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店舗で働く人のことを考え、連携しながら未来を創造

2025.12.25
企業パーパスに「人が活きる社会の実現」を掲げるオカムラ。この「オカムラを知る!」では、オカムラグループのさまざまな取り組みを紹介していきます。

オカムラの商環境事業本部が考えたのは、「お客様の笑顔は、スタッフの笑顔から」ということ。店舗の働く環境改善ソリューションとして、すべてのスタッフが活き活きと笑顔で働ける店舗のあり方「SMILE WORK STYLE[スマイルワークスタイル]」を提案しています。そこで今回はスペシャル対談として、商環境における店舗のトータルデザインなどで新しい提案を展開する店舗デザイン部 プロジェクトデザインセンター デザイン戦略室 室長の大石 由布子(おおいし・ゆうこ)と、長年オフィスを中心とした働き方の研究を続けてきたワークデザイン研究所 所長の森田 舞(もりた・まい)が、これからの商環境の可能性や、オカムラが共に取り組んでいけることについて自由に語り合いました。
2025年10月取材

「働いている人」を大切にしたいという想い

大石 由布子(以下、大石):まずは簡単に、オカムラが提唱する「スマイルワークスタイル」について私の方からご紹介します。店舗のバックヤードや休憩室は、今までは売場優先ということもあり、狭くて乱雑としていることがほとんどでした。でも、それが当たり前だったのです。一方で、オフィスの環境はどんどん働きやすいものになっています。「同じ働く場でありながら、なぜこんなに違いがあるのだろう。これからの時代、店舗で働くスタッフのための空間をよりよいものにしたい」と思っていました。
商環境事業本部 店舗デザイン部 プロジェクトデザインセンター デザイン戦略室 室長 大石 由布子
商環境事業本部 店舗デザイン部 プロジェクトデザインセンター デザイン戦略室 室長 大石 由布子
商環境を取り巻く近年のトレンドの変化は3つあって、1つ目は人手不足の深刻化。2つ目は働く人の価値観の変化で、例えば店員さんの髪の色も自由になってきています。3つ目は世論の変化で、これまでのお客様は神様という風潮は終わり、客もスタッフも対等という考えが広がりつつあります。カスハラという言葉をよく耳にするようになったのも最近のことですよね。そんな3つのトレンドを受けて、これからの時代は店舗で働く人たちも活き活きと快適に働くことが重要になります。
それで2023年、働く環境を改善していこうと、最初は「スマイルバックヤード」と名付けた活動を始めました。それまでオカムラはモノの提案から入ることも多かったのですが、その先にあるワークスタイルを提案し、クライアントに共感してもらって、一緒にお店づくりをしていきたいという想いがあったのです。そこから、資料などを作成して社内の人たちにも働きかけ、ウェブサイトにも「スマイルワークスタイル」として内容が掲載され、展示会やセミナーなどで紹介も行いました。
オフィス環境事業本部 働き方コンサルティング事業部 ワークデザイン研究所 所長 森田 舞
オフィス環境事業本部 働き方コンサルティング事業部 ワークデザイン研究所 所長 森田 舞
森田 舞(以下、森田):とてもいい活動ですよね。私は今、オフィス環境事業本部にいますが、対象としているのは「働いている人」というスタンスなので、大石さんのいる商環境事業本部のお客様である店舗の運営に関わる人や、店舗で働く人たちも対象だと思っています。オカムラの市場という意味では学校の教職員、病院の医師や看護師もターゲットですし、本来そこに壁はないと思うんです。ですから、商環境に対して詳しい知識を持っている大石さんたちと一緒に何か取り組めたらと思っています。

大石:うれしいです。私も調査や研究などでご一緒できたらと思っています。

森田:店舗スタッフの働く環境、例えばバックヤードや休憩室の改善というのはオカムラのパーパスにも合っていますし、社会的に意味のあることだと感じます。それと私が思うのは、オフィスは特定の企業のためのものであることが多いので、目的を一つにしやすいんですよね。医療施設や教育施設、店舗となると、患者や生徒がいたり、買い物客がいたり、さらに国や自治体なども関係していてステークホルダーがとても多い。そこが一つの難しさだと思うんです。オフィスなら最終的に経営者の決定で、変える方向に動ける。

大石:ステークホルダーは確かに多いですね。例えば売場を変えていくとなると、実際に店舗で働いているのは店長やスタッフの皆さんですが、意思決定は本部で担う場合が多いです。働く環境を提案するにあたり、難しい点の一つと言えます。それから、買い物客の意見などを重視することが多いですね。

森田:レジのスタッフが腰掛けるスツールを導入するとか、その最たるものじゃないですか?
およそ100分という対談でお互いの知見を披露しながら、既にこの場が共創の場となっていた
およそ100分という対談でお互いの知見を披露しながら、既にこの場が共創の場となっていた
大石:確かにそうです。以前に営業部門でオカムラのスツールをある店舗のレジに導入したのですが、最初は店舗側がお客様からの声を気にされていたそうです。座っていたらクレームが来るんじゃないかと。「座らせていただいています」みたいなポスターを貼るとか(笑)

森田:お客様に対して失礼にあたる、という感覚があるんでしょうね。
 
オカムラの商環境製品としても、レジサポートツール「Saporta(サポルタ)」を開発・発売
オカムラの商環境製品としても、レジサポートツール「Saporta(サポルタ)」を開発・発売
大石:アメリカなど海外では以前から座るのが当たり前になっているんです。でもそこが日本でも良い方向に変わりつつあるというか、今回の導入事例も含め、新しい時代に入っていると感じます。実際にスツールを入れたら、お客様からのクレームは多くなかったらしいんですね。だから「そんなに気にしなくてよかったんだ」というのが店舗側の印象のようです。新しい常識を自分たちでつくり、それが理にかなっていれば通るものだと感じます。

森田:すごい成功例ですよ。良かったですよね、そういう結果になって。
 

その企業が大切にしていることを休憩室にも反映

大石:でも、これまでも働く環境に注力していなかった訳ではなくて、特に省力化や効率化などの取り組みは注目されていました。これからはこれらの要素に加えて人の「心」の部分、リラックスやリフレッシュなどの快適性が重要視されていくと思います。モチベーションが上がることもそうですね。そうして心も身体も快適に働ける環境は、スタッフのウェルビーイング(※)にもつながります。

※ ウェルビーイング(well-being)とは、世界保健機関(WHO)の憲章による「健康の定義」において「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあること」(日本WHO協会訳)として使われたことで広まった概念。

森田:オフィスでもウェルビーイングは働き方や働く場の前提だったりしますね。研究所による最近のオフィスについての調査では、オフィスワーカーが働く上で大切にしたいことは? という問いに対して、1位は「健康」なんです。私たちは「お給料」かと思っていたので、意外な結果でした。
私たちは心身の健康のために、「つながり」に注目しています。WHOによる健康の定義では「社会的」にあてはまる部分です。コミュニケーションを取る、会社としての一体感を持つ、そうしたことを醸成する場としてオフィスが重要だと話しています。でも店舗の場合は、身体的・精神的といったところがより重要になるような感覚はあります。「衛生要因」と呼ばれる要素が満たされると、人間は「不満ではない」と感じます。店舗における環境づくりで大石さんたちがしようとしていることはとても大切ですよね。

大石:ありがとうございます。ある大手スーパーにおける休憩室の提案では、単に「休憩室を改善しませんか」ではなく、その企業が何を大切にしているかをしっかり捉えるために中期経営計画なども読み込んで、オリジナルの提案に落とし込みました。お客様にはこのスーパーのファンがとても多いことから、「働く人にもファンになってもらえるお店づくりをしませんか?」と呼びかけました。気に入っていただいて、提案に近い形で実現することができました。

対談が行われたのは2025年8月に商環境事業本部が移転した浜離宮三井ビルディングの10階フロア
対談が行われたのは2025年8月に商環境事業本部が移転した浜離宮三井ビルディングの10階フロア
森田:休憩については、その空間でどうリフレッシュするかが注目されると思います。私たちの研究では、休憩時の行動は4種類くらいに分けられて、1つ目がコミュニケーション。飲食する、おしゃべりするなどですね。2つ目がリラックスで、音楽を聞くとか、植栽や生き物を見る、ウロウロするとか(笑)。3つ目がレクリエーションで、本を読むなど。4つ目がアクションで、軽い運動などですね。オフィスの場合はこういう行動をいろんな場所でできるように整えるため、カフェのカウンターを設けたり、オフィスによってはジムがあったり。店舗でいちばん大事なのはリラックスなのかな? と思っていますが、スペースが充実していればオフィスと同様のこともできるでしょう。店舗の特徴や組織の風土、お好みによって、どういう作り方をしたらよいかを考えると、よりフィットするかなと思います。

大石:店舗では、アンケート結果などを見ると、リラックスしたいという要望が多いです。店舗スタッフの担当する業務内容によっては、レクリエーションやアクションの要素を取り入れるのも、モチベーション向上などにつながるかもしれません。

森田:生産拠点を持つ企業では、工場内休憩室のあり方も話題になっています。ラインの近くにあって、すぐ休めるスペースは大事ですね。身近な例では、オカムラ従業員の働きがい向上のための取り組み「WiL-BE 2.0」の一環として、工場内にある休憩室を、オフィス環境事業に携わるメンバーがサポートし、リニューアルしています。お客様への提案にも活かせますしね。

大石:身体を動かすという意味では、店舗での働き方は、工場に近い面があるかもしれません。さっきリラックスという話が出ましたが、店舗でも仮眠を取りたいというニーズはありますね。重労働の場合もありますから、昼休みの時間に少しでも寝たいとか。そうした時に、オフィスでは仮眠に対する工夫などありますか?

森田:オフィスでも仮眠は話題になっています。そもそも眠い時に無理して起きている時の効率は良くありません。「パワーナップ」という言葉も注目されていて、15分ほど仮眠すればだいぶリフレッシュできます。仮眠ブースも仮眠チェアもありますが、空間としては籠っている感じが必要な反面、寝すぎずにちゃんと起きなければいけないんですよね。そこが難しい部分でもあります。

大石:店舗の休憩室では、完全に籠れるブースだと、そこまで必要かどうか……という反応もありますし、少し悩ましいですね。最近では、ちょっと隣の人と区切ったパーソナルスペースを設置した店舗もあり、スタッフに人気のようです。
対談は広いジャンルにまたがった情報交換の場となり、オカムラの未来を語る場にもなった
対談は広いジャンルにまたがった情報交換の場となり、オカムラの未来を語る場にもなった

店舗に快適な空間があると、情報は口コミで拡散する

大石:コンビニやドラッグストアでは、事務室兼休憩室みたいなところもありますから、仕事も休憩もフレキシブルに使えるようにという提案をしたところもあります。更衣室では単にロッカーがズラリと並んでいるのではなく、オープン収納にしてパウダースペースを設けたり。LGBTQへの対応も含めて、カーテンで仕切れる工夫をしたところもありました。
あとは、ソファを1台置くだけでもスタッフに喜ばれる仕掛けになったりします。座って横にカバンを置いてスマホを見たりするとか。座れる場所のない更衣室って不便だなと気づいて提案しました。

森田:気づいて発見して、新たな価値を生み出す提案をするって大事ですよね。

大石:店舗のスタッフはそこで長年働くというより、スポットワークも増えていますから、働きやすい環境や快適な空間があると「あそこの休憩室はカフェみたいでよかった」といった情報は拡散すると思うんです。それが企業としての人材確保にもつながりますし、企業競争力を付ける上でも大きな付加価値になりますね。それをオカムラとしても一緒になって動かして行けたらと思います。

森田:素晴らしいと思います! 先ほども紹介した最近のオフィスについての調査データによると、経営層もワーカーも、オフィスで今後充実させたいスペースの1位はリフレッシュスペースなんです。普通に考えると、経営層では会議室やミーティング、共創スペースあたりが多そうじゃないですか。ですから、ワーカーがいかに健康に快適に働けているかに対する意識って、高まっていると思います。そういう意味でも、大石さんたちが行っている活動は、今に潮目になるのかなという気がします。特に人材不足は大きな課題ですから、休憩室が優位性になる可能性はありますよね。
「快適」ということが店舗の場合どこがポイントなのか、調べてみたいというメンバーも私たちワークデザイン研究所の中にいます。何がオフィスと同じような行動で、何が違うのかが分かれば、エビデンスの出し方などもより適切なものになると思うんです。そこはぜひ大石さんたちと協業できたらと思っています。

大石:それは、ぜひぜひ。私たちの方でも現場の声を聞くために、店舗スタッフへのアンケートや店長へのヒアリングを進めていて、新しい発見はとても多いんです。それを集約してしっかりデータとして残していくことも私たちのチームの役目だと思っています。例えば休憩中、誰かとおしゃべりするよりも一人で過ごしたい人の方が多いというアンケート結果もありますし、オフィスとはまた違う面があるかもしれませんね。
本当は働いている人の後ろに付いて観察したいくらい、という思いもあります。あとはオカムラは図面の保有率が高いので、今後はもっとその辺のデータを分析して活用することも考えています。今日は森田さんにそういうこともお聞きしたくて(笑)

森田:うーん(笑)今お話しできるところでは、例えば機能ごとの面積の割合を見た時に、どんな用途で使っているかの変遷が分かります。例えば、リフレッシュスペースが増えていますとか。ベンチマークのデータとして大きな意味があると思います。
あとは、大きな母数のデータをつかむには、調査会社に依頼するウェブアンケートも一つの手だと思います。そうすると社会一般の傾向や価値観などがベンチマークとしてつかみやすい。

大石:なるほど! いいお話が聞けました。アンケートの設問の作り方も重要ですよね。ぜひトライしてみたいと思います。

浜離宮のオフィスにある共創空間「YACCHABA(やっちゃば)」にて
浜離宮のオフィスにある共創空間「YACCHABA(やっちゃば)」にて

インフラをつくり「令和のよい品」をつくるオカムラ

大石:社内の他事業とのコラボでもいろいろできると思うことがあります。私は最近参加するようになったのですが、物流システムと商環境の有志メンバーで今後について話し合いも行っています。例えばスーパーのバックヤードは売場の周りをコの字で囲うようなところが多いのですが、それは売場中心のあり方であって、働く人にとっては動線が長いし使いにくいですよね。ですから、両事業の知見を掛け合わせて、働く人にフォーカスした新しいお店づくりができないかと模索してみたいです。オペレーションなどを熟知しながら、これもオカムラの提案で常識を覆すようなことができたらと思います。

森田:動線や人流というのも興味のあるテーマです。その辺の解析技術は突き詰めると面白いかもしれませんね。

大石:人流は大事ですよね。店舗の売上に直結しますし、大切なポイントですね。やはり基本はちゃんと現場を知ることが必要だと実感しています。そして、企業や店舗の人が知らない情報をオカムラがデータとして持っていれば頼りにしていただけるかもしれません。

森田:今日はいろんなお話をしましたね。同じ社内で、商環境の皆さんが積極的な活動で今までの常識を変えようとしているのは、いいお話でした。

大石:オカムラの商環境事業では、店舗スタッフの働き方についても、お店の今後を考えることに関しても、新しい取り組みをたくさん行っています。自分で一歩を踏み出したい、新しいものを創り出したいという人には向いている環境だと思います。

森田:ここ数年、「オカムラはインフラをつくる企業」という意識が社内浸透してきていると感じています。これは自分たちのパーパスを表現するのに良い考え方だと思っています。なぜかと言うと、オカムラがつくる環境は多くの人々の生活の基盤になるものばかりで、私たちが貢献できる要素はたくさんあるはずだと思うので。

大石:オカムラとしてできそうなこと、たくさんありそうですね。今日お話ししていてもすごく感じました。これからどんどん働く場と買い物をする場は融合していくと思います。そこに対してオカムラが働きかけられないかなと感じますね。オフィス環境、物流システム、商環境の事業があり、さらにそれぞれの強みを活かして共創したらどんな空間が創造できるか。今日のこのお話も、これまで以上の共創が進むきっかけになるといいですね。

森田:部門や事業部を越えた共創をもっと広げていきたいですね。私も、オフィスに限らずオカムラ全体で幅広い研究が必要だと感じています。
オカムラが掲げるパーパス「人が活きる社会の実現」ということでは、最近は「活き活き」も人それぞれ多様化している感覚があります。効率よく働けることが「活き活き」だとも言い切れませんし、研究をしている立場からは、いろいろな人がいるのだという状況をきちんと伝えたい。その上で、こういう工夫をしたらどうですかと提案したいですね。また、この時代に思うのは、オカムラのDNAとして受け継がれてきた「よい品は結局おトクです」のモットーって私、すごく気に入っているんです。以前は「ちょっと高級でも質のよいもの」というニュアンスだったと思いますが、今は「よい品」の考え方が変わってきていて、環境負荷のこと、長く使えること、デザイン性の高さ、いろいろな要素が入ってきます。品というよりもソリューションなのかもしれませんし、一方ではAIの時代に「モノ」を持つという、製造業としての強みもあるはずです。ですから、私たちが「協同の工業」という精神で創業したことを考えても、「本当によいモノ」ってなんだろうと考え続けることは、とても意味があると思っています。今日はありがとうございました。

大石:とてもよい時間をありがとうございました。
同じく10階に設けられたカラフルな情報発信スペースで
同じく10階に設けられたカラフルな情報発信スペースで

編集後記
聞いているこちらもワクワクする対談になりました。これまでの常識を覆していくという意欲にあふれる言葉から、部門を越えた共創や総合性の話まで、二人のリーダーが見据える未来が同じもののように感じるシーンが何度もありました。「活きる」を見つめることも、「よい品」を考えることも、時代とともにどんどんアップデートされていくでしょう。それでも「協同の工業」から発したモノづくりをずっと続けられる幸せを噛みしめながら、みんなでまた一歩先へと進んでいきます。(編集部)

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