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ねじの物流を支える、オカムラの超高層自動倉庫(サンコーインダストリー株式会社)

2023.11.02

オカムラが宣言する「人を想い、場を創る。」―― オカムラはオフィスをはじめ商業施設、病院、学校、博物館や美術館、そして物流施設と多様な場づくりを展開しています。自分らしく「活きる」人を増やし、笑顔があふれる社会づくりの一端を担ったといえるようなエピソードを「オカムラの仕事を訪ねて」と題し紹介します。みなさんが訪れたあの場所や空間に、場づくりの段階で実はオカムラも携わっていた……ということがあるかもしれません。


オカムラの物流システム事業に、ものづくりや物流の現場を支える1970年代からのロングセラー製品があります。それが多段式独立水平回転棚「ロータリーラック」です。収納物が人のところに回転して届くことで、取り出し時間の短縮を図り、自動化・省人化・省スペース化を実現する製品です。今回ご紹介するのは、国内最大級となる高さ14m超高層仕様自動倉庫「ロータリーラックH」をねじの専門商社・サンコーインダストリー株式会社へ納入したエピソードです。業界随一のねじ在庫数を誇る同社物流センターの業務がどう変わったのかを、働きやすい環境づくりに貢献したいと願うオカムラの役割や思いと共に探ります。
 

1本売りにも対応! 約200万種のねじを扱う専門商社

私たちの身の回りの製品には数えられないほどのねじが使われています。サンコーインダストリー株式会社は、大阪市内に本社を構える1946年創業のねじの専門商社。「ないねじは、ない」をモットーに掲げ、スマホやメガネに使われる小さなねじから、飛行機に使われるような大きなねじまで、約200万種類のねじを取り扱っています。

サンコーインダストリー株式会社 代表取締役社長 奥山淑英さん
サンコーインダストリー株式会社 代表取締役社長 奥山淑英さん

「アイテム数は増やし続けており、年間10万種類、多いときは20万種類増やすこともあります。ここ東大阪物流センターと外部倉庫を合わせると、ねじの在庫は約25億本。いかに多くのアイテムを取り扱い、在庫を拡充していくかが当社のビジネスモデルの根幹です」 そう話すのは、3代目の奥山淑英社長。在庫が多ければ管理も大変ですが、品揃えこそがサンコーインダストリーの強み。1本からのバラ売りにも対応しており、全国各地に5,500社ほどの得意先があります。一方、仕入先はほとんどが東大阪市内のねじメーカーで、月に約900社からの納入があるといいます。
 

出荷単位は、バラ・小箱・ダンボールの3種類

サンコーインダストリーでの出荷形態は3つに分かれます。「バラ売り」は文字通り、1本単位での販売です。「小箱」はねじメーカーが商品を一定数まとめた箱で、1箱に大体100本、多いもので5000本ほど入っています。ほかに小箱を10~20個まとめた「ダンボール」単位でも販売します。サンコーインダストリーの出荷の割合は、バラが6割、小箱3割、ダンボール1割です。

                                 

土地の制約を超えられるのは自動倉庫だけ

サンコーインダストリーの東大阪物流センターがある東大阪市は、ねじの生産量が日本一。東大阪物流センターの半径4km圏内に約100社のねじメーカーがあります。

「産地の物流センターなので納入リードタイムが短くて済む一方で、土地の制約が大きく、一般的な物流センターに比べて、相当狭い土地をやりくりしなければなりません。必然的に上に高く建物を建設することになり、自動倉庫という選択肢しかありませんでした」(奥山社長)

すでに2013年にバラのねじをピッキング※1するための物流自動化設備として「ロータリーラックH」を物流センター4号館に導入。2015年には出荷前の荷合わせ※2用の「ロータリーラックH」を2号館に導入しました。これらによって製品の機能面はもちろん「静粛性や耐震性はわかっていました」と奥山社長は話します。

※1:出荷指示に基づき、商品を選別して取り出す作業。
※2:ピッキングされた商品を出荷先ごとに検品して、出荷に向けて特定の場所に集める作業。


2022年に新設された5号館には、小箱ピッキング用の「ロータリーラックH」を導入しました。過去に導入したものよりはるかに高層で、国内最大級となる高さ14mの超高層仕様が特徴です。導入の背景には土地の制約に加えて、働く人の課題もあったと奥山社長は振り返ります。

「小箱ピッキングは最後まで自動化できていない作業でした。ねじは重いため、台車も鉄製です。それを押しながら長さ120mもある倉庫を走り回って小箱をピッキングするのは非常に効率が悪かったのです」

超高層仕様「ロータリーラックH」。3階から6階まで吹き抜けの空間に設置された
超高層仕様「ロータリーラックH」。3階から6階まで吹き抜けの空間に設置された

本案件のオカムラの営業担当は、物流システム営業部の山岸昇平です。入社以来マテハン※3設備の営業として、数多くの現場にロータリーラックを納入してきました。そんな山岸にとっても、「面積と高さが限られた建物において、一つでも多くのポリケースを保管できるよう収納効率を最大まで高めるのは大きなチャレンジだった」と話します。

※3:マテリアルハンドリングの略。生産や物流の拠点で原材料から商品まであらゆるものの移動のこと。
物流システム営業部 東京西支店 営業課 課長 山岸昇平
物流システム営業部 東京西支店 営業課 課長 山岸昇平

「3階から6階の吹き抜け部分にロータリーラックを設置するため、工事は建築会社とも密に連携して進めました。また単にハードを入れればよいだけでなく、いかに作業者の手元に早く間違いなく物を運ぶかというソフトの設定も重要。要望やこだわりを丁寧にヒアリングし、営業の私だけでなくエンジニアも一緒に議論を重ねながら、解決すべき課題を一つずつクリアにしていきました」(山岸)

技術的な検討には相当時間を割いたといいます。
「社内で開発した画像処理システムとの情報連携なども必要だったため、かなり細かい技術の話をしました。山岸さんは営業だからいなくても大丈夫だと冗談で伝えたほどです(笑)。オカムラのエンジニアは得意先だからといって忖度することもなく、熱い方ばかりでした」(奥山社長)
 
「山岸さんは、すぐ現場に駆けつけて相談にのってくれる」(奥山社長)
「山岸さんは、すぐ現場に駆けつけて相談にのってくれる」(奥山社長)

物流ビジネスとして「優先すべきこと」と「働く人を考えること」

ロータリーラックのような自動倉庫は、企業にとって大きな設備投資です。サンコーインダストリーが設備投資を決めた理由は「土地を有効活用するため」でした。

奥山社長は、「土地の制約を超え、在庫を多く抱えるビジネスモデルを実現するのは自動倉庫だけ」と改めて強調し、「自動倉庫の導入で従業員の業務を省力化できる部分はありますが、当社にとってそれらはあくまで波及効果。設備投資の第一の目的にすることはしません。現状で回っている仕事を省力化しても(人を減らしても)ビジネスにプラスにはならないですから」と続けます。
 
限られた土地の有効活用を目的に、ロータリーラックは導入された
限られた土地の有効活用を目的に、ロータリーラックは導入された

これはあくまで設備投資の優先順位の話であり、決して働きやすさをないがしろにしているわけではありません。むしろ福利厚生には力を入れているといいます。「働くことは生活の基本。どうせ会社にくるなら何かいいことやちょっと贅沢な感じがあったほうがいいでしょう」と奥山社長。社内の食堂でプロの料理人による食事を提供したり、飲み物やパンを割安価格で提供したりしているのも、そんな思いの現れです。
「従業員の生活に関することは、会社側から支援していかないと続かない」(奥山社長)
「従業員の生活に関することは、会社側から支援していかないと続かない」(奥山社長)

ロータリーラック導入による波及効果も、もちろん歓迎していました。
「小箱のピッキングは従来、重労働だったので男性従業員が担当していましたが、今は担当4名全員が女性です。そもそもロータリーラックを導入する2013年以前は、物流センターの従業員はほぼ全員が男性でした。今では従業員の約4割が女性です」(奥山社長)

ロータリーラックの導入と合わせて作業パターンの多様化も進めた結果、高校生が学校帰りにアルバイトに来たり、家事のために途中で抜けたりと、フルタイム勤務が難しい人でも隙間時間を活用した柔軟な働き方ができるようになりました。また、自社で導入した画像処理システムによって検品を自動化したこともあり、小箱ピッキングの生産性は一人当たり約3倍に。またピッキングのミスはゼロになったそうです。
 
作業者の手元に品物が運ばれるGTP※4の定点ピッキングが可能になると、重い物を扱うのが難しい女性や高齢者、障がいのある方なども働きやすくなります。
「私たちが納入した製品の先には、それを使う現場の従業員のみなさんがいます。どうすれば、その方たちが働く環境をよりよくできるか。マテハン設備のメーカーである以上、そこは常に考えて貢献し続けなければならないと思っています」(山岸)

※4:Goods To Personの略。物流センターで人は動かず、商品を運んで、作業者が定位置でピッキングすること。
 

インフラ企業としての責任と海外展開への意欲

普段は意識しないかもしれませんが、ねじはさまざまな物に使われており、暮らしに密接に関わっています。奥山社長は、自社がインフラ企業に近づきつつあると感じているそうです。

「コロナ禍で1日休業したとき、翌日さばききれないほどの受注が溜まっており、我々が業務を止めることで世の中のいろいろな機能を止めてしまう可能性があることを実感しました。ねじの供給を止めないことが我々の大きなミッションだと思っています」(奥山社長)

海外へのねじの輸出もはじめており、すでに3年目を数えます。奥山社長は「日本のJIS規格のねじは海外からの需要も多いのです。今後はここ東大阪のねじを世界へも届けていきます」と意欲をみせます。

インフラ企業としての責任を果たし、海外展開を成功させるために、この先の物流技術として奥山社長が注目しているのは、画像処理技術です。今回の5号館でも検品処理に取り入れました。「ピッキングの作業スピードを上げることばかりを考えがちですが、スピードアップにはいずれ限界がきます。今後は工程を細分化して処理を並列化し、工程そのものをどう減らすかを考えていく必要があると考えています」と奥山社長。画像処理はその手段の一つになるとみています。

今回、トラブルなく国内最大級の「ロータリーラックH」の導入を完了させたオカムラの技術力にも信頼を寄せています。
「オカムラは歴史があり、技術力の高い会社です。今後さらに技術が磨かれていくと思いますし、磨いた技術を広く活用してくれることを期待しています」(奥山社長)
 
取材中、山岸につっこみを入れる奥山社長。そんな場面も信頼関係があってのこと
取材中、山岸につっこみを入れる奥山社長。そんな場面も信頼関係があってのこと

オカムラにも、長年培ってきた独自の技術で引き続きサンコーインダストリーの物流事業を支えていきたいという強い思いがあります。「ロータリーラック以外でも、まだ自動化・効率化できる工程はあると思います。オカムラの社内にはエンジニアリングや設計、ソフトウェア開発などを担当する多くの部門があります。営業として各部門に的確に情報を伝えて横連携を強めながら、多種多様な提案をしていきたいと思います」と山岸。その言葉を聞いた奥山社長も、「依頼したことをやってくれるだけより、やりたいことがあるといわれるほうがおもしろい。アイデアはたくさんあったほうが絶対いい。ぜひよろしくお願いします」と笑顔で返しました。
 
編集後記

昨今は、設備投資というと、働きやすさの向上という面からの生産性に目が向きがちですが、自社のビジネスモデルと照らし合わせて目的を見誤らないことが重要だと感じました。事業の成功と従業員の働きやすさ、どちらも重視しながら、きっちり別軸で考える奥山社長の姿勢にはブレがなく、働く人も前向きになれそうな職場だと思いました。
オカムラの営業・山岸との信頼関係も会話から感じました。取材後、物流センター内で多くの人から声がかかり、打ち合わせに立ち寄ってほしいといわれていた山岸。その様子からも、現場を熟知し、お客様の課題の正確な理解が、超高層「ロータリーラック」の最適な形での納入につながったことを実感しました。(編集部)
 


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