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オカムラ×慶應義塾大学が目指す脱炭素社会に貢献するものづくりプロジェクト

2022.03.31
「オカムラを知る!」シリーズでは、オカムラグループ各所最新の取り組みについてお伝えします。

慶應義塾大学SFC研究所ソーシャル・ファブリケーション・ラボと共同で3Dプリンタで製作するバイオマスプラスチック素材のオフィス家具デザイン「Up-Ring(アップリング)」。チェアとテーブルは2021年11月に展示会  オカムラグランドフェアで展示されました。製品化に向け検討が進められる中、製品開発担当の道地玲香とプロジェクトに関わる庵原悠の二人に、「Up-Ring」の特徴やプロジェクトについて語ってもらいました。
ワークプレイス製品部 道地玲香(2019年入社)
ワークプレイス製品部 道地玲香(2019年入社)
こんにちは、マーケティング本部 ワークプレイス製品部の道地です。ミーティングチェアやアメニティチェアの製品企画・開発業務を担当しています。
今日は「Up-Ring」の特徴や開発までのエピソードなどをお伝えします。
今回の「Up-Ring」プロジェクトは、もともとオカムラと長く関わりがあった慶應義塾大学とのコラボレーションから始まりました。慶應義塾大学SFC研究所ソーシャル・ファブリケーション・ラボでは、3Dプリンティング技術を用いてさまざまな課題解決を行っています。このプロジェクトでは、バイオマスポリエチレンを原料とした3Dプリンタ製の家具を実現し、脱炭素社会への貢献をめざしています

特徴は2点「主原料バイオマスポリエチレン」「3Dプリンタ生産」


「Up-Ring」の特徴は、大きく2点あります。1つめはバイオマスポリエチレンを主原料としていること、2つめは3Dプリンタで生産していることです。

バイオマスポリエチレンを主原料とする利点として、バイオマスポリエチレンはサトウキビからつくられており、サトウキビ生育の過程でCO2を吸収します。そのため、廃棄物として焼却される際のCO2排出量をゼロ(カーボンニュートラル)とみなすことができます。製造や輸送過程でのCO2排出量を含めても従来の石油由来ポリエチレンに比べ排出量を大幅に削減することができるので、石油依存からの脱却と地球温暖化防止につながります。こういった利点をふまえ、供給量が少なくコストが高いことから敬遠されていたバイオマスプラスチックですが、今回活用にチャレンジしました。

 
3Dプリンタ生産の利点は、金型が不要なため投資費用を削減できる、機器1台から異なる形状を生産可能、1点から生産ができる、製造時にむだな材料を消費しない、製造時の騒音が小さい、製造時の消費電力が少ない、など多くあげられます。
このプロジェクトではまだ実現できていないのですが…… 3Dプリンタによる生産メリットは他にもあります! データを作成すれば簡単にサイズのカスタマイズが可能になったり、粒状ペレットで樹脂を着色しているため、カラーカスタマイズやグラデーションが可能になったり。将来3Dプリンタが普及しさまざまな場所でプリントできるようになれば、納品先の近くで製造し輸送経路を短縮したり、データでの販売も可能になるでしょう。このようにメリットが多い3Dプリンタですが、従来はおもにプロトタイプ(試作品)の製造にとどまっていました。今回一番注力したことは、3Dプリンタを活用し量産化することです。
慶應義塾大学 益山 詠夢先生と色味を確認中
慶應義塾大学 益山 詠夢先生と色味を確認中

プロジェクトを通じ、製品開発の可能性も広がる


私がプロジェクトに参加した段階で、慶應義塾大学の方でデザインや造形、材料研究はすでに行われ、大きな3Dプリンタを用いてイスの形を造形するところまで来ていました。しかしプロトタイプ品では強度の担保ができなかったり、表面のテクスチャがざらついていたり、お客さまに使っていただくものとしては課題が山積みでした。3Dプリンタを使った量産化が進まない大きな要因として、このような強度不足があげられます

お客様が購入し安全・安心に使っていただくため、試験をしては形状や原料配合の見直しをくり返しました。バイオマスプラスチック材を初めて採用したことに加え、3Dプリンタの知見が少ないため課題はたくさんありました。そこで慶應義塾大学の材料研究者 湯浅亮平先生と追浜事業所 オフィス技術部 杉本雅人さんに、数十種類もの異なる材料配合を持つ小さい試験片を使ってテストを行っていただき、強度が担保できそうな材料配合を決めました。その後も適切な形状や品揃えを検討し、なんとか展示会に間に合わせ、発表することができました!
 
プロジェクトに携わり、材料や環境面をはじめ本当にたくさんのことを勉強させていただいています。また従来の金型製法以外の製品を実現し発表したことで、今後の製品開発の可能性も大きく広がっていくと思います。Up-Ringプロジェクトを皮切りに、今後3Dプリンタでの生産方法や環境素材をほかの製品にも展開し、他事業部ともアイデアを共有できればと思います
この場を借りて、関係者の方々に深く御礼申し上げます。発売開始に向けてもう少しお付き合いください!
2021年11月発表、2022年発売予定です
2021年11月発表、2022年発売予定です

ワークデザインストラテジー部 庵原悠(2008年入社)
ワークデザインストラテジー部 庵原悠(2008年入社)
働き方コンサルティング事業部 ワークデザインストラテジー部の庵原です。イノベーションセンターや共創空間などのイノベーションに向けた新しい働く場づくりの提案や、その調査研究も行っています。
道地に続いて私からは、プロジェクトをともに進める慶應義塾大学SFC研究所ソーシャル・ファブリケーション・ラボについて、今回のコラボレーションに至る経緯などをお伝えします!

慶應義塾大学SFC研究所ソーシャル・ファブリケーション・ラボとオカムラ


慶應義塾大学SFC研究所ソーシャル・ファブリケーション・ラボとオカムラの関係は2013年までさかのぼります。当時私はマーケティング本部のオフィス研究所に所属しており、「ものづくりのデジタル化」によって製品製造の世界だけでなく、一般社会、それこそ働き方にも影響が出てくると考えていた慶應大・田中浩也先生の研究テーマに共感し、自ら企画を立てて共同研究を開始させてもらいました。彼らが「ファブラボ」と呼ぶものづくり工房型の共創空間は、まさにイノベーションセンターや共創空間そのものの最先端事例だったのです。

 

慶応大の研究プロジェクトは、「センター・オブ・イノベーションプログラム」という、10年後のめざすべき社会像を見すえた壮大でチャレンジングな研究テーマに対し9年間支援を行う文科省の助成プログラムに採択され、多額の研究費を得て進めてきました。オカムラはそのプロジェクト創設時から関わり、共同研究のなかではUp-Ringプロジェクトにつながる製品開発のイノベーションだけでなく、画期的な資源循環型ものづくりの可能性やものづくりのサービス化の可能性、オフィスのような空間づくりのプロセスが変わる可能性、さらにはどんな新しい仕事ができるか、新しい働き方が起きえてくるかといった未来像の話まで、広くリサーチをしてきました。それらの研究成果はさまざまな物件提案、WORK MILLでの取材や共創空間立ち上げ協力などの企画につながっていきました。
 

今後も挑戦的なプロジェクトが続いてほしい


トライ&エラーを繰り返しながら、3Dプリンティング技術も徐々に進化し、やっと製造技術としてめどが立ち始めたことでUp-Ringプロジェクトの構想を本格化できたのは、ほんの3年前の話でした。世間でもSDGsが盛り上がり始め、環境省も脱炭素に向けた開発事業への助成をスタートさせ、それにも採択いただくことができたため、さまざまなタイミングが重なりプロジェクトにドライブがかかる形となりました。

Up-Ringの初期段階では着地点をどう見定めるかが重要でしたが、マーケティング本部のレジェンドで元オフィス製品部長でもある、きづくりラボ 佐藤政満さんの協力(知識と経験の提供)がなければ、ここまでたどり着くことはできなかったと思います。
こういった挑戦的なプロジェクトは中長期的な目線を大事にして、根気強く行っていく必要があります。とはいえ、壮大なビジョンのもとに行われるプロジェクトでは、さまざまな知見やノウハウだけでなく、たくさんの人とのつながりや共創の経験を得ることができます

今後もこういった挑戦がオカムラ社内で多く実施されるべく、マネジャーの方々にあと押しをしていただけたら、そしてプレイヤーの方々には強い思いを持って取り組む意思を持っていただけたらと思います!

レジェンド佐藤政満さん(右から2人目)には経験に基づく知識を授けていただきました
レジェンド佐藤政満さん(右から2人目)には経験に基づく知識を授けていただきました

2人の話から、製品開発の新しい試みをチャレンジングなプロジェクトで長く続けてきて、実際にかたちになったことがわかります。プロジェクトメンバーだけでなく生産拠点の協力や先輩たちのアドバイスも欠かせなかったとのこと、多くの方が関わって実現した「Up-Ring」。発売開始、お客様の反応も楽しみです!(編集部)


2022年2月取材
Make with 先進技術と豊かな発想力を軸としたオカムラのものづくり
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