株式会社オカムラは、経営理念「オカムラウェイ」のもと、「人が活きる社会の実現」を目指しています。そのオカムラウェイをテーマに、さまざまな角度からオカムラがこの先目指す姿を紹介していくのが、本連載「Okamura Way and Beyond」です。
前編に引き続き、サンスター株式会社 総務部長 兼 法務・リスク管理部長 大場 英樹さんと、オカムラのコーポレートコミュニケーション部 ブランディングマネージャー 神山 里毅による「働きがい対談」後編をお届けします。話題は、現場の声との向き合い方、そしてパーパスと「働きがい」との関係へと移っていきます。
2025年6月取材
前編はこちらから
課題は、現場の声にどう耳を傾け、どう活かすか
「従業員の声を拾うためにアンケートを活用するが、中には“アンケート疲れ”を感じる人も」(大場さん)
大場:改めて、オカムラさんの「働きがい会議」や「WiL-BE 2.0 CARAVAN」のような取り組みは、従業員の声を汲み取るために非常に有効ですよね。
サンスターでも、さまざまな社内調査を実施しているのですが、最近はいい加減“アンケート疲れ”の空気も出てきています。各部門としては、知りたいことを年に1回アンケートしているつもりでも、従業員からすると、さまざまな部門のアンケートを毎月のように答えさせられている印象になってしまうんですよね。目的が違っても、受け手側から見ると「また同じようなもの」に感じられてしまう。そうなると、回答の信頼性にも影響が出てしまう。
さらに、デジタルなアンケートはある程度仮説を立てて実施しているので、その仮説以外のところを拾い切れていない。例えば、たまにアンケート欄の「その他のフリーコメント」のところに、びっしりといろいろなことを書き込んでくれていたりするのですが、これは選択肢形式では拾えない。私自身、社内施策を検討する際にはとにかく定量化したいと考えていたのですが、数字だけ追っていると見当違いの方向に行ってしまったり、大事なことを見落としてしまったりしそうだなと危うさを感じています。これに対してオカムラさんの取り組みは、従業員への直接のヒアリングを重視しているのだなと感じました。そして、その内容の経営層へのインプットが早い。
神山:いや、でも直接話を聞くことができる人数には限りがあるので、サーベイやアンケートは必要ですよね。最近は自由記述の分析にChatGPTを一部活用したりもしていますが、大切な意見が埋もれてしまわないようにプロジェクトメンバーでしっかり結果を読み込むようにはしていますよ。大変ですけど(笑)
サンスターでも、さまざまな社内調査を実施しているのですが、最近はいい加減“アンケート疲れ”の空気も出てきています。各部門としては、知りたいことを年に1回アンケートしているつもりでも、従業員からすると、さまざまな部門のアンケートを毎月のように答えさせられている印象になってしまうんですよね。目的が違っても、受け手側から見ると「また同じようなもの」に感じられてしまう。そうなると、回答の信頼性にも影響が出てしまう。
さらに、デジタルなアンケートはある程度仮説を立てて実施しているので、その仮説以外のところを拾い切れていない。例えば、たまにアンケート欄の「その他のフリーコメント」のところに、びっしりといろいろなことを書き込んでくれていたりするのですが、これは選択肢形式では拾えない。私自身、社内施策を検討する際にはとにかく定量化したいと考えていたのですが、数字だけ追っていると見当違いの方向に行ってしまったり、大事なことを見落としてしまったりしそうだなと危うさを感じています。これに対してオカムラさんの取り組みは、従業員への直接のヒアリングを重視しているのだなと感じました。そして、その内容の経営層へのインプットが早い。
神山:いや、でも直接話を聞くことができる人数には限りがあるので、サーベイやアンケートは必要ですよね。最近は自由記述の分析にChatGPTを一部活用したりもしていますが、大切な意見が埋もれてしまわないようにプロジェクトメンバーでしっかり結果を読み込むようにはしていますよ。大変ですけど(笑)
「現場の声に耳を傾け、それをどこまで活かせるか」は、両社に共通する課題
神山:「働きがい改革 WiL-BE 2.0」というプロジェクトチームは、会社側ではなく、従業員の代表というスタンスなんです。なので、現場の声というのも「もう少しこうだったら働きがいが高まるのに」というアイデアを募っている感じです。でも、実際には会社への不満を聞く役回りにもなっている面もありますね。
大場:声を聞けば聞くほど、「不満」が集まりやすいのも難しさですよね。だから、そこを拾い上げるのではなくて、どう建設的な提案とアクションにまでつなげるか、さらに「誰かがやってくれる」ではなくて、「一人ひとりがそれを実現するように動けるようにしていけるか」が、次の課題だと思っています。
神山:「何かしてくれる会社」から「自分たちでつくっていく会社」への転換を目指すには、声を聞く行為そのものの「意味」を変える必要があります。「誰かの仕事のための参考意見としてあなたの声を聞かせてほしい」ということではなく、当事者として「一緒につくっていこうよ」というスタンスで語り合うのが大切なんでしょうね。
大場:なるほど、従業員の声を何かの施策のための参考意見ではなく、同じ方向を目指す仲間の意見として聞いて、活かしていくわけですね。これはすごく大事なことを聞いた気がするな。
そういえば、サンスターでは伝統的に従業員組合との対話を重視してきました。古くは、会長、社長が従業員と車座になって夜遅くまで会社の将来を語りあうといったことが行われていました。今でも、本部、支部で労使の懇談会が行われているのですが、地方の懇談会等にいくとアンケートでは聞けないような生の声を聞くことができます。
先日も、ある件で「本社ではそんなこと言っているみたいだけど、現場ではそうはいかないよ。」という耳の痛い意見を頂いたのですが、確かにこんなことはアンケートでは聞けません。この対談をきっかけに、私も働きがい会議やCARAVAN活動をやろうかと思いました。
大阪府高槻市のサンスター日本本社
パーパスと「働きがい」
大場:サンスターはもともと、自転車のパンク修理用のゴム糊から始まって歯みがきやヘアケアなどの生活領域に根ざした事業へと展開してきた企業で、「常に人々の健康の増進と生活文化の向上に奉仕する」ことを社是としています。「そのためには、サンスターの全従業員が健康でなければ、生活者が本当に必要としている製品を提供し続けることはできない」と考えているのですが、ここでの健康とは、従業員が心身ともに活力ある状態であること、それって「働きがい」を持って働けていることなんだと思うんです。神山:たしかに、命令やお金だけで人は動かないですからね。どれだけその人自身が「自分が働くことの意味を感じているか」が行動の源になる。
大場:そうなんです。「働きがい」って、いわゆる従業員満足だけではないですよね。そして、社員一人ひとりが「働きがい」を感じているかは、仕事におけるアウトプットの質や継続力に大きな差を生みますし、最終的には業績にも直接影響してくるのは間違いない。
神山:それはまさに私たちも実感しているところです。オカムラは、「人が活きる社会の実現」をパーパスとして掲げていますが、社外に発信する前に、まず社内で「活きる人」を増やさなければならない。そうでないと、言葉がただのスローガンになってしまいますから。
休日に喫茶店で数時間、話し込むこともあるという2人。話題は尽きない
神山:たしかに。オカムラの若い世代には、パーパスに共感して入社する人が本当に増えてきています。「人が活きる社会の実現」に共鳴して、「自分もそこに貢献したい」と思って入ってくれる。そうした共感層が社内で増えてくると、日々の会話やちょっとした意思決定の場面でも、自然とパーパスが判断軸として使われるようになるんです。結果として、組織文化そのものの「濃度」が上がっていくというか、価値観を共有できるベースができてきた実感があります。
だからこそ、「本気で取り組んでいる」と伝わるメッセージの設計が重要です。「どうせ会社都合でしょ」と思われた時点で、行動にも熱意は乗ってこないですから。
大場:その意味でも、従業員一人ひとりが「自分の仕事が会社を通じて、社会にどう貢献しているのか」を見えやすくする必要がありますよね。自分の働きが何につながっているのか。自分の仕事が「人が活きる社会の実現」、「人々の健康の増進と生活文化の向上」につながっていると感じられるか、それを感じられるようにすると、責任感も喜びも自然と大きくなる。
神山:それこそが、「働きがい」の根っこにある部分でしょうね。
対談後記
あなたは「私は働きがいを感じています!」と言えますか?なかなか言いにくいという方が多いのではないでしょうか。現場の従業員の方々と対話を重ねる中でしばしば感じるのは、「働きがい」というテーマ自体が、どこか照れや気恥ずかしさを感じるものとして捉えられているということです。しかしながら、多くの方が多忙な業務の中でも粘り強く仕事に向き合い続けている様子から、誰しもが意識的・無意識的を問わず、何らかの「働きがい」を感じているのではないかと思います。お話を聞いたサンスターさんの「働きがい改革」も、オカムラの「働きがい改革」も、目指しているのは、従業員一人ひとりが仕事を通じて喜びや達成感、満足感を得ながら、主体的かつ活き活きと働くことのできる状態の実現であり、このような取り組みは、これからも企業に所属し働き続ける従業員にとって、大きな意義と利点があるものだと思います。まずは自身の働きがいに向き合い、それを高めるために「現場の声」をプロジェクトチームに届けることから始めませんか。(神山)