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「PROGRESS ONE」が目指す、時空間を超える新しいはたらき方

2025.11.26
オカムラのワークデザイン研究所(以下、研究所)が発表した「はたらき方のトレンド2025」では、「効率」を主要なカテゴリーの一つに挙げています。その中で人口減少・人材不足の現代において、効率化のためにますますロボットが活躍していく未来を見据え、「ロボッタブル」(※1)というはたらき方の概念を紹介しています。

※1:時代背景から「ロボットが活躍可能な」という概念が求められると予測し、オカムラが考えた造語
 

ワークデザイン研究所のインタビュー記事はこちらから

今回は、トレンド発表に携わった研究所の井熊 七央海が、ハイブリッド型の物流自動化ソリューション「PROGRESS ONE(プログレスワン)」の開発現場を訪ね、開発チームをリードする渡邊 健士に話を聞きました。PROGRESS ONEがどのように「ロボッタブル」を具体化しているのか、そしてロボットが「人が活きる社会の実現」にどうつながるのかを探ります。
2025年9月取材

開発から10年、「PROGRESS ONE」の現在地

ワークデザイン研究所 リサーチセンター 井熊 七央海
ワークデザイン研究所 リサーチセンター 井熊 七央海
井熊 七央海(以下、井熊):実際にPROGRESS ONEを見せていただきましたが、改めてどういうロボットシステムなのか教えていただけますか。
技術本部 プログレスワン開発部 渡邊 健士
技術本部 プログレスワン開発部 渡邊 健士
渡邊 健士(以下、渡邊):PROGRESS ONEは、自律制御で動く部分と遠隔操作で動かす部分を組み合わせたハイブリッド型の物流自動化ソリューションです。私たちがつくりたいのは、遠隔操作でロボットを動かすことで、時間と空間の制約から解き放たれて働けるようなインフラとプラットフォームです。ロボット単体をつくりたいわけではないんですよね。
開発は2016年の秋頃から、窓もない倉庫の一角で、事業部内の小さなプロジェクトとして始まりました。最初に取り組んだのは、物流倉庫でのピッキング作業の自動化です。画像処理とAIを使った自律制御のピッキングは、8割方実用レベルまできました。遠隔操作も同じくらいですね。
井熊:私はこの分野にほとんど触れたことがなかったので、実際に見ると感動しますね。遠隔作業と聞いて、VRゴーグルなどを使うのかなと勝手に想像していたのですが、PROGRESS ONEは違うのですね。

渡邉:VRゴーグルなど、ヘッドマウントディスプレイと呼ばれるものですね。開発当初は使っていましたが、業務で一日中使うとなると、どうしても身体的な負担が避けられなかったので、私たちは平面のディスプレイと操作デバイスを採用しました。この操作デバイスには「リアルハプティクス」という力覚(※2)のフィードバックを利用した機能を搭載しているのが技術的な特徴です。離れたロボットが感じた力がオペレーター(操作者)にリアルタイムで伝わる仕組みで、何百kmも離れた場所にあるロボットが触っているものを、インターネットを介して直接触っているような感覚で操作できます。

※2:物に触れたとき、人間が物から受ける抗力についての感覚
 
PROGRESS ONEのロボット部分
PROGRESS ONEのロボット部分

2022年に取材したPROGRESS ONEの記事はこちら

大阪大学と共同開発中のPROGRESS ONE用作業ブース
大阪大学と共同開発中のPROGRESS ONE用作業ブース
井熊:実際に操作させていただきましたが、アームが押されたり、ハンドでものを握ったりした感覚がリアルに伝わってきて驚きました。

渡邉:実はつい数カ月前に、自律制御と遠隔操作がネットワークでようやく結合できました。自律制御でエラーが出ると、サーバーからオペレーターに信号が送られ、ロボットと接続して遠隔操作に切り替わる。この一連の流れが完成したんです。10年の試行錯誤を繰り返して、やっと実用レベルまで機能を引き上げました。
とはいえ、ようやく骨格ができた段階。ここからが本番で、製品として動くように肉付けしていくフェーズです。並行してオペレーターが心地よく作業できる作業ブースも、長年ヒト型ロボットを研究してきた大阪大学の石黒 浩教授のチームと私たちのチーム、そしてオカムラのプロダクトデザイン部も一緒に共同開発しています。このブースは、大阪・関西万博で石黒教授プロデュースのシグネチャーパビリオン「いのちの未来」館内でアバターの操作用にも納品されたんですよ。
 
作業ブースはオペレーターの働きやすさも考慮
作業ブースはオペレーターの働きやすさも考慮
井熊:オペレーターの働きやすさまで考えているんですね。ロボット単体ではなく、働く環境全体をデザインしているのが興味深いです。こうした視点は、まさに研究所が考えるべきテーマでもあります。もう少し具体的なかたちが見えてきたら、ぜひ共創していきたいです。ところで先日、開発研究拠点を都内に移されたそうですね。

渡邉:はい、新拠点は「PLUTO(プルート)」、「PROGRESS ONE Laboratory in Urban TOKYO」の略です。冥王星の意味もあり、このプロジェクトの近未来的な要素に合っていると思っています。都心に拠点を置くことで、さまざまな情報や技術に触れやすくなりました。

井熊:働く場所の環境は創造性にも影響しそうですね。
 

井熊が体験! PROGRESS ONEの「リアルハプティクス」

渡邉と一緒に井熊が操作
渡邉と一緒に井熊が操作

はたらき方のミスマッチを解消する新しい就労のかたち

井熊:PROGRESS ONEが導入されると、物流倉庫の働き方はどう変わりますか。

渡邉:そもそも開発の背景として、物流倉庫の深刻な働き手不足という課題がありました。ただ、単純に人手が足りないわけではなく、「働きたいのに働けない」という働き方のミスマッチなんです。物流センターは郊外にあることが多いですが、働きたい人を含め、人口は都心に集中していますよね。また、小さなお子さんがいる方や介護をされている方など、長時間働くのが難しい人も少なくありません。そして、障がいがあるなどで、移動が不自由な人もいます。遠隔からロボットを操作して働くというのは、こうした空間と時間のミスマッチを解消でき、新しい就労のかたちになると考えています。

井熊:仕事と働き手、マッチングの可能性も広がりますね。

渡邉:そうですね。PROGRESS ONEを使えば、倉庫の作業をフィジカルなリモートワークとして行えるようになります。将来的には自宅でもできるようにしたいと思っていますが、その前にまず、ロボットを操作するために人が集まって働く「オペレーションセンター」のような場所をつくりたいんです。駅前やショッピングセンターの中など人が集まりやすい場所に、カフェやラウンジのようなおしゃれで快適な空間を整備して、そこでコミュニティをつくりながら働くという新しい就業形態を実現したいと思っています。
 
PROGRESS ONEを前に、その仕組みを説明
PROGRESS ONEを前に、その仕組みを説明
井熊:倉庫での作業は、夏の暑さや冬の寒さなど、季節によっては環境面での大変さがあると聞きます。それに空間も無機質になってしまうこともあるかもしれません。PROGRESS ONEでさまざまな環境で作業ができるようになれば、働く選択肢が広がりそうですね。

渡邉:そうですね。これは経営者にとってのメリットにもなると思います。物流倉庫に毎日通勤しなくても、さまざまな環境から作業できるようになれば、これまでより多様な働き手を採用しやすくなるのではないでしょうか。
それから、このシステムの特長として、1人の人間が複数のロボットを操作できることがあります。つまり、日本各地はもちろん、海外のロボットまで、すべてをオンラインでつなげます。しかもロボットは自律制御と遠隔操作のハイブリッド型なので常時接続しておく必要はなく、エラーが起きたときだけオペレーターとつながればいい。だから東京のロボットを操作して、次は大阪、九州、沖縄と順繰りに操作することも可能で、時間も空間も超えて働ける。効率も上がり、省力化が図れます。
 

オカムラの考える「ロボッタブル」なはたらき方

井熊:研究所が「はたらき方トレンドの2025」で示した「ロボッタブル」は、時代背景から「Robot+able=Robotable(ロボットが活躍可能な)」という概念が求められると予測して私たちが考えた造語です。ロボットと一緒に働くことが、「無駄を省く」と同時に「人間の能力を拡張する」という考え方なのですが、PROGRESS ONEではこれをどう具体化しているとお考えですか。
 
「働き方の制約を取り払うことが、『人間の能力を拡張する』につながる」(渡邊)
「働き方の制約を取り払うことが、『人間の能力を拡張する』につながる」(渡邊)
渡邉:「無駄を省く」でいうと、自宅での勤務が可能になれば通勤時間がかからなくなりますよね。「人間の能力を拡張する」については、「時空間」「大きさと力のスケール」「数」という3つの制約を取り払えると考えています。「時空間」は、先ほどお話した通り、遠隔操作で場所を選ばずに働けるということ。次の「大きさと力のスケール」ですが、例えばロボットは人間の等身大にする必要はなく、パワーショベルのような大型でもいいし、逆に細胞レベルの小型でもいい。物理的な力や大きさを自由に変えられます。最後が「数」の制約で、1人で複数台のロボットを操作することも、逆に100人で1台のロボットを操作することもできる。あるいは2対1で、右手はAさん、左手は私という分担もできます。
井熊:今のお話からも、PROGRESS ONEがロボッタブルを具体化しているのがよくわかります。将来的にロボットが人間と一緒に働きながら活躍するためには、何が必要だと思いますか。

渡邉:ロボット自体のデザインはオカムラの得意な分野なので、デザイナーと一緒に進めていきますが、重要なのは制度ですね。ロボットを遠隔で操作するにあたっては、使い方のルールも必要ですし、その前に設計基準も必要です。開発していて直面したのが、操作する人を「性善説で考えるか、性悪説で考えるか」という問題だったんですよ。ロボットを操作する人が悪意を持てば物を壊すこともできてしまう。それを防ぐシステム設計も必要ですが、あまりに厳重だと使いにくくなる。
PROGRESS ONEに限らず、今まさに遠隔操作で働くロボットの動作や運用の基準を社会としてつくることが求められていると思いますね。コロナ禍でオンライン会議が当たり前になったように、ロボットと働くという「新しいはたらき方」も、受け入れられていくための土壌を整えていく必要があるのではないかと思います。
 
「ロボット操作の就労に向けては社会制度の構築も必要」(渡邊)
「ロボット操作の就労に向けては社会制度の構築も必要」(渡邊)
井熊:制度に関しては研究所内でも、たとえば従業員がAI内蔵のロボットを育てた場合、そのロボットの所有権はどうなるのかとか、会社としてどう扱うべきかといった話がよくでます。

渡邉: そういうことを考えている研究者もいますよ。ただ、ロボットが完全に自己判断して働き始めるのは、まだ先だと思います。私たちの開発でも、例えばビニール袋からものを取り出すような少し複雑な動作になってくると現時点では難しいです。さらに先に進むには何らかのブレークスルーが必要でしょう。近い将来、ロボットが社会の中で働くとすれば、PROGRESS ONEのように人が遠隔で操作するかたちになるのではないかと考えています。

井熊:私たちが実施した「働き方・働く場に関するトレンド調査」では、ロボットに求める仕事としてオフィスの清掃や荷物の運搬などを挙げる回答が多かったですね。
 
「調査では、ロボットに作業や力仕事を代替する役割を期待する声が目立つ」(井熊)
「調査では、ロボットに作業や力仕事を代替する役割を期待する声が目立つ」(井熊)
渡邉:そうなんですね。物流のほかにも、スーパーマーケットのバックヤードでの棚卸しや検品などの作業の自動化などが考えられます。製造業、小売業、介護福祉、建設、農業、運輸、インフラなど物理的な作業が発生するあらゆる産業に対してロボットが広がる余地があると考えています。

井熊:最近は「ロボットやAIに仕事を奪われるのでは?」といった声を聞くこともあります。渡邉さんはロボットが「人が活きる社会の実現」にどうつながるとお考えですか。
「既存事業を超えて、宇宙のような新分野まで広げたい」(渡邊)
「既存事業を超えて、宇宙のような新分野まで広げたい」(渡邊)
渡邉:人の仕事を奪うほどになるまでは、まだ時間がかかると思います。むしろ今は人が足りない分野にロボットが補完的に入ることで、「人が活きる社会の実現」につながるのではないでしょうか。
PROGRESS ONEも今はピッキング作業から始めていますが、いずれは物流のほかの工程へ、さらにはオカムラの商環境事業やオフィス環境事業へ、さらには医療、教育、福祉などへも広げていきたいですね。

井熊:オカムラの価値創造ですね。

渡邉:世の中で時間と空間で制限されている活動の制約を取り払うビジネスにしたいんです。夢物語のように聞こえるかもしれませんが、実現できる未来だと私は思っています。技術と制度、そして人の理解を整えれば実現できます。
オカムラは、オフィス環境事業、商環境事業、物流システム事業という幅広い事業領域があります。PROGRESS ONEはまだ発展途上で課題も多くありますが、このロボット工学の技術を物流だけでなく、オカムラの幅広い事業領域に展開していくことで、社会の役に立ちたいと思っています。そのために全力で取り組んでいます。

井熊:かたちになるのが楽しみです。研究所としても「ロボッタブル」なはたらき方の実現に向けて、社内共創でPROGRESS ONEのような取り組みにぜひ関わっていきたいです。今日はありがとうございました!
 

取材後記

新入社員研修でPROGRESS ONEを知ったとき、正直「なぜオカムラがロボット?」と思いました。ロボットやAIについては、さまざまな意見を耳にしますが、今回の取材で、ロボットが働く環境を変え、働きやすくなる人が増える可能性を感じ、その未来にワクワクしました。今後は商環境や物流の現場とも連携したり、オフィスで働く人とロボットを掛け合わせたりといった研究にも取り組んでいけたらと思います。(井熊)

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