子育て世代が活きる「育児休職のリアル」 Vol.4
パワートレーン事業部 営業課 第一グループで係長の松本 結花(まつもと・ゆか)。2017年にキャリア入社して以来、アメリカや中国との取引を担う営業職として、国際的な業務に従事。メールや資料作成、オンライン会議などで日常的に英語を使用し、海外の取引先との調整や交渉を行っています。第1子出産となった2023年8月から、1年8カ月にわたり育児休職を取得。同じ事業所に勤める夫も同時期に育児休職を取得しました。
仕事一筋で走り続けてきた松本が、復職後に語るのは――「自分のキャリアを振り返る貴重な時間になった」という実感。役職者として責任のある業務を担いながら育休を取得し、子育ても経験して見えてきた、仕事と家庭の両立のリアル。そして復職後に芽生えた新たなリーダー像について、松本に話を聞きました。
松本の育児休職タイムライン
| 2022年 | 12月 | 第1子妊娠がわかる |
| 2023年 | 3月 | 育児休職申請 |
| 4月~6月 | 引き継ぎ | |
| 6月~8月 | 産前産後休暇 | |
| 8月 | 第1子誕生・育児休職開始(1年8カ月) | |
| 2025年 | 4月 | 復職 |
仲間に支えられた育休準備
――はじめに、妊娠が分かり、育児休職(以下、育休)を取ることを決めたときの気持ちを教えてください。松本 結花(以下、松本):係長として働いていたので、「これからどうやって両立しようかな......」と真剣に考えました。係長という立場上、業務の引き継ぎやチーム全体への配慮など、事前に調整することが多くあったからです。また、周囲からの期待も感じていたので、育休を取得してよいだろうかと正直少し悩みました。でも、上司に話したら「素敵じゃない!」と笑顔で受け止めてもらえ、すごくホッとしましたし、前向きな気持ちになれました。
松本:主に海外向けの営業を担当していて、アメリカや中国の取引先を中心に、輸出業務も含めた製品の受注から納品までを担当しています。パワートレーン事業部の場合、一度お取引が始まると長く続くことが多いので、私の業務は多くの部署と連携しながら、既存のお客様との取引を円滑に進めるための調整やサポートが中心です。
――海外とのやり取りが多いとのことですが、英語はどこで身につけられたのですか?
松本:幼少期の頃、朝食の時間にラジオ英会話がBGMとして流れており、自然と英語に触れる環境がありました。両親の勧めもあり、小学生からは英会話教室に通い、本格的に学び始めました。その後も英語はずっと好きで、勉強を続けてきました。以前は、留学コーディネーターとして海外とのやり取りや現地調整を担当した経験もあり、それが今の仕事にも活きています。
――幼少期から長く英語に親しんでこられたのですね。では、育休までの準備や引き継ぎについて教えてください。
松本:係長としての業務は課長へ、海外との業務は当時新入社員だった後任へ引き継ぎました。配属されたばかりで英語のやり取りも初めてのことでしたが、とても前向きにどんどん吸収してくれたので安心して任せられました。部署や関係者のサポートを受けながら、2カ月という短期間ではありましたが、計画通りに引き継ぎを終えられたと思います。
――海外との業務の引き継ぎで工夫したことや、取引先への対応についても教えてください。
松本:英語でのやり取りが多いので、翻訳ツールの使い方や事前共有のフォーマットを整えて、誰でも対応できるようにしました。取引先には後任をオンラインで紹介し、チームの体制について事前に説明。取引先から「こっちは任せて」と言ってもらえて、安心して育休に入ることができました。
夫婦で支え合った産後――育児がくれた新しいキャリアの視点
――夫婦ともにオカムラ勤務ですが、2人で同じタイミングに育休を取ることになった経緯を教えてください。松本:私たち夫婦はともに実家が遠く、両親も高齢です。妊娠が分かった時から「産後は2人で協力して乗り切ろう」と決めていました。夫は1カ月の育休を取得しましたが、夫の同僚も快く送り出してくれたため、とても心強かったです。
松本:沐浴や買い物、夜中のミルク作りなどの立ち仕事は夫が中心で、私は体の回復を優先しました。夫の育休は心身ともに大きな支えでしたね。夫の復職後は、地域の集まりや子育てイベントにも参加して、社会とのつながりを保つようにしました。イベントで知った産前産後向けの整体も、体のケアにとても役立ちました。
松本:出産前は、仕事での評価や同年代の人と自分を比べて、落ち込むこともありました。特に結果や肩書きにこだわってしまい、周囲と比べて焦りを感じることが多かったです。
しかし、育休中に子どもと向き合う時間を過ごすうちに、「人にはそれぞれのペースや選択があるんだ」と心から思えるようになりました。人と比べなくなったことで、過去に感じていた焦りや落ち込みも「あの時の悩みや葛藤は成長につながった」と前向きに捉えられるようになりました。
復職の壁を越えて――育休後に芽生えた新しいリーダー像
――当初は1年で復職予定だったそうですが、1年8カ月の育休となったそうですね。復職に向けてどんな準備をされましたか?松本:近くの保育園に空きがなく、入園先探しには苦労しました。そんな中、職場に隣接する工場の企業主導型保育施設の地域枠(※1)に空きがあることを知り、無事入園が決まりました。育休期間が予定より長くなったこともあり、復職が決まった後に英会話レッスンを再開しました。娘のリトミック教室に合わせてレッスンを受講し、集中して学ぶ時間を確保しました。育児から離れる時間は、良いリフレッシュにもなっています。
※1:企業が従業員向けに設置した保育園のうち、地域の子どもも受け入れる枠
――復職後に感じた課題と、その乗り越え方について教えてください。
松本:産後は記憶力や注意力が低下する「マザーズブレイン」という状態になり、業務の流れや細かい対応を思い出すのに時間がかかりました。引き継ぎ資料や案件メモは残していましたが、それだけでは足りないと痛感......「未来の自分」や、新任でも理解できるレベルで細かく書き留めることが大事だと学びました。
また、子どもが保育園に通い始め、熱を出すことが多くなった時、子育て経験のある同僚が励ましてくれたり、急な休みにも理解を示してくれたりして、本当に助けられました。
松本:勤務中は仕事に集中し、帰宅後は子どもと過ごす時間を第一優先にして、家庭モードへ切り替えることを心がけています。また、育休中から継続して、地域の育児教室に参加したり、保護者仲間や保育園、行政サービス、生協など、つながりを意識的に増やしたりするようにしています。こうしたネットワークがあると、急な対応が必要な時も安心ですね。
――育休を経験して、リーダー職としての気づきがありましたか?
松本:子どもがいてもキャリアを諦める必要はない、ということを改めて実感しました。ただ、そのためには働き方の工夫がとても大事だなと思います。出産前は「変革者として前に立って組織を動かしたい」という思いが強かったのですが、出産後は「バランスを取りながらメンバーを支援したい」という考えに変わりました。
女性リーダーシッププログラム「Women's Leadership Program(WLP)」(※2)を受講したことで、その思いがさらに明確になり、これまでの“変革型”から、メンバーを支え組織全体の調和を図る“サーバント型”リーダーシップにシフトしたいと思うようになりました。
※2:2021年から開催している女性従業員向けに実施している社内研修。自分らしいリーダーシップのスキルやマインドの習得を目的にしている
――育休取得を通じて、特に印象に残ったことや学びはありますか?
松本: 初めての育休で、手続きや情報集めに想像以上に時間がかかると感じましたね。
育休経験者同士が気軽に情報や工夫を共有できる場があれば、もっと安心して準備できると思います。今後は、そういう場づくりにも関わっていきたいです。
――今後のキャリアについて、どのように考えていますか?
松本:自分自身がロールモデルとなり、次世代の女性が「ここで働き続けたい」と感じられる職場環境をつくっていきたいです。そのために、日々の業務やメンバーとの関わりの中で、働きやすさや成長を支える取り組みを続けたいですね。そして、仕事に向き合う姿を通して、子どもにも「かっこいい」と思ってもらえる母親でありたいと思っています。
サステナビリティ推進部 七野の解説コラム
キャリアも育児もあきらめない――職場と家庭をつなぐ両立の工夫
パワートレーン事業部は当社の中でも男性が多い事業部です。その中で、周囲の協力を得て、ともにリーダー職を持つ夫婦が同時に育休を取得したことは大きな意味を感じました。
インタビューで特に心に残ったのは、仕事と家庭の両面で、復職後を見据えた準備を続けていたことです。
仕事面では、スキルアップへの継続的な取り組みや、リーダー像を考える機会を通して、自分らしい働き方を模索し、家庭面では、人とのつながりを広げながら、安心して育児と仕事を両立できる環境を一歩ずつ整えてきました。こうした姿勢を支えているのは、松本が大切にしている「仕事モード」と「家庭モード」の切り替えです。育児中でもキャリアを諦めないという思いを形にしているその姿は、これから仕事と育児を両立しようとする人にとって、心強いロールモデルになるでしょう。職場の理解と本人の工夫が重なって生まれた、この前向きな両立の形を、ぜひ多くの方に知ってもらいたいと思います。(DE&I推進室 七野 一輝)
家族時間の過ごし方
育休中も復職後も、家事や育児はノンストップ!そんな忙しい毎日を送る松本の、家族と過ごすひとコマをご紹介します。休日は家族で過ごす時間を大切にしている松本。この日はベビーサインのイベントに参加し、「子どもの新しいしぐさや表情に触れる時間となった!」とのこと。
「友だちと笑顔で過ごす姿にぐんと成長を感じました。そんな娘の様子に胸がいっぱいになりました」と松本。
趣味で絵を描く松本の夫が描いた肖像画。やさしい筆致から、娘への深い愛情が伝わる温かな一枚。
育児休職の取得の推進は、オカムラの「働きがい改革 WiL-BE(ウィル・ビー) 2.0」における取り組みのひとつです。「WiL-BE2.0」は「Inner Communication(社内活性)」「Human Development(人財育成)」「Work Rule(制度)」「Work Smart(デジタル技術)」「Work Place(環境)」5つのアクションによって、働きがい改革の実現を目指しています。なお、育児休職の取得推進は、Work Ruleのアクションに含まれます。
取材の中で印象的だったのは「やらない後悔よりやる後悔」という松本の信条です。資格取得をはじめ、やりたいと思ったことはすべて実行してきたと笑顔で語る姿からは、今も前進を続ける力強さが伝わってきました。松本が大切にしている言葉に、子育ての先輩からもらった「今を慈しんでね」というものがあります。子どもの笑顔や成長の瞬間、家族で過ごす穏やかな時間こそ、未来の自分を支えてくれる大切な贈り物になる――そんな思いが松本の日々に息づいています。
復職後も、保育園の保護者仲間とランチ会などを開き、日々のリフレッシュや心の支えにしているそうです。家庭と仕事のバランスを保つためには、意識的に自分の時間や人とのつながりをつくることが、長く元気でいられる秘訣になる――会話を通じて、その大切さを改めて再確認しました。松本の言葉と実践は、私自身を含め、これから育休を取る誰かの背中をそっと押してくれるはずです。
(コーポレートコミュニケーション部 古賀 小谷佳)