子育て世代が活きる「育児休職のリアル」 Vol.5
9月19日「#育休を考える日」スペシャルインタビュー
今回は、100日を超える長期の育児休職を取得した3人に話を聞きました。仕事内容やお客様との関わり方、プロジェクトの進め方もそれぞれ違うなかで、どのように長期の育児休職を実現し、職場はそれをどう支えたのでしょうか。取得に向けた準備や引き継ぎ、復職後の働き方を振り返ると、3人それぞれの環境の違いとともに、共通する気づきも見えてきました。さらに印象的だったのは、育児休職の経験が、家族との時間にとどまらず、仕事の進め方や周囲との関わり方にも前向きな変化をもたらしていたこと。3人の言葉から、長期の育児休職がもたらした「その後」まで掘り下げます。なお、長期の育休取得や育休後の復職のためには、組織として準備するための早期申告が重要です。オカムラでは、育休取得促進のためにも早期申告を推進しています。
「取るなら、しっかり長く」
3人が100日超の育児休職を選んだ理由
―― まずは、皆さんの仕事内容と、育児休職を取得した時期や期間について教えてください。あわせて、なぜ長期で取得しようと考えたのかも教えていただけますか。今回、第1子の誕生に合わせて、2025年9月から2026年3月まで、184日間の育児休職を取得しました。当初は3カ月くらいと考えていたのですが、妻と話し合う中で、子どもの成長が著しい時期をできる限り家族で一緒に過ごしたいと考えるようになりました。また、6か月間取得することで、離乳食が始まる時期を含め、育児の大変さや喜びなど一連の流れを経験できるのではないかと思い、育児休職期間を半年間としました 。
第2子の誕生に伴い、2025年8月から2026年3月まで184日間の育児休職を取得しました。第1子が生まれたのは2020年で、当時はコロナ禍でもあり、3日間の配偶者出産休暇は取得したものの、まとまった育児休職は取りませんでした。その時に「しっかり取っておけばよかった」という思いが残っていたので、次に機会があれば取得したいと以前から考えていました。
営業職なので、お客様との接点も多く、長く抜ける難しさはもちろん感じていました。ただ、きちんと引き継ぎをしても1、2カ月の取得では、引き継ぎを受けた側の労力も大きいですし自分自身も十分に子どもと向き合えない。せっかく取得するのであれば、しっかり半年間取ろうと考えました。
私も山田さんと同じく、第2子の誕生を機に、2025年4月から8月まで116日間の育児休職を取得しました。第1子の時は、長く担当していたプロジェクトがちょうど重要な時期だったこともあり、まとまった育児休職は取りませんでした。ただ、「あの時に取っておけばよかった」という思いがあったので、第2子の時は必ず取ろうと決めていました。
期間については、3カ月くらいが一つの目安というイメージがあったのですが、せっかくなら少し長めに取りたいと思っていました。妻からも、2人の子どもを同時に見ることを考えると3カ月以上は取ってほしいと言われていたので、約4カ月間を選びました。
―― 山田さんと森田さんは、第1子の時には長期の育児休職を取得しておらず、第2子では「今度は取ろう」と考えた点も共通していますね。ここ数年で、周囲に育児休職を取得する男性従業員が増えたことも影響しましたか?
山田:それはあったと思います。私自身、若手営業のメンバーが働き方について考え、事業本部長と話すプロジェクトのリーダーをやっていました。そのなかでも「育児休職を取れる環境にしたい」と提言していました。自分がそういうことを言っていた立場でもありますし、周囲で実際に取得する人も増えてきた。次の世代のためにも、自分もしっかり取得したいという思いがありました。
森田:第1子の頃と比べると、社内でも取得する人が増えて、育児休職がかなり身近になったと感じます。第1子の時は仕事の状況もありましたし、今ほど取得が浸透している時期ではなかったので、その違いは大きいですね。
淺田:私の場合、周囲に育児休職を取得した人がいるかどうかは、あまり気にしませんでした。制度として利用できるのであれば、自分の人生や家族との時間を考えたときに必要な機会だと思い、取得を決めました。
首都圏営業本部 赤坂支店
支店長 宮沢 智之
上司が語る長期育休への対応①
育休を「個人の事情」にしない
チーム全体で支える体制づくり
まず大切にしたのは、本人が気兼ねなく育児休職に入れる環境をつくることです。そのうえで、残るメンバーに負担が集中しないよう、新入社員の配置も含めて早い段階から体制を検討しました。お客様との関係が担当者個人に紐づきやすく、長期で進むプロジェクトも多いため、引き継ぎでは顧客ごとの特性に合わせて担当を分け、支店長や課長も同席するなど、個人ではなくチームで支える姿勢を示しました。結果として、若手がリーダーとして成長する機会にもつながりました。育児休職を組織全体の予定として捉え、取得する人にも残る人にもプラスになる体制を整えていきたいと考えています。
属人化、顧客対応、長期プロジェクト……
引き継ぎに表れた3部門の違い
―― 100日を超えて仕事を離れるとなると、やはり大きな課題になるのが引き継ぎだと思います。育児休職に入るまでに、上長や周囲とどのように調整し、仕事を引き継いでいったのでしょうか。淺田:私の仕事は製品ごとに担当者が決まっているので、どうしても属人化しやすく、ほかのメンバーが担当製品について詳しく知らないこともあります。そこで、自分の仕事をどうすればほかの人にも分かるように引き継げるか、というところが一番大変でした。
出産時期がわかってから少しずつ準備を始めて、結果的には半年くらいかけて引き継ぎ資料を作りました。部門内では長期の育児休職を取る人がそれほど多くなく、参考になる資料もなかったので、引き継ぐメンバーの負担を少しでも軽減できるよう、不在期間中の業務の進め方や判断の参考となる引継ぎ資料を作成しました。上長や周囲のメンバーから温かいサポートの言葉をいただき、安心して育児休職に入ることができました。
山田:私の場合は営業なので、お客様との関係をどう引き継ぐかが大きなポイントでした。まず自分が担当しているお客様と進行中の物件を洗い出して、上長と相談しながら誰に何を引き継ぐのかを決めました。早めに引き継げる業務は後任者にも打ち合わせへ同行してもらい、お客様と一緒に過ごす時間をつくりました。物件や顧客の情報、進行中の資料も共有フォルダにまとめ、不在中でも確認できるようにしました。
一方で、もともと営業メンバーそれぞれが多くの仕事を抱えているので、自分が抜けた分を上長や周囲のメンバーに支えてもらうことになります。皆さんが快く受けてくださったからこそ、負担をかけてしまうことへの申し訳なさはありましたね。
私が育児休職に入る時にも、工事中だったり佳境を迎えていたりするプロジェクトがあったので、そうしたものは後任のメンバーに1カ月ほど併走してもらいました。ただ、お客様の数も多く、すべてを完全に引き継ぐのは難しいので、万が一私に直接連絡が来た場合にはどうフォローするか、事前に段取りも決めていました。
―― 部門によって、引き継ぎ方もかなり違いますね。特に山田さんと森田さんは、お客様にも長期間不在になることを伝える必要があったと思います。反応はいかがでしたか。
山田:すごく好意的に受け止めていただけました。「育児休職を取ります」とお伝えすると、「いいですね」と言っていただいて、さらに「半年間です」と話すと、「そんなに取れるんですね。いい会社ですね」と。男性が半年間取得することは、世の中ではまだ珍しいのだと改めて感じました。
私たちは働く場や働き方をお客様に提案する仕事をしています。そういう会社で実際に長期の育児休職を取っている人がいることを、お客様にも前向きに受け止めていただけたのはありがたかったですね。
森田:私も最初にお伝えする時は、「どう切り出そうかな」と少し緊張しました。でも、思っていた以上に自然に受け入れていただきました。「ちゃんと引き継いでね」とは言われましたが、後任の先輩にもフォローしてもらって、スムーズに進めることができました。
お客様の中には、私とほぼ同じタイミングで育児休職を取る同世代の方もいたようで、先方の上司の方が私の上司に「時代ですね」とおっしゃったことも印象に残っています。
リテール事業部 ストア製品開発部
部長 東浦 俊光
上司が語る長期育休への対応②
安心して育児に専念できるように
チーム全体で前向きに支える
本人が周囲に遠慮せず育児休職を取得でき、復職後もキャリアへの不安を感じないことを大切にしました。そのため、育児休職の意義をチームで共有し、業務を一人に集中させるのではなく、できるだけチーム全体で分担できるようにしています。中長期で計画していた企画開発業務は一度リスケジュールし、複数のメンバーでフォローしやすい販売促進業務を中心に引き継ぎました。育児休職を特別なことと捉えるのではなく、職場全体で前向きに応援できる雰囲気づくりを、これからも大切にしていきたいと考えています。
かけがえのない時間の価値と、育児休職が広げた視点
―― 少し視点を変えて、育児休職中のことを振り返っていただきたいと思います。半年、あるいは4カ月というまとまった時間があったからこそ、経験できたことや、取得してよかったと感じたことはありますか。淺田:私は、以前より社会に目が向くようになりましたね。例えば、子どもと一緒に電車で出かけてベビーカーで移動すると、「エレベーターってこんなに待つんだ」とか、「この駅は移動しにくいな」とか、今まで気づかなかったことがたくさんありました。電車でも、ベビーカーを押している方がいたら場所を譲ろうと思うようになりましたし、子育てをしている人が普段どんなことに困っているのかを、自分のこととして想像できるようになったと思います。
もちろん、子どもの成長をそばで見られたことも大きかったです。離乳食づくりなども実際に経験してみて、育児の大変さがあることもわかりました。こうしたことに実感を持って共感できるようになったのは、自分にとって大きな変化ですね。
山田:私も「大変さを理解できた」のは、すごく大きかったです。第1子の時も育児の大変さはわかっているつもりでしたが、夜泣きへの対応なども含めて、実際に自分が日常的に関わって初めてわかることが多かったです。「わかっているつもり」と、実際に経験することはやっぱり違いますね。
一方で、半年間は本当に楽しかったです。「人生で一番楽しかった」と思えるくらいでした。第2子なので、赤ちゃんだけではなく上の子ともじっくり過ごせたことが大きかったですね。私か妻のどちらかが下の子に手がかかっている時にも、もう一人が上の子と向き合える。家族みんなで赤ちゃんの成長を見守る時間を半年間持てたことで、上の子も下の子をすごくかわいがるようになりました。二人目だったからこそ、この半年間をより価値のある時間にできたのかなと思います。
森田:僕も二人目だったので、山田さんと近いですね。第1子の時は妻から育児の大変さを聞いてはいましたが、今回は自分も日常的に育児をすることで、その大変さを実感しました。夜中の対応を自分が担当して、朝になったら妻と交代するようにしていたので、お互いに睡眠時間を確保しながら生活することもできました。
それから、上の子と過ごす時間が圧倒的に増えたのも印象に残っています。仕事をしている時とは一緒にいられる時間が全然違うので、上の子との距離が近くなったというか、仲良くなれたことがすごくうれしかったですね。
営業部 東京第二支店
課長 斉藤 正昭
上司が語る長期育休への対応③
長期プロジェクトを止めないため
係を越えて支える体制を
スマートロジテック事業では、受注後も設計、ソフトウェア、制御、工事、保守など多くの部門と連携しながら、長期間にわたってプロジェクトを進めます。そのため育児休職にあたっては、顧客や製品、残件事項などを引き継ぎシートに整理し、支店全員が確認できるよう共有しました。
進行中のプロジェクトについては、担当する係の中だけで完結させず、難易度や特性に応じて係を越えて分担。関係部門ともチャットなどで情報を共有し、引き継いだメンバーの業務が滞らないよう意識しました。本人が不在でもプロジェクトを止めないためには、日頃から組織を横断して情報を共有し、支え合える体制をつくっておくことが大切だと感じています。
スムーズ、繁忙期、初日の顧客訪問……
三者三様のカムバック
―― 長期の育児休職を終えて、仕事にはどのように戻っていったのでしょうか。復職に向けた準備や、戻った直後の様子を教えてください。淺田:復職の1カ月ほど前に上司と面談しましたが、戻る時は特別なことはなく、「おかえり」と迎えてもらって、そのまま日常に戻ったような感覚でした。業務面でも大きな苦労はなく、2日目くらいから通常の仕事に戻れました。
仕事の進め方が大きく変わったわけではありませんが、一度仕事から離れたことで気持ちがリセットされた感覚はあります。復職後は、自己研鑽の時間を以前より意識してつくるようになりました。今後も保育園への送り迎えなどに、フレックス勤務も活用していきたいと思っています。
山田:私は事業部門の繁忙期である3月に復職したので、最初からかなり忙しかったですね。育児休職や介護休職を取得する予定のメンバーがいたため、以前担当していたお客様をそのまま戻してもらうのではなく、チーム内で担当を再編する形になりました。
半年の間に新製品も発表され、ショールームも大きく変わっていたので、まさに「浦島太郎状態」でした(笑)。新しい情報をキャッチアップしながら引き継ぎも受けて、復職直後からフルスロットルという感じでしたね。今は、早く帰れる日は早く帰るなどメリハリを意識し、サテライト拠点も活用して移動時間を減らすようにしています。
森田:私も復職初日からすぐ通常モードでした。出社すると「今日の午後、同行できる?」と言われて、その日のうちに育児休職前に担当していたお客様の定例会へ行きました(笑)。
育児休職中は、最初の頃に一部のお客様から直接連絡が来ることはありましたが、社内からの連絡はほとんどありませんでした。忙しい中でも職場の皆さんができるだけ自分たちで業務を回してくれていたので、復職して改めてありがたさを感じました。今は、早く帰れる日はできるだけ帰り、家庭で過ごす時間も意識するようにしています。
取得者だけの問題にしない ——支えるチームと次の仕組み
―― 皆さんが長期の育児休職を取得したことで、職場や周囲にも何か変化はありましたか。また、今後さらに育児休職を取得しやすくするために、制度以外で必要だと思うことがあれば教えてください。淺田:自分が半年間取得したことで、後輩やこれから取得を考える人にとって、「長く取っても大丈夫なんだ」と思える一つの例にはなれたのかなと思います。
一方で、今回一番感じたのは、やはり仕事の属人化ですね。私は引き継ぎ資料をつくるのにかなり時間がかかったので、普段から共有フォルダなどに最新の情報をまとめて、誰が見ても状況が分かるようにしておくことが大切だと気づきました。これは育児休職に限らず、誰かが急に仕事を離れることになった時にも役立つと思います。
自分自身も周囲に助けてもらったので、今度は育児休職に入る人や、仕事で困っている人をサポートする側に回りたいという気持ちが強くなりました。できるのであれば、一つの仕事を複数人で把握しておくような体制も考えていけるといいですね。
山田:私のチームでも、「取れるなら自分も半年くらい取りたい」という声が出るようになりました。半年という期間が、以前ほど高いハードルではなくなってきたのかなと感じています。
ただ、取得する側としては、残るメンバーに負担をかけてしまうという思いもありました。実際、誰かが抜ければ、その仕事をほかの人が担う必要があります。だからこそ、取得する人だけではなく、支える側へのフォローも大切だと思います。業務を引き受けたことが何らかの形で認められたり、組織としてきちんと支えたりする仕組みがあれば、お互いに応援しあえるだけでなく、取得する側も罪悪感が薄まりますし、業務を引き継ぐ側も気持ちよく引き受けられるようになるのではないでしょうか。
また、育児を経験して、分からないことに取り組む不安や、自身で調べて考えてもすぐに解決策が見つからない気持ちを改めて感じました。業務に重ねてみると、新入社員や若手は同じような気持ちになっているんだなと。育児をきっかけに、彼らに近い距離感でそれを感じることができるようになった気がします。
森田:私も、会社として育児休職を取得しやすい雰囲気はかなり整ってきていると思います。一方、実際の業務では、まだ「この人が休んだら、どうやって回そう」とその都度考えているところもあります。継続的に取得できる環境にしていくには、よりスムーズに簡易的に休暇取得できる環境や仕組みを構築していく必要があると思います。
例えば、支店のような小さな単位だけで一人分の仕事を支えようとすると、どうしても負担が大きくなります。営業部や事業本部など、もう少し広い範囲でフォローできれば、一人が抜ける影響を分散できるかもしれません。育児休職を取る人だけでなく、残るメンバーへのサポートも含めて考えていくことが、次の取得者の後押しにつながると思います。
育児休職の取得の推進は、オカムラの「働きがい改革 WiL-BE(ウィル・ビー) 2.0」における取り組みのひとつです。「WiL-BE2.0」は「Inner Communication(社内活性)」「Human Development(人財育成)」「Work Rule(制度)」「Work Smart(デジタル技術)」「Work Place(環境)」の5つのアクションをベースに、従業員の働きがい向上に向けたさまざまな取り組みを推進しています。なお、2026年度からは新たな取り組みとして「Factory Pride」も加わりました。育児休職の取得推進は、このうち「Work Rule(制度)」のアクションに位置付けられています。
また、家族と向き合った時間は、周囲への理解や仕事の進め方、後輩との関わり方など、復職後の仕事にもさまざまな形でつながっています。育児休職を一人の経験で終わらせず、そこで得た気づきを職場に還元していくことが、次に取得する人を支え、誰もがより自分らしく働ける環境につながっていくのではないでしょうか。(編集部)