実はオカムラ社内のあちらこちらには、「挑戦社員*」が存在しています。そんな彼らに注目したのは、ブランディング統括室の神山里毅。「人が活きる」につながる組織を越えた働き方とは?で、オカムラが今後あらためて育んでいくべき「挑戦カルチャー」について語った神山。今度は、神山自身が聞き手となって社内を取材。オカムラの多様な挑戦事例を紹介していきます。
「挑戦社員」とは
今回取材したのは、2021年11月にオカムラと株式会社ボーンレックスのJV(ジョイントベンチャー)として法人化した、株式会社NovolBA(ノボルバ)のメンバーです。インタビュイーは、代表取締役社長に就任した鄧ブンとメンバーの林昌毅、原康太、浦口昂久。いずれもオカムラ社内でそれぞれが異なる組織に所属しながら、この新しい新規事業開発プロジェクトに自主的に参加してきました。そんなメンバーに、プロジェクトへの参画から法人化に至るまでの経緯等について、神山がインタビューしました。
NovolBaが目指す、オカムラファンを増やすビジネスモデルとは?
神山里毅(以下、神山):まずは、NovolBa(ノボルバ)という会社について、おしえてください。鄧ブン(以下、鄧):はい。NovolBaは、スタートアップ企業を対象とした一社占有のセットアップオフィス(家具が設置された状態のオフィス)をサブスクリプション(定額制)で提供するサービスを行う会社です。生まれたばかりのスタートアップ企業が、成長していく過程に寄り添いながら、そのステージごとに最適なワークプレイスを提供することを事業コンセプトにしています。私たちの提供する価値が「成長するための場」であるというところから、社名を「昇る場-ノボルバ-」としました。
神山:今回、鄧さんは、NovolBaに出向というカタチで代表取締役に就任されましたが、もともとオカムラではどのような業務を担当していたんですか?
鄧:私は、2016年にオカムラに中途入社しました。学生時代から経営学やマーケティングを専攻していたので、新卒で入社した前職の機械部品商社では、商品開発からマーケティング、Webでの販売チャネル構築などを担当していました。その経験を活かしたくて、インテリア製品部(当時)販促担当としてオカムラに入社し、ECサイトの立上げなどを担当していました。
神山:なるほど。そんな鄧さんが、現在に至るまでには色々と経緯がありそうですが、おしえてもらえますか。
鄧:はい。2019年の上期から、オカムラのオフィス事業でほぼ手を付けられていないスタートアップ市場を今後いかに攻略していくかという議論が社内でスタートしていました。9月に本格的に検討を進めるべく、プロジェクトが発足し、私はサブリーダーとしてそこに参加することになったんです。当時は、成長スピードが非常にはやく、組織がどんどんと大きく変化していくスタートアップ企業のニーズに対応するオフィス家具を開発するというテーマで、働き方コンサルティング事業部や製品デザイン部、社外のデザイナーなども交えて企画を行っていました。
神山:その時点ではまだ、オカムラという家具メーカーとして、スタートアップ市場にどんな製品を投入できるかということがテーマだったわけですね。
鄧:そうなんです。でも、スタートアップ企業へのインタビューや行動観察などを行いながら議論を深めていく中で、スタートアップ企業はそもそも家具を購入するということ自体が大きなハードルであることが分かりました。特にオカムラの家具のように高機能だけれども価格帯も高めのものは、憧れるけれども手が届かないというのが現実でした。そこで、家具を購入しなくても、オカムラの提供するワークプレイス(空間と家具)をサブスクリプション(定額制)で、使用することができるようなWaaS(Workplace as a Service)というビジネスモデルを検討することにしたんです。
神山:最近はBtoCの家具メーカーやホームセンターなどでも、安価な執務用の家具なども数多く取り扱っていますが、やはり働くための家具にはこだわりたいという想いは、スタートアップ企業でも同じなんでしょうか?
鄧:起業間もないスタートアップ企業では、昼も夜もなく過酷な労働をしていることも多いので、長時間のデスクワークでも疲れにくい家具の重要性を強く感じているようです。そんなスタートアップ企業は、うまくいけばあっという間に成長し、人員が増え、オフィスの移転をしなくてはならなくなりますので、まだ組織が小さい頃から、オカムラの家具に慣れ親しんで頂き、成長して次のステージに上がった時にも継続的にオカムラの家具を使いたい!と思ってくれる“オカムラファン”を築いていくことが出来るのではないかと考えたんです。
神山:日本は欧米と比べ、起業に関する意識が低いことが知られています。その理由としては、起業に伴うコストや手続きの煩雑さ等の「起業のしにくさ」にあると言われていますが、NovolBaの事業は、日本の起業家を応援する仕組みづくりにもなっていると言えますね。そこからは結構スムーズに現在のビジネスモデルの開発に至ったのですか?
鄧:いえいえ、全然です(笑)社内では「WaaSプロジェクト」と名を変えて、2020年4月から2021年3月までの1年間の期間を設定し、社外協業パートナーであった(株)ボーンレックス社と共に、サービス開発と実証実験を行うことにしました。でも実際には、社内のメンバーはそれぞれが本業で忙しく、なかなか集中して参加することができず、パートナー頼みになりがちでした。また、当初、3件ほどの契約を行う目標を立てていましたが、それも1件だけしか契約に至らず未達成となってしまいました。Webサイトを開設したり、SNSや広告など施策を打ったりしたのですが、集客にはかなり苦労をしたんです。
神山:私もメンバーの方々から途中経過を聞いていたので、この頃のご苦労の様子は伺ってました。このタイミングくらいに、現在の主要メンバーである林昌毅さんがメンバー入りしましたよね。
鄧:そうです。当時、営業開発部で新規顧客の開拓を担当されていた林さんの尽力もあり、ようやく1件の成約ができたんです。
NovolBaメンバーに共通する興味・関心事に挑むマインド
神山:ここからは、メンバーの皆さんにもお話を聞いていきたいと思います。まず、いま話に出てきた林さんは、どのような経緯でプロジェクトに参加されたんですか?林昌毅(以下、林):オカムラの営業は基本的に「新品の家具を販売すること」「オフィスを作って引き渡すこと」をたくさん積み上げることがミッションです。そんな中で、私はもっとお客様に寄り添ったサービスが展開できないかなと考えるようになりました。WaaSは「オフィスをサービスで提供して、スタートアップとつながりつづけるビジネスモデル」だったので、是非これを形にしたいと思い参加させてもらうことにしました。
神山:本業もかなり忙しかったと思いますが、どのように調整されたんですか?
林:所属していた営業開発部ではオカムラの既存顧客でない企業との関係づくりをするミッションだったので、通じる部分もあり、最初はサブメンバー的な形で本業に支障のない範囲で参加しはじめました。でも、2021年の4月からいよいよ本格的に専任で取り組む必要が出てきて、「WaaS準備室」という部署が立ち上がることとなり、そこに異動しました。その際は、業務の引継ぎ等で多少バタバタしましたが…… 協力・理解してくれた上司や同僚にはとても感謝していますね。
神山:なるほど。では、その「WaaS準備室」ができてから、本格的な起業に向けた準備が始まったというわけですね。
林:そうなんです。ただ、サービス開発の他にもやることはたくさんあって、例えば、実際にオフィスをつくろうとすれば、レイアウトの作図が必要になりますし、顧客提案のためにはわかりやすいプレゼンテーション資料をつくる必要もあるわけです。鄧さんと私は、その辺は専門ではないため困っていました。そこで、神山さんが主催しているWAP*というコミュニティで、一度NovolBaのプレゼンをさせてもらって、自主的に参画してくれるメンバーを募ったんです。そこで手を挙げてくれたのが、原さんと浦口さんでした。
*WAP:若手・中堅メンバーを中心に、身近な課題解決や新しいビジネスアイデアを議論する活動
神山:そうでしたね。では、原康太さんと浦口昂久さんにもお話を聞いていきましょう。お二人はまだ若いですが、オカムラでの経歴をおしえてください。
原康太(以下、原):私たち二人は、2017年入社の同期で、入社5年目になります。私は、ラボラトリー営業部のデザイン室やソリューション室で、設計やコンサル業務を担当していましたが、この度、NovolBaに正式に出向することになりました。
浦口昂久(以下、浦口):私は、オフィス営業本部のスペースデザイン部でオフィスデザインを担当しています。NovolBaでは、オフィスの設計やプレゼンづくりのサポートをしています。
神山:まだまだ若いですが、お二人はもともと新規事業開発に興味があったんですよね。
原:そうなんです。私たち二人以外にも、製品部などにも同期がいるんですが、みんなで夜な夜な集まって勝手に新製品や新規事業のアイデアなんかを練ったりしていたんですよ。
浦口:そんな中で、神山さんに誘ってもらってWAPにも以前から参加していまして、そこでNovolBaの話を聞き、興味を持ったので、お手伝いすることにしました。私はオフィス設計が本来の業務ですので、上司にも説明して、通常業務の一部として取り組ませてもらっています。今後もオカムラでオフィスデザイナーとしての業務経験をしっかりと積みながら、プラスアルファの挑戦として、NovolBaというベンチャー企業での活動も経験させてもらいたいと思っています。
原:逆に私は、NovolBaでの業務が、本業務とは異なっていたため、なかなか調整が難しい部分もありました。しかし、もともとベンチャー勤務の社外の友人なども多く、いつかは自分も新規事業の立上げに関わりたいという想いがあったので、悩んだ末に、NovolBaへの出向を決意しました。上司もそんな私の希望をくみ取り、各方面に調整をして後押しをしてくれました。
林:2人が参画してくれることになって、本当に助かりましたよ!そもそも人を新たに雇うことはできない状況だったので、マンパワー的にもですが、何よりも同じ想いで協力し合える仲間ができたことはとてもうれしかったです。
鄧:こんなメンバーの協力を得ながら、検討を繰り返し、2021年10月に中村社長や取締役会への複数回のプレゼンテーションを実施しました。とにかく熱意をもって、この事業を実現するんだ!という想いをぶつけた結果、なんとかご承認をいただくことができ、めでたく11月12日に(株)NovolBaを設立できました。会社設立はゴールではなくスタート地点ですので、しっかりと結果を出すために、仲間たちと共に頑張っていきたいと思います!
これからの“挑戦社員”に向けてのメッセージ
神山:NovolBaができるまでには、オカムラ従業員4者4様の“挑戦”があったということが分かりました。これからのオカムラには、誰でも気軽に挑戦ができ、会社はその挑戦を応援するような「挑戦カルチャー」が必要だと思います。「挑戦社員」の先輩として、従業員の皆さんにアドバイスがあればお願いします。
林:私は、何か新しい取り組みやアイデアを思いついた時には、一人で悩む前に、まずは自分の周りのいろんな人に話をしてみて、共感してくれる人を探すようにしてるんです。共感してくれる人がいれば、自分のアイデアに自信も出てきますし、仲間も増やす事ができるので一石二鳥ですよ。
鄧:社内の誰もが興味を示してくれるアイデアなんてなかなかないので、まずは共感してくれる人を探して、仲間になってもらうのはとても有効だと思いますね!
原:私は、自分の経験からも、普段から自分の興味を持っていることを口に出して発信したり、取り組んだりしておくことが重要だと思います。
浦口:たしかに、普段から興味や関心を発信している人の方が、何かあった時に声を掛けてもらいやすくなりますね。あとは、自分でも常にアンテナを張っておいて、積極的にアプローチをすることでしょうか。
神山:NovolBaメンバーの皆さま、ありがとうございました。スタートアップ企業としてのNovolBaもこれからどんどんと昇っていくことを祈念しております!