィス家具だけの会社”と見られているのは、すごくもったいない」(清水さん)
「オカムラが、“オフィス家具だけの会社”と見られているのは、すごくもったいない」(清水さん)

小貫:今回、知財や技術を起点にしたことで、部門の枠を超えて全社に関わるプロジェクトになり、ほかの部門の人たちも巻き込みやすくなりました。

――オカムラとして、Konelと組むことにした決め手は何だったのでしょうか。

小貫:Konelさんの実験場でいろいろなプロトタイプを見て、この人たちとなら、私たちの凝り固まりがちな思考がほぐれていくのではないかと思ったんです。最初の提案書にあった、宇宙ごみを清掃する未来の職業「スペースデブリクリーナー」と、その人を支えるオカムラのハイスペックリクライニングチェアというアイデアには、イスにまだこんな可能性があるのかと驚かされました。
 
「Konelの人たちが見るオカムラの未来を見たい、一緒に考えたい、と思った」(小貫)
「Konelの人たちが見るオカムラの未来を見たい、一緒に考えたい、と思った」(小貫)
――「未来の職業」をテーマにした展示会という形は、どのように決まっていったのでしょうか。

小貫:展示会の開催は最初から考えていました。オカムラが描く面白い未来に共感してくれる人や企業と出会いたいと思っていましたし、共創パートナーの発掘も職業展のゴールの一つでした。そもそも、オカムラという会社自体や新規事業に取り組んでいることがほとんど知られていないので、まずは取り組みを知ってもらう場にしたいというのもありました。

清水:「未来の職業」という切り口にしたのは、特許技術をそのまま並べるより、職業として見せるほうが、見る人が自分ごと化しやすいと考えたからです。最近は「AIに仕事が奪われる」という話をよく聞きますが、ネガティブな側面ではなく、技術で世の中がポジティブに変わっていく側面を伝えたかったんです。ちなみにAIが人間の知能を超えるシンギュラリティを迎えると言われる2045年は、オカムラさんの創業100周年。気づいたときは「もうこれしかない」と思いました。

――形にしていく過程では、どんな苦労がありましたか。

小貫:苦労したのは、しっかり未来を感じられる職業にすることです。社内の各部門から約30人が参加したワークショップで職業を考え、その後は有志メンバーとプロトタイプ制作を進めました。「ジョブテックスパイラル」という手法で、仕事とテクノロジーの視点を行き来しながら考えるのですが、技術に寄ると発想が現実に引き戻されてしまい、知恵を絞りに絞る作業でした。
 
「職業なら誰でも想像しやすく、未来にワクワクできる。最高のコンセプトだと思った」(小貫)
「職業なら誰でも想像しやすく、未来にワクワクできる。最高のコンセプトだと思った」(小貫)

清水:50の職業全体で、分野のバランスは熟考しました。加えて、今ある事業領域だけで考えると、どうしても2027~2028年くらいの話になってしまうので、2045年に注目を集めそうな領域も想定して調整しましたね。この職業は果たしてビジネスとして成立するのか、一方でお金を生み出すだけが職業ではないのではないか。アイデア一つひとつについて、そんな議論を重ねながら、実際にありそうな職業だと思えるところまで磨いていきました。

――展示会では、6000件を超える特許技術から導き出した50の「未来の職業」のパネルと、そのうち2つの職業のプロトタイプが展示されました。来場者の反応はいかがでしたか。

小貫:思った以上の反響でした。口コミによって来場者が広がり、会期9日間で目標の250社・500人に対して、518社・2136人がご来場くださいました。個人的に印象深かったのは、プロトタイプの一つ「エンディングエディター」です。AIとの対話で過去の記憶を掘り起こしながら、これからの生き方を見つめ直す体験なのですが、AIとの会話にここまで深みが出せるのかと驚きました。
 
あなたの物語に伴走する人生の編集者「エンディングエディター」
あなたの物語に伴走する人生の編集者「エンディングエディター」

清水:来場者から「この職業って本当にあるんですか」と聞かれるほどで、そこまでリアルに感じてもらえるとは、つくってみるまでわかりませんでした。もう一つのプロトタイプである「ジェスチャーオーケストラ」は、オカムラのハイブリッド型ロボットによる物流自動化ソリューション「PROGRESS ONE(プログレスワン)」のロボットアームを遠隔操作するための技術を応用しています。グローブをつけて身体の動きで音楽を奏でる体験で、子どもたちもノリノリで演奏していました。トーンの違う2つのプロトタイプがいいコントラストになりましたし、50の職業全体を見渡すと、オカムラの特許や技術の幅広さと可能性を感じます。
 
身体を介して内面を音に翻訳する「ジェスチャーオーケストラ」
身体を介して内面を音に翻訳する「ジェスチャーオーケストラ」

小貫:遠隔操作の技術が楽器になるなんて、自分たちだけでは思いつかなかったと思います。共創だからこそ生まれる、発想のジャンプがあるんですよね。社内にいると自分たちが持つものの面白さには案外気づけませんが、外から「それ、面白いものなんだよ」と言ってもらえると、ものづくり魂に火がつきます。今回、それを実感しました。

 

0次開発プロジェクト vol.1 まだ存在しない未来の職業展 2045

2026年6月18日(木)~26日(金)高輪ゲートウェイのTHE LINKPILLAR 2にて開催
2026年6月18日(木)~26日(金)高輪ゲートウェイのTHE LINKPILLAR 2にて開催

 

「オカムラらしさ」が支えた挑戦とこれからの共創

――プロジェクトを振り返って、清水さんが感じた「オカムラらしさ」はどんなところでしたか。

清水:まず、本当にいい人が多いんですよ(笑)。さまざまな部門、職種の方とお話ししましたが、みなさん真面目で、疑問点を率直に聞きながら、ちゃんと理解しようとしてくれる。「はたらく」に真剣に取り組んできた会社だからこそ、お互いを尊重するカルチャーがあって、パートナーである私たちも働きやすい空気がありました。一方で今回は、これまでのオカムラらしさを超える取り組みでもあったわけですが、オフィス家具をはじめとした従来の事業領域にとらわれず、枠の外へ出ることにも、真摯に向き合っていました。その真摯さが「らしくない」挑戦を支えていたのだと思います。
 
「オカムラのみなさんの真摯さが、“オカムラらしさを超える”挑戦を支えていたと思う」(清水さん)
「オカムラのみなさんの真摯さが、“オカムラらしさを超える”挑戦を支えていたと思う」(清水さん)
――そうした挑戦の過程で、「人が活きる」というオカムラの考え方を感じた場面はありましたか。

清水:このプロジェクトの期間そのものが、「人が活きる」時間になっていたと思います。みんなワンチームで楽しく働いていて、受付を担当したKonelのインターン生が「みなさんが楽しそうに働く姿を見て、社会人っていいなと思いました」と言ってくれて嬉しかったですね。

小貫:私たちもワクワクしっぱなしでした。プロジェクトを役員に説明するときも、日頃はロジカルに組み立てるところを、今回はワクワクした気持ちをそのままぶつけてみたんです。すると「ものづくりは任せろ」「自分の部門でもやりたい」という役員も現れて。役員のものづくり魂にも火をつけられたのかなと思います。
 
「展示会後、他部門からの相談も増え、部門の壁を越える動きが生まれている」(小貫)
「展示会後、他部門からの相談も増え、部門の壁を越える動きが生まれている」(小貫)

清水:展示を見たほかの企業の方から、「うちにもいろいろな技術があるけれど、まだ使えていない」という声をよく聞きました。眠っている特許や技術は多くの企業にあるはずなので、こういう取り組みが広がるといいなと思います。

――0次開発プロジェクトを、今後どう発展させていきたいですか。

清水:Konelとしては、さまざまな領域で、面白いことを実用化まで含めてご一緒していきたいですね。

――この先どんな共創を実現していきたいですか。

小貫:パートナー企業との共創で、自分たちの領域からはみ出た価値をつくっていきたいですね。アイデアベースの相談や情報交換からでも構いません。オカムラが描く未来に少しでも共感いただけるなら、ぜひお話ししたいです。
「苦労もあったが、楽しい経験だった」と二人は振り返る
「苦労もあったが、楽しい経験だった」と二人は振り返る

取材後記
展示会で発表された50の「未来の職業」は、どれもリアリティがあり、挑戦してみたくなる仕事ばかりでした。AIに仕事を奪われるのではなく、技術が新しい職業を生み出していくポジティブな未来の兆しが、オカムラが積み重ねてきた特許や技術の先に既に見え始めています。技術に真摯に向き合ってきたオカムラにしか描けない未来が、確かにあると思えた取材でした。(編集部)

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