My Okamura Way Vol.17
商環境事業本部 事業戦略部 長山 大介は、「空間が人に与える影響の大きさ」に魅力を感じ、オカムラへ転職。大手スーパーマーケットやドラッグストアの営業担当として顧客の課題解決に取り組みました。現在は、商環境に関連する新規事業の立ち上げを目指しさまざまな取り組みに携わっています。一貫して現場の声を重視し、営業経験を活かして新しいビジネスの機会を模索する長山のこれまでとこれからについて聞きました。
2024年12月取材
空間が持つ「人の気持ちを変える力」に導かれ、オカムラに転職
――はじめに、入社の経緯について教えてください。
長山 大介(以下、長山):私は新卒で塗料メーカーに入社し、建築塗料の営業をしていました。入社3年目頃、勤務先の建物を全面的にリニューアルすることになりました。その際、オフィスの設計や内装を担当したのがオカムラでした。完成したオフィス空間を目にして、「空間づくりには、こんなにも人の気持ちを変える力があるのか」と感動したのを覚えています。
この経験を通して、自分のアイデアや提案が、より直接的に人々の生活や働き方に影響を与え、それを直接実感できる仕事がしたいと思うように。そして、それが空間全体を創造するオカムラの商環境分野へのキャリアチェンジを決意するきっかけとなりました。
――空間が人に与える影響の大きさを、身をもって実感されたのですね。入社後はどのような業務を担当されましたか?
長山:2008年に商環境事業本部の営業担当としてオカムラに入社しました。入社から約12年間は、大手スーパーマーケットやドラッグストアチェーンを担当し、新規店舗の立ち上げ、既存店舗の改装支援などに携わりました。この業務で私が最も重視したのは、お客様の要望を正確に理解し、それを実現可能な形に落とし込む、いわば「翻訳」です。例えば、「棚板3枚が欲しい」という一見シンプルな要望の背後にある、詳細なニーズを丁寧にヒアリングする。お客様の期待に応えるだけでなく、潜在的な課題も発見し、よりよい提案や解決策の提供を大切にしていました。
――その後、コンストラクションマネジメント部門(CM部門)に異動されたそうですね。
長山:はい、2020年にCM部門へ異動しました。商品陳列什器の積算業務(※)に多くの時間を割いていることは事業部全体でも長年の課題で、この部門のミッションの一つは積算業務の標準化の推進や属人化の解消です。私も業務として取り組んできましたが、顧客ごとに異なる仕様や要望を吸収しつつ、それを標準化・効率化することは簡単には進みません。比較的短い期間で今の部門へ異動になったので、心残りはあります。現在在籍するメンバーを中心に改善プロジェクトが立ち上がり進行中なので、今後の進展に期待しています。
※:平面図や仕様書などから什器や材料などの数量を算出し、見積もりを算出すること
課題解決のヒントはスーパーマーケットで働く人の声から
――事業戦略部への異動は、2022年に10年後の商環境の未来を考えるプロジェクト「みらい会議」に参加したことがきっかけだったそうですね。
長山:数年前から、商環境事業の今後を考える事業部内プロジェクトが立ち上がり、私も含めて中堅社員が参加し、課題解決や今後の方向性を議論しながらアイデアを提案してきました。提案時に、トップから「まずは現場を知ることが重要」と指摘を受けたことをきっかけに、これまでオカムラでは例のなかった「長年のお取引き先であるスーパーマーケットでの実地体験」の実施が決まり、私が担当させていただきました。2か月間にわたり、青果や惣菜の値付け、陳列作業、レジ業務など、スーパーマーケットの店舗運営のほぼすべてを体験してきました。
――体験を通して、どのような気づきがありましたか?
長山:現場では日々限られた人員でさまざまな業務を担当しており、改善活動にまで時間を割くことが難しい現実を改めて痛感。同時に「課題解決のヒントは現場にある」ことも強く実感しました。外部の人間だからこそ見えた課題、そして何よりも店舗スタッフの皆さんの創意工夫や努力を目の当たりにし、それをサポートする必要性を感じました。
長山:例えば、バックヤードの整理整頓です。作業動線を意識した配置の見直しや、備品の定位置管理の徹底などを提案しました。アイデアはスーパーマーケット業界だけでなく、他業種の事例も参考にしながら考えたものです。これはオカムラ発スタートアップ企業の株式会社NovolBa(ノボルバ)のメンバーと話をしていたときの「他の業種の事例も参考にしてはどうか」というコメントがきっかけでした。アパレル企業のバックヤードを思い起こしたところ、導線設計に関する気づきがありました。商環境事業にずっと携わる自分にない視点は、大きな刺激となりました。
ありがたいことに、実地体験に伺った店舗が実証実験に協力してくださいました。日々の忙しい店舗運営の中、バックヤードのレイアウト変更作業などは大変だったと思います。それでも結果として、「作業がしやすくなった」という嬉しい声をいただけました。この経験を通して、新規事業の推進には、社内外のさまざまな視点を取り入れ、視野を広く持つことが不可欠だと再認識した次第です。
――スーパーマーケットでの実地体験での気づきは、長山さんご自身にどのような変化をもたらしたのでしょうか?
長山:実地体験は、私自身の働き方も大きく変えました。営業時代は、売上目標を達成することが主なミッションでしたが、現在は自分で目標を設定し、プロジェクトを推進する立場となりました。当初は、この自由度の高さを楽しみにしていましたが、実際には想像以上に大変なことが多いです。しかし、さまざまな人の意見に耳を傾け、自分なりの視点で一つずつ解決策を見出していく力が、この経験を通じて身についたと実感しています。
店舗スタッフの“神業”に圧倒されたスーパーマーケットでの実地体験
「実地体験で店舗に着任して支給されたエプロン、実は最初の頃は着用できなかったんです」と長山。買い物にきたお客様から見れば、「エプロンをしている人=店員」と思われるため。売り場案内もできない人はまだエプロンを付ける資格がない、というわけです。「エプロンを初めて着けた日は、涙がこぼれるかもしれないと思った(笑)」と、長山はスタートの頃を振りかえります。
最初は、青果調理室で野菜の袋詰めやカット作業に追われたそうです。「1日で最大1000本のキュウリを袋詰めし、約20秒に1袋のペースで進める作業は、体力と精神力の限界に向き合う体験でしたね。スタッフの皆さんの手際のよさと、忙しい中でもお客様に笑顔で対応するホスピタリティは本当にすごいです」と長山。バックヤードやレジでは座ってほしいと思っても、「立っている方が効率的」と言う人も多いそう。
「店舗スタッフの皆さんが働きやすい環境をつくる提案をしたいと思いました。それから実地体験中、帰り道に別のスーパーマーケットに立ち寄ると店内でつい『いらっしゃいませ!』と言いそうになり、困りました(笑)」(長山)
――現場に寄り添いながら課題解決のヒントを見出そうとする姿勢に、長山さんの行動力が表れていると感じました。そんな長山さんの仕事観に影響を与えた出来事を教えていただけますか?
長山:あるスーパーマーケットの改装での経験です。もともとオカムラが手掛けた店舗でしたが売り上げ不振に。コンペの結果、別のデザイン会社のアイデアが採用され、リニューアルで売り上げが改善。変化を目の当たりにして驚きました。そこで思い切ってそのデザイン会社にアポイントを取り、先方の社長にオカムラは何が足りなかったのか聞きに行ったんです。印象的だったのは「デザインが原因のすべてではなかったのでは?」という言葉でした。それを聞いて、平面レイアウトを引く時点から突き詰めて考える必要性を実感したんです。例えば、陳列棚の高さ一つでも顧客視点で商品の見え方をしっかり考えるなど、丁寧に店舗づくりを提案する、という姿勢を忘れてはいけないと思いました。
長山:それまでは、製品を販売することに注力しがちだったかもしれません。この経験から、空間全体の使い方や顧客体験を見据えた提案の必要性を再認識しました。お客様の要望をそのまま形にするだけではなく、本当に効果的な選択をプロの視点で示すことこそ、私の役割だと理解しました。その後の仕事における指針となる気づきをもらいましたね。
新規事業で挑む「持続可能な店舗運営の仕組みづくり」
――新規事業という新たな領域にチャレンジしている長山さん。どのようなときに働きがいを感じますか?長山:私がこの仕事で何よりやりがいを感じるのは、お客様と店舗をつくり上げるまでの "文化祭のような" プロセス です。お客様の要望や課題に寄り添い、時には一緒に悩みながら、時間との戦い(笑)もありながら形にしていく。これこそが、この仕事の醍醐味です。営業では特に実感する機会が多かったです。
今担当している新しい取り組みのお客様への提案では、価値をどう伝え、納得していただくかは簡単なことではありません。お客様の本質的な課題を共に深掘りし解決するという姿勢は変えず、そして既存のやり方にはとらわれずに、対応していきたいと思います。
――では、今後の目標について教えてください。
長山:目標は、物流などまで含めて、店舗運営全体をスムーズに回す仕組みを構築することです。例えば、店舗の陳列棚に商品が並ぶまでの流れを効率化し、課題を解決する仕組みづくり。壮大なテーマではありますが、これまでの経験から、現場の運営がスムーズであることが、お客様へのサービス向上や効率的な業務遂行につながると実感しています。新しい事業は今やっていることの先にこそあり、そしてそれが社会全体の課題への対応にもつながっていくのでは、と思っています。
やはり、目標達成の第一歩は、現場を深く知ること。バックヤードにおける整理整頓の必要性、物流センターから店舗への配送の課題を目の当たりにしました。これらの課題解決が、店舗運営の効率化・持続可能性向上につながると確信しています。
長山:先ほど話した「バックヤードの働き方改善プロジェクト」です。例えば、商品搬送用の台車やラックに番号を振ってデジタルで管理する仕組みをさらに進化させていきたいです。
また、商品陳列までの店舗内の物流過程にも着目しています。現在、メーカーごとに異なる段ボールサイズや、配送時間のばらつきが、現場スタッフの大きな負担になっています。これらの解決には、物流全体の標準化・デジタル化が欠かせません。その一環として、デジタルツイン(実際の空間をデジタル上で再現し、管理やシミュレーションに活用する技術)を活用し、物流センターや店舗の状況を遠隔で把握・管理できる仕組みを検討しています。
――現場を知ったからこその改善ですね。
長山:将来的には、今はオカムラの商環境事業で未着手の領域まで手掛けられるようになれば。商品が産地から物流を通じて店舗へ、そして顧客に届くまでのプロセス全体に関わることで、商環境事業の拡大と、同時に社会課題にも貢献できる仕組みが構築できるといいなと思います。大きな挑戦なので、商環境事業のメンバー協力だけでなく他事業部や社外とも連携が必要です。そしてこれは現在の課題を解決するだけでなく、新しい価値の創出につながっていくと信じています。
週末はパパモード全開! 家族との時間や趣味のバスケが活力になる
「私にとって大切なのは、家族との時間です。平日は仕事で忙しく、娘たち(10歳と4歳)と過ごせる時間が限られているため、週末は彼女たちとの時間を最優先にしています」とのこと。公園や動物園へ一緒に出かけ、地図アプリを見ながら行き先を決め、ボート遊びなどを楽しむのが恒例です。
「幼少期から親しんだピアノも、4年前に娘が始めたことを機に、連弾で楽しんでいます。親子で発表会にも参加し、星野 源やYOASOBIの楽曲に挑戦するなど、音楽を通じた絆を深めています」(長山)
また、中学・高校時代から続けているバスケットボールも趣味の一つだそうです。「現在もNBA観戦を楽しみつつ、年に数回、草バスケで仲間とリフレッシュしています。家族との絆を深め、趣味を楽しむ。それが、私にとってかけがえのない時間となっています」(長山)
誰かの「活きる」を自分の発信で後押ししたい
――長山さんが仕事において、最も「人が活きる」瞬間を感じるのはどのような時でしょうか?
長山:プレゼンテーションや情報発信の場では、「100人中1人でも行動を変えるきっかけをつくれれば、それで十分」という考え方を大切にしています。
私は、もともと「人に教えるのが得意ではない」タイプ。だからこそ、行動や発信を通じて相手に何かしら伝わればと考えています。ホスピタリティと言えば聞こえが良すぎるかもしれませんが、「こんなにいいものがあるからたくさんの人に使ってほしい」「発信した内容が、仕事の成果や働き方をよくすることにつながればいいな」という気持ちが強く、仕事のさまざまな場面で伝えたり、発信したりする際の原動力になっています。
――最後にオカムラのパーパス「人が活きる社会の実現」に向けて、長山さんが重要だと考えることを教えてください。
長山:オカムラは、これまで培ってきた「お客様と共に空間をつくり、育てる」という姿勢を大切にしながら、顧客視点に基づいたアフターサービスの充実や、リアル店舗の価値を最大化する提案などを通して、新しい時代のニーズに応えていくべきだと考えています。そうした積み重ねが、オカムラのパーパスである「人が活きる社会の実現」につながるのではないでしょうか。
「店舗オープン=ゴール」ではなく、むしろスタートです。納品した製品の効果的な利用法や売り場をより魅力的に見せるための工夫など、お客様の課題解決の継続的サポートが大切です。こうした取り組みは、お客様の満足度向上につながるだけでなく、店舗で働く従業員の方々が「活き活き」と働ける環境づくりにも貢献できると考えています。
また、オンライン化が進んでも、リアルの店舗は依然として重要であり、オカムラには「店舗を支える」という長年の実績と知見があります。今後は、製品を提供した先にある課題解決まで見据えた提案で、製品メーカーの枠を超えた価値創造を実現したいですね。
インタビュー後記
長山さんは、一貫して「お客様を深く理解する」ことを大切にしています。その姿勢は、まさにオカムラが掲げるパーパス「人が活きる社会の実現」を体現していると言えるでしょう。取材中も、「単に手段を提案するのではなく、その背景にあるストーリーを大切にしている」と語っていました。この考え方は、オカムラが掲げる「価値創造ストーリー」にもつながります。長山さんの「店舗オープンはゴールではなくスタートである」という言葉がまさにそうです。現状に満足せず、常に挑戦し続ける姿は、周囲にも良い刺激になっているのではと思いました。 (編集部)