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人や空間をつなぐ新しいオフィス家具「YAA」ができるまで

2026.05.21
企業パーパスに「人が活きる社会の実現」を掲げるオカムラ。この「オカムラを知る!」では、オカムラグループのさまざまな取り組みを紹介していきます。

今回は、オカムラのブレンディングファニチュア「YAA(ヤア)」の開発ストーリーをお届けします。ブレンディングファニチュアはオカムラ製品の新しいカテゴリです。オフィスの新しい可能性を引き出すこの製品は、どのようにして生まれたのでしょうか。企画と開発、そして社内外のデザイナーたちによる共創の裏側を、プロジェクトに参加した2人に聞きました。
2026年3月取材
 

「仕切る」から「つなぐ」へ
発想の転換から生まれた新製品

──まずは簡単な自己紹介と、「YAA」プロジェクトへの関わり方を教えてください。
プロダクト企画開発部 グローバル開発室 鈴木 孝寛
プロダクト企画開発部 グローバル開発室 鈴木 孝寛
鈴木 孝寛(以下、鈴木):入社して商環境事業の担当として富士事業所でゴンドラ(商品を陳列するシステム什器)の設計をしていました。その後タイの工場に6年半勤務。製造現場で働くうちに、製品の入り口にあたる企画から携わってみたいと思うようになり、帰国後は自ら希望してオフィス製品の企画開発部門に異動したんです。YAAプロジェクトでは開発を担当しました。現在はアジア向けオフィス製品の企画開発を担当しています。
プロダクト企画開発部 第一開発室 室長 齊藤 健太
プロダクト企画開発部 第一開発室 室長 齊藤 健太
齊藤 健太(以下、齊藤):私は営業職で入社し、支店に約7年勤務したのち、開発部門でデスクなどの企画に10年以上携わりました。今は主にイスの企画開発をしています。YAAでは企画を担当しました。少し補足すると、YAAのプロジェクトは私たち2人だけで進めたわけではありません。社内の製品デザイナーやスペースデザイナー、外部アドバイザーなど多くのメンバーによる共創があって成り立っています。
──さまざまな人が関わっているのですね。YAAはどのような背景から生まれたのでしょうか。

鈴木:ローパーティションの新しい提案を考えようという話があり、私が手を挙げました。もともとオープンオフィスは、オープンだからこそ逆にコミュニケーションがとりにくいこともあると感じていたんです。ちょっとした話をするのに毎回会議室を確保するのも手間ですし、わざわざ場所を移動するよりも普段仕事をしている場所で自然に会話が生まれるといいなと。

齊藤:今のオフィスって、空間的にフルオープンか個室ブースなどのフルクローズか、0か100になりがちですよね。そのどちらでもない、中間のグラデーションのような仕切りはなんだろうと考えていきました。造作でカフェエリアと執務エリアの間にプランターボックスを置いたり、曲線の仕切りを入れたりするような空間づくりは以前からありましたが、それを製品で実現できないかと考えたんです。
 

YAA ギャラリー

 

新カテゴリ「ブレンディングファニチュア」誕生

──そうやって生まれたのがYAAだったのですね。改めて製品のコンセプトを教えてください。

齊藤:YAAのコンセプトは「まざりつながる」です。これまでパーティションは仕切ったり、目隠しとして遮ったりするためのものでしたが発想を変え、「コミュニケーションを活性化させるために、程よい距離感をつくる」というまったく新しい使い方を提案することにしました。

──「ブレンディングファニチュア」という新しいカテゴリを設けたそうですね。

齊藤:これまでのローパーティションとは目的も使い方も違う別物なので、ローパーティションと呼ばれたくなくて。パーティションを数える単位はスパンなのですが、「1スパン・2スパンではなく、1YAA・2YAAで数えてはどうか」なんて冗談がでるくらい、意識的に切り離しました。
 
空間や人を自然につなげる「ブレンディングファニチュア」
空間や人を自然につなげる「ブレンディングファニチュア」
鈴木:ブレンディングファニチュアは、空間や人を「ブレンドする家具」という意味です。たとえば執務エリアとミーティングエリアの間にYAAを置くと、完全に仕切られるのではなく、異なるエリアが自然につながって空間がブレンドされます。また、低いパネルや透けているパネルは人の気配も感じられるので、コミュニケーションもとりやすく、人もブレンドされると考えています。
「近くにいる人同士や通りがかった人との何気ない会話も生まれやすくなる」(鈴木)
「近くにいる人同士や通りがかった人との何気ない会話も生まれやすくなる」(鈴木)
齊藤:人のブレンドは、2025年11月に開催したお客様向けの展示会「Okamura Grand Fair 2026」で掲げた「Wedentity(ウィデンティティ)」というコンセプトにも通じるものです。一人ひとりが「I」として自立して働きながら、部署や役職もゆるやかに超え、まざりつながって「We」として協働する。コーヒーのブレンドやブレンデッドウイスキーのように、異なる味をまぜて新しい一つの味を生み出すイメージですね。

──「YAA(ヤア)」という響きも楽しいですね。ネーミングの由来を教えてください。

齊藤:会話のきっかけになる「やあ」からきています。オフィスが「やあ」で溢れたらいいな、という想いもあって決まりました。これまでのオカムラ製品のネーミングは、コンセプトを外国語にしたり、造語をつくったりするケースが多く、いい意味でオカムラっぽくないところも今回の製品のあり方に合っていると思います。
 

やわらかな曲線と高さの変化に込めた想い

──YAAはやわらかな曲線と高さの変化がユニークです。こうしたデザインが空間や人の行動にどんな影響を与えるのでしょうか。

齊藤:直線より曲線のほうが人の流れをコントロールしたり、人をブレンドする流れをつくったりしやすいと思います。高さの変化も大事な要素で、最近のオフィスは柱が少なく空間が広いので、起伏がないと落ち着かないという話を聞きます。YAAは抜け感を保ちつつ高さでリズムをつくれるので、最近のオフィスにマッチするという声をもらいました。
また、YAAは実際に空間に置いてレイアウトされた状態を見てこそ、使い方や魅力が伝わる製品だと思うので、スペースデザイナーが思わず提案したくなる、図面を描くのが楽しいと思ってもらえるような“平面映え”が大事だと考えました。一般的に家具はレイアウトを決めたあとに選ばれることが多いのですが、むしろYAAを起点にレイアウトを考えてもらえたら嬉しいですね。

鈴木:スペースデザイナーにとって提案の難易度は上がると思いますが、うまくレイアウトがはまったときは気持ちがいいと思います。R形状のやわらかな曲線は今のオフィスのトレンドにも合っていますね。
 
会議や個人の作業の場をやわらかな曲線で自然に仕切る
会議や個人の作業の場をやわらかな曲線で自然に仕切る

──実際に拝見しましたが、仕切りながらも抜け感があって、バランスが絶妙ですね。パネルのバリエーションも豊富です。

鈴木:このあたりは、製品デザイナーを中心に時間をかけて検討した部分です。オフィスの真ん中に仕切るものを置くと、どうしても圧迫感が出てしまいますよね。そうならないよう、高さを調整できるようにしたり、抜け感のあるパネルを揃えたりと工夫しました。オカムラ社内に設置しているYAAのパネルは、最も低いものが特注の670mmです。もはや何も隠せない高さですが(笑)、実際に座ってみるとパネルがあるとないのでは全然違って、エリアの認識ができ、ちゃんと囲われている感覚があるんですよね。スペースデザイナーからも「この低いパネルが空間づくりに効いている」と好評です。
 
「パネルの組み合わせ次第でオフィス空間にさまざまな表情が出せる」(齊藤)
「パネルの組み合わせ次第でオフィス空間にさまざまな表情が出せる」(齊藤)
齊藤:パネルのバリエーションは通常パネルのほかに、オープンフレーム、3種類のルーバータイプがあります。抜け感は、製品デザイナーがとても大切にした部分で、「オープンオフィスに置くものなので、面ばかりで遊びがないと面白くないよね」とチームでも話していました。

 

多くの知見を交わらせた、共創のものづくり

──新しい価値をつくっていくのは大変だったと思います。企画から開発まで、全体としてどのようなプロセスで進めたのでしょうか。
「“オカムラっぽくないもの”をつくろうと考えた」(鈴木)
「“オカムラっぽくないもの”をつくろうと考えた」(鈴木)
齊藤:企画には通常より時間をかけました。検討段階から社内のスペースデザイナーを巻き込み、「こういうものを考えているんだけど、どう思う?」「実際の物件のレイアウトに落とし込むとどんな提案ができそう?」とデザインモックアップも見せて相談しました。試作品も通常は工場で開発メンバーだけで確認するところを、今回はオフィスに持ち込み、スペースデザイナーからも意見を集めました。

──それによって変化はありましたか。

齊藤:はい。たとえば、もともと私たちは比較的小さなユニットとして使うことを想定していたんです。でもスペースデザイナーから「オフィス全体を、YAAを中心に一筆書きで描いてみては」なんて発想も出てきて、捉え方が広がりました。

鈴木:設計においても従来と違う挑戦が多数ありました。たとえば、これまで樹脂やアルミでつくっていたものをスチールにしたり、フレームのビスを隠さず見せるデザインにしたり、部品点数や加工をシンプルにしたり。設計フェーズでは何度も生産事業所へ足を運び、コストや調達も考慮しながらお互い意見を出し合って形にしていきましたね。

齊藤:これまでのオカムラは、機能性を追求していたところがあります。お客様から「これ、できないの?」と言われたときに、なんでも要望に応えられたほうがいいだろうと考えていたんです。でも今回はスペースデザイナーの提案しやすさに全面的に振り切り、機能的には便利でも、それでデザインが崩れるならあえてつけない選択もしました。あえて天板をつけない仕様にしたのも、その一例です。従来ならオフィス家具としての機能を考えると天板をつけたくなるのですが(笑)
そこまで踏み切れたのは、当時、外部アドバイザーとして監修いただいていた北村 紀子さん   (現オカムラ クリエイティブディレクター)の存在も大きかったですね。北村さんのアドバイスのおかげで、これまでのつくり方にとらわれず、柔軟な発想を持てました。
 

YAAが変えるオフィス空間とものづくり

──YAAが生まれたことで、今後のオフィス空間にどんな変化を期待していますか。

鈴木:新たなコミュニケーションが生まれるきっかけをつくれたら嬉しいです。YAAを使ったオフィス空間が、「自然と足を運びたくなる」「理由はわからないけど、なんだか好き」と思ってもらえるような存在になれたらいいですね。

齊藤:そうですね。あとは働く人はもちろん、スペースデザイナーにもYAAを楽しんでほしいです。製品を使って創造性を発揮し、私たちが想定していなかったような新しい使い方の事例が増えてくると、オカムラとしての提案の幅も広がってくると思います。

──最後に、YAAの開発を通じて伝えたい「オカムラのものづくりの魅力」はなんでしょうか。

鈴木:YAAは、製品デザイナーがデザインしたものが、ほぼそのまま製品化されています。設計段階でつくりやすさを優先してデザインを変更することもあるのですが、今回は限りなく当初のデザインを活かしました。企画のコンセプトや製品デザイナーの想いに沿ったものを形にする力があることを確認できましたね。
自社で企画から製造まで一貫してでき、さまざまな部門の関係者が集まって議論しながら進めていける。単にものをつくるだけでなく、新しいことへ挑戦できる風土があるのも、オカムラのものづくりの魅力ですね。

齊藤:お客様のためにできる限り対応しようという姿勢はオカムラのいいところですが、YAAの企画開発を通してそれだけではない「価値創造」の重要性も感じました。これからも根本に「自分たちがいいと信じるものをつくる」という軸を持ちながら、スペースデザイナーや営業、外部の専門家、そしてお客様の意見など、多様な知見を融合させて、よりよいものづくりをしていきたいと思います。
 
「YAAが新しいオフィス空間のあり方を提案するきっかけになれば」と2人は話す
「YAAが新しいオフィス空間のあり方を提案するきっかけになれば」と2人は話す

取材後記
企画開発、製品デザイナー、スペースデザイナー、外部のインテリアデザイナーなど多くの人の共創によって生まれたYAA。「まざりつながる」という言葉は、製品だけでなくこのプロジェクト自体を表しているようにも感じます。実際にオカムラのオフィスに設置されたYAAは、見る角度によって雰囲気が違い、多様なスペースと人が自然にまざりあっています。直近では、世界最大規模のオフィス家具見本市「オルガテック東京2026(2026年6月2日~4日/東京ビッグサイト)」においても、YAAを使った空間展示が予定されています。YAAがオフィスにどんな「やあ」の風景をつくっていくのか、これからの展開が楽しみです。(編集部)

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