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進化を遂げる冷凍冷蔵ショーケース挑戦の歴史と未来への広がり

2022.05.19

新たな経営理念「オカムラウェイ」の根底にあるのは、「創業の精神」「社是」「モットー」です。これらは「オカムラDNA」として、いまも私たちに受け継がれています。本企画では、さまざまな事業領域に広がるオカムラのタイムラインから、そんな「DNA」を感じられるストーリーを探ります。それは過去だけではありません。現在はもちろん、未来も視野に。
 

今回、取り上げるのは、商環境事業の「冷凍冷蔵ショーケース」。その歴史は60年代後半までさかのぼり、長きにわたって小売業の成長を支えてきました。目まぐるしく変化する流通業界にあわせて進化し、1998年には独自開発の「フォンターナ」を発表。以降、フォンターナシリーズはさまざまな改良を重ね、現在の「フォンターナ ネオ」は、店舗全体の省エネを実現するシステム「オスコムシリーズ」とも連動し、店舗管理のみならず環境にも貢献しています。今回は、冷凍冷蔵ショーケースの開発や販売の歴史を解き明かすとともに、継承されるオカムラDNAや商環境事業本部が取り組む「未来の店づくり」への想いを探ります。
 

オカムラDNAタイムライン ~商環境事業部 冷凍冷蔵ショーケース編~

店舗全体のエネルギー管理へ。DX時代の冷蔵冷凍ショーケースのあり方

冷凍・冷蔵ショーケースは、1969年に米国タイラー社と技術提携して以来、タイラーブランドのもとで生産してきました。しかし、競争は熾烈化。商環境の変化を踏まえ、デザインや機能面を革新するため独自開発をスタートしました。そして、1998年に誕生したのが、「フォンターナ」です。この名前には、「店舗にとってもオカムラにとっても、売上、利益の源泉(伊語で「Fontana」は泉の意味)となるショーケース」という願いが込められています。
 
右から商環境事業本部 マーケティング部 武井朗、冷熱機器部の細田正人、上田貴大
右から商環境事業本部 マーケティング部 武井朗、冷熱機器部の細田正人、上田貴大

現在、さらなる進化を遂げている「フォンターナシリーズ」。2020年6月には、消費電力抑制と省エネ性能を追求した「フォンターナ ネオ」を発売。陳列商品の鮮度を保ちながらケース内に発生する霜を取り除く「スマデフケース」や、庫内色の改善、LED照明の充実、省力化アタッチメントなど、いまの店舗に求められる機能を搭載しています。さらに、ショーケース本体にかかる冷凍負荷は従来品から15%削減しました。
 
最新モデル「フォンターナ ネオ」では省エネ性能を追求
最新モデル「フォンターナ ネオ」では省エネ性能を追求

開発の背景について、リテイル・ソリューション本部 冷熱機器部 システム開発課の上田貴大は、こう話します。「以前の冷凍冷蔵ショーケースを冷却するために必要な冷凍機は、機能的に100%運転させるか、止まっているかの運転しかできませんでした。その後、省エネの観点から無駄な電力の消費を抑えるため、インバーター冷凍機によって冷凍冷蔵ショーケースの冷却状態に応じた段階的な運転ができるようになりました。そしてさらなる省エネのため、効率的な冷却ができるよう開発を進めました。その結果生まれたのが、フォンターナ ネオです」

また、ショーケースと店舗内の各設備の連携による制御を可能にするショーケースナビゲーションシステム「オスコムシリーズ」を開発。このシステムにより、遠隔からショーケースの運転設定をコントロールできるようになりました。

 

「オスコムシリーズはショーケースと通信することで、省エネと冷却を行ないます」(上田)
「オスコムシリーズはショーケースと通信することで、省エネと冷却を行ないます」(上田)

「冷凍機の消費電力を制御できるようになったものの、温度管理が難しいという問題が浮き彫りになりました。適切な温度管理のためにシステムが必要だろうと開発したものが、現在、私が担当している『オスコムシリーズ』です。ショーケースの運転や庫内照明の管理だけでなく、電気、ガス、水道、空調など店舗全体の設備の一括管理もできるように機能を拡充させました」

オスコムシリーズで収集した温度データなどの情報をクラウドで管理する「オスコム クラウド」では、制御のみならず情報を蓄積することにより、さらなる省エネや運転効率向上の実現を後押しできるようになりました。「誰でも操作できるタッチパネルを見やすい画面サイズで採用したことで、施工業者の皆様からも高評価をいただいています」(上田)

「オスコムシリーズ」は、冷凍冷蔵ショーケースに新たなテクノロジーをもたらすだけではなく、さらに発展させて店舗のエネルギー管理の最適化にも目を向けた製品です。また、上田を含む開発担当者で全社のICT事例を共有する会議に参加し、他事業部の事例から、製品開発に展開できるようなヒントを見つけようと学びを深めているとのこと。こういった姿勢は、オカムラウェイの私たちの基本姿勢「SMILE」の「最良を追求し続けることで、社会が活きる」Expert、「思いやりを持ち創造することで、相手が活きる」Imagineにも通じる点です。

 


現在の店舗ナビゲーションシステムにつながる、商環境事業「革新の歴史」

冷凍冷蔵ショーケースという製品だけでなく、店舗の管理という視点から開発に取り組むという発想はどこから生まれたのか。それを理解するには、これまでの歴史を少し振り返る必要があります。

衣食住すべてをまかなえる大型店舗のGMS※1が、全国的に普及しはじめた1960年代。トータルで受注するには、商品陳列棚と冷凍冷蔵ショーケースも合わせて販売したいという意向がありました。ただ当時は冷凍冷蔵ショーケースの独自開発を行うには、技術などの問題がありました。そこで、1969年にタイラー社と技術提携を行います。その後、合弁企業・オカムラタイラー株式会社を設立して、冷凍冷蔵ショーケースの生産をスタートします。

※1:General Merchandise Storeの略。日用品を幅広く品揃えした大規模小売店・量販店のこと。
 

オカムラタイラー株式会社 富士工場(現 御殿場事業所)冷凍冷蔵ショーケースを製造
オカムラタイラー株式会社 富士工場(現 御殿場事業所)冷凍冷蔵ショーケースを製造

余談になりますが、1954年には創業者である創業者である吉原健二郎たちがアメリカとカナダを視察。陳列棚メーカーのバルマン社でパンチカードを利用してデータ処理を行う「パンチカードシステム」、いわばコンピュータの前身となるようなシステムを活用しながら業務を処理しているようすを目にしました。これをきっかけに1960年代と早い段階から生産・流通・販売などの各部門が全国的なネットワークで接続され、オカムラ全部門におけるコンピュータ活用へとつながっていきました。

こうした歴史からも明らかなように、オカムラにはかねて革新的な冷凍冷蔵ショーケースを手掛けることへの熱意と、コンピュータシステムを経営や各業務に最大限活かそうという企業風土があったというわけです。これは社是にある、世の中にないものを生み出す「創造」やスペシャリスト同士の「協力」にも通じています。

脈々と受け継がれている“革新のDNA”が礎となり、「フォンターナシリーズ」や「オスコムシリーズ」が誕生したのです。しかし、それまでの道のりは決して平坦なものではなく、厳しい低迷期を経験してのことでした。
 

低迷期からの脱出! フォンターナの誕生

「1990年代、冷熱機器部は低迷期を迎えていました」―― そう語るのは、リテイル・ソリューション本部 冷熱機器部 部長の細田正人。入社3年目に冷熱機器部に配属になるも、当時、冷凍冷蔵ショーケースの業界シェアは5%を切るほど落ち込んでいました。売上は伸び悩み、赤字続き。“販売中止”の4文字が現実のものになりそうなとき、起死回生の「新シリーズ開発の機会」を得ます。

「伸び悩んでいた原因は、他社との性能の違いでした。当時オカムラの冷凍冷蔵ショーケースはまだまだで、溶けてはいけないアイスクリームが溶けてしまうなんてことも。製品への信頼が足りない部分がありました。その理由のひとつには、アメリカで生まれた製品を日本にローカライズせず生産していたこともあると思います。日本には四季がありますし、アメリカとは環境が大きく異なります。この問題をクリアするためには、独自に開発する必要がありました」(細田)
 
「霜取りの水を流すボディーの傾斜から使われている素材まで、競合他社の製品を分析した」(細田)
「霜取りの水を流すボディーの傾斜から使われている素材まで、競合他社の製品を分析した」(細田)

そこで、開発プロジェクトメンバー数名でアメリカに赴きタイラー社を見学。製造から配送までのプロセスを学びました。さらに、競合他社の製品も徹底的に分析。国内大手2社の冷凍冷蔵ショーケースを3種類、計6台購入し、解体して部品や構造を研究しました。

「全部ばらして部品を数えてみると、他社のほうが点数も多く、構造やつくり方の工夫にも違いが見られました。タイラー社や競合から学べるところは積極的に取り入れ、独自の新シリーズを作り上げていきました」(細田)

また、それまで冷凍冷蔵ショーケースで重視されていなかったデザインも、何度も練り直すほど細部にこだわりました。「その当時、店舗向けの什器デザインは、冷凍冷蔵ショーケースに限らず全般的に角張っていて重厚感のあるものが多く見受けられました。ちなみに、タイラー社の冷凍冷蔵ショーケースは、『直線的ですっきりしている』という評価でした。そこで、店舗什器デザインの先進国であったヨーロッパに着目。最終的にイタリアを代表するデザイン会社『ジウジアーロ・デザイン(GIUGIARO DESIGN)社』に依頼しました」
 
ジウジアーロによる初代フォンターナのデザインスケッチ
ジウジアーロによる初代フォンターナのデザインスケッチ

「フォンターナは曲線(アール)基調で柔らかさを感じるデザインをコンセプトにすることで、競合他社と差別化。ジウジアーロによるデザインをもとに、工場メインで調整に苦労しましたが、最終的にお客様からも好意的に受け止めていただけるデザインに仕上げることができました。冷凍冷蔵ショーケースにデザイン要素を取り入れたことで、他社と差別化したのは日本では初のことではないでしょうか。その後、デザイン性を重要視する姿勢は他社にも展開されました」(細田)
 
初代「フォンターナ」。これまでの店舗向け什器にはない”やわらかなデザイン”が特徴
初代「フォンターナ」。これまでの店舗向け什器にはない”やわらかなデザイン”が特徴

使い勝手についても磨きをかけるため、取引先の店舗に足を運び、来店されるお客様がどのように冷凍冷蔵ショーケースを使っているかをリサーチ。また、管理する店舗側の使いやすさにも考慮するため、店舗で働く人の声にも耳を傾けました。

「たとえば、フォンターナシリーズには、清掃をしやすくする工夫が施されていますが、それも店舗の方から『ショーケースの中の商品を取り出さないと掃除しにくい』という困りごとを伺ったことが発端でした。お客様のもとに足繁く通ったのは、『フォンターナはお客様に認められないといけない』という想いが強かったからですね」(細田)
 
「フォンターナ ネオ」につけられた清掃用の小窓
「フォンターナ ネオ」につけられた清掃用の小窓

商環境事業本部だけでなく生産拠点など全社が関わったプロジェクトにより完成した「フォンターナ」。従来のショーケースのイメージとは一線を画すデザインと、ユーザーの立場に寄り添う機能や使い勝手を兼ね備えたことで、オカムラの冷凍冷蔵ショーケース製品を低迷期から救ったエポックな存在になりました。現在は省エネを追求しており、今後はアフターサービスのメンテナンスを含め、“売って終わり”ではない包括的なサービスのさらなる展開も予定しています。
 

この先の店舗システムに求められることとは?

ここまで、冷凍冷蔵ショーケースをめぐる過去から現在までの話をお届けしてきました。ここからは、次世代の店舗に求められることについて、商環境事業本部 マーケティング部 部長の武井朗にバトンタッチし、考察してもらいます。

「私たち、商環境事業本部のお客様は店舗を展開している企業ですから、BtoBビジネスを手掛けていることにはなりますが、店舗にはそこで働く人がいて、その先には買い物をする生活者がいます。たとえばコロナ禍をきっかけに、店舗で働く人はエッセンシャルワーカーとして働き方が注目されるようにもなりました。直接のお客様だけに留まらず、世の中の多くの人が幸せで豊かになるために、という意識を持つ必要があると考えています
 
「人流解析による店舗提案の増加やサブスクモデル検討、デジタル化の加速は急務」(武井)
「人流解析による店舗提案の増加やサブスクモデル検討、デジタル化の加速は急務」(武井)

では、具体的には何をめざすべきなのでしょうか。国内の実情に目を向けると、人口減少により、店舗は飽和状態になると言われます。だからこそ、新しい商材や市場に打って出ることが商機をつかむ切り札になると武井は言います。

「店舗における省エネという段階からさらに進んで、今はDXやデジタル化が加速しています。オスコムのような先進的な製品のニーズは高まるはずです。モノを売るだけではこれまでと変わりません。たとえばAIカメラで在庫をチェックする技術を検討したり、ロボットが店舗で陳列したりすることもできるかもしれません。ロボットの活用は、オカムラ社内で将来的に、たとえば物流システム事業との連携なども考えられます。新しい価値を創造するためにも、横串を刺して開発する体制が、社内で今後進んでいくといいですね」(武井)

現在、商環境事業本部では「お店づくりを通して豊かな”みらい”を創造する」ことをめざし、什器の提供に留まらず店舗づくり全体の提案をさらに進めるべく、サービスの幅を拡張していくことも検討。店舗で働く人、店舗に買い物する人など、すべての人を見据え、「人が活きる」豊かな暮らしを支援するため動き出しています。
 

オカムラDNAタイムライン 取材後記

「フォンターナ」の誕生により、冷凍冷蔵ショーケースの売上を立て直した歴史からわかるのは、かねてよりオカムラのミッション「豊かな発想と確かな品質で、人が活きる環境づくりを通して、社会に貢献する。」が息づいていたということ。それは、お客様と、その先にいるユーザーの幸せや豊かさを一人ひとりが大切に考え、開発に向き合ったからに他なりません。そして、これからの時代を担うであろうデジタルシステムにも、そのDNAは継承されています。新しい価値を創造するヒントはいつだって、現場と人々の暮らしの中にある―― オカムラの冷凍冷蔵ショーケースに携わってきたメンバーの声から、そんな気づきを得ることができました。(編集部)

2021年10月取材

OKAMURA 新卒採用情報
ヒト ハコ ミライ これからの店づくり、オカムラは考えます

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