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コロナ禍で市場にない製品をつくる「ミスト除菌ブース」パッケージ開発

2022.04.19
「オカムラを知る!」シリーズでは、オカムラグループ各所最新の取り組みについてお伝えします。

2年に及ぶコロナ禍を経て、小売業を取り巻く環境には大きな変化が生まれています。そんな中で、顧客が頭を悩ませていた課題を誠実に受け取り、社内の知恵を結集し、検討を繰り返しながら、4ケ月という短期間でパッケージ開発を行い、全国約130店舗に納品をおこなった、株式会社イトーヨーカ堂様向け「買い物かごのミスト除菌ブース」開発プロジェクトをご紹介します。今回、Okamura Live : ) 編集部のインタビューに答えてくれたのは、商環境事業本部 首都圏営業本部 中央支店の坂根隆一と第一プランニングセンターの岩﨑史歩です。

 

顧客ニーズを持ち帰り、みんなでアイデアを出し合う


Okamura Live : ) 編集部(以下、編集部):それでは、イトーヨーカ堂様の営業担当の坂根さん、今回ご紹介いただく「ミスト除菌ブース」という製品について、教えてください。

商環境事業本部 首都圏営業本部 中央支店の坂根隆一(2007年入社)
商環境事業本部 首都圏営業本部 中央支店の坂根隆一(2007年入社)


坂根隆一(以下、坂根):はい。「ミスト除菌ブース」という製品は、スーパーマーケットの入口に置いてある、いわゆる“買い物かご”を除菌するものです。コロナ禍において、どのスーパーマーケットチェーンにおいても、感染を防ぐためのさまざまな取り組みをされていましたが、その中でも、不特定多数の方々が手にする“買い物かご”を一つひとつ除菌するという作業は業務負荷が高く、私が担当しているイトーヨーカ堂様においても大きな悩みとなっていました。

編集部:確かに、昨年の緊急事態宣言中は、スーパーの入口で店員の方が、買い物かごの取っ手を一つづつアルコールなどで拭いているシーンも見られましたね。

坂根:そうなんです。でも、そういった作業をしている店員さん自身への感染の恐れもあり、イトーヨーカ堂様でも毎日のように「コロナ対策会議*」を開いていらっしゃいました。そんな中で、オカムラにも何かアイデアはないか?というご相談をいただきました。
*イトーヨーカ堂様では、現在も社内組織横断で検討を続けている

 


編集部:今でも買い物かごの横にアルコールティッシュが置いてある“セルフ除菌”のスーパーが多い気がしますが、業界的にはすでに対応策が取られているのでしょうか?

坂根:実は2020年の後半頃から、GMS*各社が紫外線で除菌する製品の導入を検討し始めていたのですが、コスト面の課題と、また、手作業の除菌と比較するとまだまだ安心感が得られにくいことなどから、多店舗に展開をされているGMSやSM*にとっては一斉導入には踏み切れないような状況があったんです。

*GMS:General Merchandise Store(総合スーパー)
*SM:Super Market(食品スーパー)


編集部:なるほど。そんな中で、オカムラでは、何か提案できる製品などはあったのですか?

坂根:オカムラではもともとイトーヨーカ堂様の店舗に「脱臭除菌洗浄器オゾンメイト」という製品を導入していただいていました。この製品は店舗のバックヤードなどの作業スペースをオゾンの力で脱臭除菌するというものなのですが、実はちょうど、このオゾンメイトの販促を目的としたオカムラ社内プロジェクト、通称「オゾンメイト販促し隊」が発足していたんです。このプロジェクトに対し、私たちイトーヨーカ堂様の担当から「買い物かごの除菌」という顧客ニーズを投げかけたところ、営業やプロジェクトマネジメント、設計など組織を越えたメンバーでマネジャーから若手までが入り交じり、オンライン会議ツールのチャット上で活発な意見交換やアイデアが出てきました。

「オゾンメイト販促し隊」のオンライン会議ツールでのやり取りや情報共有。アイデアをすぐにカタチにするラピッドプロトタイピングも行ってきた
「オゾンメイト販促し隊」のオンライン会議ツールでのやり取りや情報共有。
アイデアをすぐにカタチにするラピッドプロトタイピングも行ってきた


坂根:さっそく、プロトタイプを製作して、効果検証なども試みたのですが、結果的にはオゾンメイトを用いた「買い物かごの除菌」は断念しました。

編集部:それはどうしてですか?

坂根:一番の理由は、「時間」でした。コロナ禍において、イトーヨーカ堂様は「今すぐにでも店舗に展開したい」という想いが強かったことから、オカムラとしても、一からの製品開発では難しいという判断をしました。そんな中で、社内の商環境購買部のメンバーから、買い物かごを入れたブースの中でミスト(水)を噴霧し、除菌を行う製品があるという情報提供があり、その専業メーカーさんとの協業で、イトーヨーカ堂様への提案を行うことにしました。実際に、プレゼンを行い、機能やコストについては一定の評価をしていただいたものの、全国の店舗に一斉導入をおこなう上ではいろいろとハードルがあることが明らかになってきました。


顧客ニーズに合わせた製品パッケージをつくる


編集部:では、ここからはプランニングを担当された岩﨑さんにお話しを聞きたいと思います。

岩﨑史歩(以後、岩﨑):はい。全国一斉導入を行うためには、製品のマニュアルはもちろんのこと、運用に関してもいろいろと配慮をしておく必要があるということが分かってきたんです。スーパーには子どもからお年寄りまでさまざまなお客様がいらっしゃいますので、例えば、除菌ブースのような見慣れないものが、ある日突然置かれた場合には、子どもが興味本位で中に入り込んでしまうことなどが想定されます。そこで、買い入れ品に手を加え、中に入りにくいカタチに仕様変更を行いました。
 

商環境事業本部 第一プランニングセンター 東京中央設計室 岩﨑史歩(2017年入社)
商環境事業本部 第一プランニングセンター 東京中央設計室 岩﨑史歩(2017年入社)


編集部:確かにお店ではいろいろなことが想定されますよね。「除菌」と聞くと、やはり消毒液だったりアルコールだったりをイメージするので、人体にはあまりよくないものかなと思ってしまいます。

岩﨑:噴霧する除菌ミスト(ディフェンドウォーター)自体は、誤って飲み込んだとしても人体に影響はないという安全なものなのですが、イトーヨーカ堂様は「お客様に信頼される、誠実な企業」であることを経営理念とされているので、安全性の高いものである、ということをしっかりとお客様に伝えることにこだわりを持たれていました。そこで、イトーヨーカ堂様からご意見をいただきながら、製品の上部に、目的やその安全性を説明するPOPを標準装備とすることなど、当社と共同でパッケージ化を行っていくプランをご提案しました。

買い入れ標準品(左)は、ビニールカーテン仕様であり、子どもの侵入や除菌ミストの漏れなど懸念があったが、改良を加えたイトーヨーカ堂様向けパッケージ製品(右)は、一目で機能がわかり、お客様の安心感が得られるよう配慮した
買い入れ標準品(左)は、ビニールカーテン仕様であり、子どもの侵入や除菌ミストの漏れなど懸念があったが、
改良を加えたイトーヨーカ堂様向けパッケージ製品(右)は、一目で機能がわかり、お客様の安心感が得られるよう配慮した


坂根:今回、採用の決め手となったのは、製品そのものの機能である、除菌効果や安全性、コスト等の課題をクリアしたことに加え、全国のイトーヨーカ堂様店舗への一斉導入に向けた、さまざまなハードルをスピード感をもって乗り越えたことで、オカムラのチームをパートナーとして認めていただけたことだと思っています。

編集部:どのくらいのスケジュール感だったのですか?

岩﨑:初回提案が2020年の12月で、買い入れ品の現物をイトーヨーカ堂様の本部に納品し、検討をスタートしたのが2021年の1月末でした。その後、効果についての検証や先行導入店舗での運用オペレーションチェック、従業員マニュアルやサインの制作などを2ケ月ほどで行い、4月から納品を開始、11月には全国130店舗への納品を完了しています。(イトーヨーカ堂ニュースリリース 2021年4月27日

編集部:いま世の中にないものをタイムリーに生み出すことで、顧客や社会のニーズにいち早く応えることができたという素晴らしい事例ですね!
 


組織を越えてアイデアが集まってくる仕掛け


編集部:ちなみに、商環境事業部所属のオカムラ社員と話をすると、特定の顧客を同じ担当者が長い期間担当するので、いわゆる“個人商店化”してしまいがちなんだという話をよく聞きますが、今回のように、多様なメンバーで盛んに意見交換を行うような文化はこれまでもあったのですか?

岩﨑:おっしゃる通りで、これまではどうしても担当者だけが知っている、担当者だけがわかるというような状況になりがちだったのですが、オンライン会議ツールの活用やオフィスの改装(フリーアドレス化)によって年々社内でのコミュニケーションが活発になってきていると実感しています。分からないことを誰かに聞くのではなく、情報が自然と入ってくるような状況をつくることができたことが今回のプロジェクト成功につながったのではないかと思います。

編集部:このような成功体験があると、今後もますます社内での連携が高まっていきそうですね!

坂根:はい。今回は比較的拠点の近いメンバー内での連携でしたが、今後は全国の支店の方々も巻き込んでの情報共有やアイデア出しも行っていければと思います。どこによいアイデアが眠っているか分かりませんから、当たり前と思っていることや必要ないと思っている事も、多方面から目線を変えてみることで、良いアウトプットを生み出すことにつながるのだと思います。

編集部:そうですね!今後もよい展開がありましたらぜひ紹介してください。今日はありがとうございました。
 



インタビュー後記
 

オカムラのように多事業展開をしている企業には、各領域の専門性を持ったプロフェッショナルがたくさんいます。そんなプロフェッショナルの知見を活かすためにも、組織を越えたコミュニケーションや情報共有の機会を増やしていくことが、有効だと感じました。今後も、オカムラ社内の力を結集した事例を紹介していきます。(編集部)
 


2022年1月取材
OKAMURA 新卒採用情報

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