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“働く意味”を問い直す サンスター×オカムラ「働きがい」対談〈前編〉

2025.10.03

株式会社オカムラは、経営理念「オカムラウェイ」のもと、「人が活きる社会の実現」を目指しています。そのオカムラウェイをテーマに、さまざまな角度からオカムラがこの先目指す姿を紹介していくのが、本連載「Okamura Way and Beyond」です。


テレワークの浸透やフリーアドレスの導入、福利厚生の充実、評価制度の見直しなど、多くの企業が働き方改革を模索する中、オカムラは「働き方」から「働きがい」へと、取り組みのテーマをシフトさせています。その「働きがい」をテーマに、サンスター株式会社で働き方改革を推進してきた総務部長 兼 法務・リスク管理部長 大場 英樹さんと、オカムラのコーポレートコミュニケーション部 ブランディングマネージャー 神山 里毅の対談を前後編でお届けします。サンスターとオカムラは、業界こそ異なるものの、改革のために現場の声に耳を傾けて取り組んできたという共通点があります。そうした背景をふまえ、公私ともに付き合いある大場さんと神山が、これからの企業に求められる「働きがい」とは何か、それぞれの立場と経験から意見を交わしました。
2025年6月取材

「働き方改革」の現場を知る2人が出会い、意気投合したワケ

神山 里毅(以下、神山):大場さんと初めてお会いしたのは、2022年6月に大阪の共創空間beeで行われた働き方改革関連イベントでしたね。私は登壇者として参加していたのですが、終了後にコミュニティマネージャーに「ぜひ紹介したい方がいます」と言われて、大場さんを紹介してもらったのを覚えています。
 
オカムラ コーポレートコミュニケーション部 ブランディングマネージャー 神山 里毅
オカムラ コーポレートコミュニケーション部 ブランディングマネージャー 神山 里毅

大場 英樹(以下、大場):私はそのとき、法務とリスク管理の担当でした。働き方改革にはプロジェクトメンバーとして参加していました。やるからには「制度をつくって終わり」では意味がないと思っていたので、他社の実践例にも大いに関心を寄せていました。実際、beeのイベントでは共感できるものが多かったのが、とても印象に残っています。
 
サンスター 総務部長 兼 法務・リスク管理部長 大場 英樹さん
サンスター 総務部長 兼 法務・リスク管理部長 大場 英樹さん
神山:私自身、働き方改革やパーパス浸透の現場支援にも携わっていたので、大場さんとお話したときに、「共通言語が多い」とすぐにわかりました。その後は、何かと頻繁に会っていろいろ意見交換する仲になって。そういえば、大場さんの東京出張に合わせて飲みに行ったこともありましたね(笑)。

大場:そうそう(笑)。すぐに意気投合して、若手従業員の交流会などを共催したこともありましたね。私はいま単身赴任で大阪に住んでいますが、東京の住まいが神山さんのご自宅とものすごく近所だったことにも縁を感じましたよ。いろいろな話をしてきましたが、雑談のなかで自然と「働きがいって何だろう?」が話題になることが多かったですね。

神山:そうですね(笑)。会社も職種も違いますが、とても近い考え方をされていると感じていました。同じテーマに取り組む立場として、大場さんとこうして対談できるのは、私にとってもすごくありがたいことです。今日はぜひ、そのリアルな部分も含めて率直にお話しできればと思います。
 
対談は、大阪府高槻市のサンスター日本本社で行われた
対談は、大阪府高槻市のサンスター日本本社で行われた

制度の先にあるもの、「働き方」から「働きがい」へ

神山:大場さんと出会った当時、サンスターさんも働き方改革がまさに進行していた時期でしたよね。あらためて、その背景にあった課題感や意識について教えていただけますか? 
 
「従業員の働く環境が整っていなければ、『持続可能な組織』にはならない」(大場さん)
「従業員の働く環境が整っていなければ、『持続可能な組織』にはならない」(大場さん)
大場:大きかったのは、人材の獲得競争が年々厳しくなってきたという危機感です。実際、「人が採用できない」「育てた人が引き抜かれてしまう」、そんな現実を肌で感じていました。社名や待遇だけでは選ばれなくなってきた中で、「選ばれる会社」「魅力的な会社」「働き続けたくなる会社」への転換が不可欠だと感じていました。
そうした中で、就業環境を、単なる“従業員サービス”としてではなく、経営インフラと捉えるように考え方を切り替えたんです。

神山:すごく共感します。働きやすさって、単に柔軟な制度があることではなくて、「ここで働き続けたい」と思えるかどうかですよね。

大場:そうなんです。それで、サンスターではテレワークやフリーアドレス(※1)、グループアドレス制(※2)、フレックス活用、オフィスカジュアルの推進や会議の効率化など、さまざまな施策を進めてきました。オカムラさんは、サンスターより少し前から働き方改革を推進していましたよね?

※1:オフィス内で好きな席を選んで座ることができる仕組み
※2:チームや部署ごとにエリアが割り当てられており、その中から好きな席を選んで使うオフィスの仕組み。サンスターでは、明確にエリアを割り当てたわけではないが、部署によって集まるエリアが決まってきている
「会社は働きやすい環境を整えてきたが、従業員の意識を変えるには別の軸が必要」(神山)
「会社は働きやすい環境を整えてきたが、従業員の意識を変えるには別の軸が必要」(神山)
神山:オカムラは企業の働き方や働く場づくりのコンサルティングを手掛けていますので、コロナ禍以前から柔軟な働き方の導入は積極的に進めていましたね。いわゆる「働き方改革」としては、2019年から2021年まで3年間のプロジェクトとして進めていました。具体的には、在宅勤務等の制度改革やICT環境の整備など、“働きやすさ”の基盤をつくることに力を入れていたんです。

大場:その基盤づくりは、オカムラさんの事業とリンクしていますね。

神山:はい。ただ、当時の「働き方改革」は、働きやすい環境をつくることで生産性の向上につなげるというのがメインテーマだったので、従業員の「働きやすさ」は向上したものの、「働きがい」という視点は不十分だったと思っています。そこで2023年からは、テーマを「働き方」から「働きがい」にアップデートして、従業員が活き活きと前向きに働ける状態を実現する「働きがい改革」をスタートしました。
 

働く環境から働きがいへ

大場:アップデートというのが、すごくよくわかります。「働く環境」を整えるだけでは「働きがい」の向上には不十分なんですよね。その環境を十分に活用して会社と自身の成長につなげていかないといけない。我々は活用のアップデートステージにいるという認識です。

神山:「働く環境」といえば、本日お邪魔しているサンスターさんの日本本社は、2021年に新築されましたが、その際、オカムラがオフィス設計を担当させていただきましたね。職場環境は大きく変化したと思いますが、みなさんの反応はいかがですか?

大場:好評ですよ! 本社のリニューアルは、ちょうど組織全体で「コミュニケーション」と「社員の主体性」を強めていこうとしたタイミングに重なったんです。そこで、オフィスのあり方も見直しました。この日本本社の「明田コミュニケーションパーク」は、オフィスをコミュニケーションのよい生活空間を共にする「村」のようにすることを狙っています。そのためできる限り壁や個室、仕切りのない空間をつくっています。例えば、役員室や部門毎の部屋を廃止したことで、フロアで役員や部門長同士が顔を合わせて話す機会が増えました。結果として、組織間の情報伝達や意思決定のスピードはぐっと上がったと感じています。ちょっと上司に話した内容が、5分後には「あの人にも言っておかないとな」と思っていた人に伝わっていたりする。これは意識しないとわかりづらいのですが、フロア内に壁がなく、どこに誰が座っているか見渡せるような環境というのは非常にコミュニケーションに有効ですね。ちょっとした機会にキーマンを捕まえて話をすることができる。

神山:環境の変化が社内共有のスピードアップにつながっているわけですね。

大場:一方、集中したい人用にはフォーカスエリアも設けています。内壁の材質にもこだわりがあって、声などが響きすぎないようなつくりにもなっています。普段、こちらで仕事をするのに慣れていると、他のオフィスに行ったときに、思ったより自分の声が響いていたりしてびっくりします。
また、フリーアドレスもあわせて導入し、フロア全体に流動性を持たせました。これは当初、コミュニケーション活性化と自分で仕事に最適な環境を選んでもらうといった狙いがありました。しかし、こちらは、どの辺にどの部門がいるのかわからないという声もあり、自然と緩いグループアドレス制に移行しています。ちなみに、「固定席があった方が安心だ」という声もあるのですが、席が固定するとコミュニケーションを取る相手が固定しがちになるのと、自席に書類をため込んでしまうことを危惧しています。フリーアドレス後は、書類の電子化も大きく進みました。また、事業スピードの加速に伴って、組織変更、再編成といったことは頻繁に発生します。固定席では、その度にレイアウトを変えなくてはなりません。フリーアドレス、グループアドレスには賛否両論あると思うのですが、現在は総合的にはこれが最適解かと感じていますので、今はこの試みを他拠点に横展開させていっています。
 神山:そうしたコミュニケーションの活性化は自然に生まれたものなんでしょうか。

大場:環境がコミュニケーションを促したという面はおおいにあると思っています。また、同時にコミュニケーションを促す取り組みも行ってきました。フリーアドレスでは、誰が誰なのかわからないという声がありましたので、それぞれに自己紹介の書かれた名札をつくったり、カフェのような環境音楽を流してみたり、いつの間にか独立した席が増えていたので、こっそり机の配置を変えて車座にしたり(この台形型の机、最高ですよね)……さらに一階の食堂や中庭では、従業員組合が社内懇親会等のイベントを開催してくれていたりと、まさに「村人」が飽きないように、いろいろなことを仕掛けてはいます。
しかし、そもそも根本的には、コミュニケーションのしやすい雰囲気、特に、上司(直属上長だけではなく経営層も含めて)と部下の間での心理的安全性が確保された組織をつくること、そして社員一人一人のモチベーションを高めることが重要でしょうね。そちらはまさに「働きがい改革」の領域ですね。
オカムラさんの「働きがい改革」は、どのように進めているんでしょうか?
 
 「2023年、『働き方改革 WiL-BE』を、『働きがい改革 WiL-BE 2.0』にアップデート」(神山)
 「2023年、『働き方改革 WiL-BE』を、『働きがい改革 WiL-BE 2.0』にアップデート」(神山)

神山:「働きがい」は従業員それぞれで違うものなので、会社が与えられるものではないという大前提のもと、働きがい向上を多面的に支援する「働きがい改革 WiL-BE 2.0」というプロジェクトを推進しています。オカムラでは、従業員の働きがいに大きく影響を与える要素として、これまで話をしていた「働く環境」や「社内コミュニケーション」に「キャリア設計・人財育成」「人事労務制度」「デジタル技術の活用」の3つを合わせた、5つの要素が重要だと考えており、それらを主管している部門が中心となり「5つのアクション」を推進しながら、さらに横連携することで全社の「働きがい改革」を体系的かつ網羅的に行っています。
 
「従業員が活きる」を実現する5つのアクション​
「従業員が活きる」を実現する5つのアクション​
大場:なるほど、働きがい改革の中心には「従業員」を置いて、それをさまざまな視点から支援する形なのですね。私たちはまだ体系化できていなかったので、とても参考になりました。でも「働きがい」というテーマについて現場の従業員の意識はそれほど高くなかったりしませんか?「あなたの働きがいは何ですか?」と聞いて、直ぐに答えられる人ってあまりいない気がします。

神山:そうなんですよね。そこで、我々がまず初めに取り組んだのが「働きがい会議」という施策でした。これは今では年に一度、全社全部門で100%実施してもらっていますが、すべての従業員が自身の「働きがい」についてしっかり考える機会をつくろうというものです。あらかじめ用意したワークシートを使って、「自分にとっての働きがいとは何か」を一人ひとりが考え、言語化してチーム内で共有します。ファシリテーターを務める所属長も自分自身の働きがいを共有し、部下との相互理解を深めます。働きがい会議の実施後には、所属長と部下との面談機会を設けており、働きがいを踏まえたキャリア設計を一緒に行う流れです。

大場:自身の働きがいをまずしっかり把握することではじめて、それを向上させるために何を意識すべきかがわかるという流れですね。次の段階としては、従業員側からいろいろと要望が出てくるという感じですか?そのための仕組みも必要になりますよね。

神山:現場の声を集めるための施策としてまた、「WiL-BE2.0 CARAVAN」も行っています。私を含むプロジェクトリーダーが全国80拠点を巡って、現場の声を直接ヒアリングして回るというものです。地方拠点で働いている方は、こういったプロジェクトは本社でやっていること、自分たちにはあまり関係ないことだと思い込んでしまっている方が結構いるんですよね。やはり現地で対面で話をすると、活きた意見がどんどん出てくるのでそれを私たちが整理した上で、必要に応じて経営に提言を行い、スピード感のある経営判断を促しています。

大場:話はそれますが、神山さんはよく「デザイン経営(※3)」を謳っていますよね。こうした一目でわかる図や体系的に整理された活動を見ると、経営の思考の中身がよくわかります。

神山:はい。企業においては、経営の方針に従い、各部門においてさまざまな取り組みが行われていますが、組織がしっかりしていればいるほど、自部門のアウトプットは良くなりますが、他部門との連携は悪くなりがちです。こういった社内の「部分最適」を「全体最適」にしていくためには、全社の取り組みを把握し、整理し、わかりやすく図やストーリーにまとめて、社内外に共有するというクリエイティブ業務が必要なんです。これはデザイン経営の一端ですが、オカムラでは最近そのあたりも力を入れるようにしていますね。経営がどんどん複雑化してきているので、今後こういった役割はどの企業においても重要になってくると思っています。
 

※3:デザインの力を経営の中核に据え、企業の価値創造や競争力向上を図る経営手法


対談後記
前編では、サンスターとオカムラ、それぞれの立場をふまえて「働き方改革」の経験から「働く環境」、そして「働きがい」の重要性まで話題が広がりました。後編では、現場の声との向き合い方、そして企業パーパスと「働きがい」の関係性まで語りあう模様をお届けします。お楽しみに。(編集部)

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