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オカムラ製品が義務教育学校で新たな取り組みや働き方を後押し(中富良野町・なかふらの学園)

2025.09.05

オカムラが宣言する「人を想い、場を創る。」―― オカムラはオフィスをはじめ商業施設、病院、学校、博物館や美術館、そして物流施設と多様な場づくりを展開しています。自分らしく「活きる」人を増やし、笑顔があふれる社会づくりの一端を担ったといえるようなエピソードを「オカムラの仕事を訪ねて」と題し紹介します。みなさんが訪れたあの場所や空間に、場づくりの段階で実はオカムラも携わっていた……ということがあるかもしれません。


北海道空知郡、中富良野町に誕生する9年制の義務教育学校「なかふらの学園」(2026年4月開校予定)。オカムラは、校務センター(職員室)のデスクやチェア、教室の教卓などの製品で学校運営をサポート。そこにはさまざまな教育機関やオフィス空間を手がけてきたオカムラの経験や知見が活かされています。今回は学校づくりをリードしてきた中富良野町教育委員会の三谷 和生さんに、なかふらの学園で目指すこと、新しい学校での働き方、採用したオカムラ製品の印象などを聞きました。
2025年7月取材
 

ラベンダーの杜
中富良野町立 なかふらの学園

北海道中富良野町の義務教育学校。町内の小中学校を統合し、小学校6年間と中学校3年間を一体化した9年間の教育課程を提供。2026年4月開校予定。
(2025年7月撮影)

なかふらの学園 School Guide book

 

きっかけは、老朽化した校舎の改築から

中富良野町には、10年ほど前まで6つの小学校がありました。そのうち5校は、異なる学年の生徒を1つの学級に編成する複式学級を持つ小規模校。生徒たちは小学校を卒業すると町に1つしかない中学校に通うこととなります。

一方で、一部の小学校と中学校は、昭和50年代前半に建てられた校舎を使用しており、老朽化対策が喫緊の課題となっていました。

「町の人口は10年前の5200人から4500人と減少傾向が進んでいます。これまでと同じような小学校と中学校を建てるべきなのか、あるいは、小学校と中学校を1つにすることでコストを抑えながら教育の環境改善を図るのか、教育委員会だけでなく、町議会や地域住民とも議論を重ねました」(三谷さん)
中富良野町教育委員会 課長補佐 三谷 和生さん
中富良野町教育委員会 課長補佐 三谷 和生さん
度重なる議論の結果、6つの小学校と中学校を1つの建物に統合することになり、新しい学校づくりがスタートします。
 

町全体で教育を考えるNプロジェクト

「町としての義務教育の指針をまとめるために立ち上げたのがNプロジェクト」(三谷さん)
「町としての義務教育の指針をまとめるために立ち上げたのがNプロジェクト」(三谷さん)
「当初の論点は、『老朽化した建物をどうするか』で、義務教育学校をつくることは検討していませんでした。ただ、小学校と中学校を1つの建物に統合するとなったときに、『教育の中身はどうするんだ?』という話になりますよね。また、地域住民からは、『母校がなくなるとは思っていなかった』といった声もありました。それでも、子どもたちのことを第一に、子どもたちのためにどういった環境がベストなのかを考えていただくためにも、行政として義務教育に対する指針を示す必要がありました」(三谷さん)

その後、行政、地域、保護者、学校など、教育力を集結させた「Nプロジェクト(中富良野町義務教育学校推進計画)」が発足。20年以上前からある町の教育理念『心豊かに学び 明日のふるさとをともに創る人を育む』を中心に置き、義務教育学校の在り方を検討していきました。

「アドバイザーとして参画している尾崎 えり子さん(大阪府教育委員会委員)が、『創る人という言葉は、子どもたちが目指す姿としてわかりやすい』 『自分で仕事を創れる大人になれたら、進学などで町を離れても地元に戻ってくる人が増えるかもしれない』と言ってくださって。義務教育学校のコンセプトを『創る人』としました」(三谷さん)
 

すでに始まっている「創る人」を育む実践教育

小中学校の基本教科は、全国どこでも文部科学省の定める学習指導要領に基づいた内容です。一方で「総合的な学習の時間」は、学校や地域の特色を打ち出しやすい教科。中富良野町の各校では、義務教育学校の開校を前に、「創る人」を育成する実践教育をすでに進めています。

「ラベンダーは中富良野町の町花で、学校の花壇にも植えられています。小学3年生は昨年度、ラベンダーのドライフラワーをつくって、旭川空港の降機客へプレゼントし、『中富良野町に遊びに来てください』と呼び掛ける活動をしました」(三谷さん)

また、中富良野町では株式会社オカモトヤと「教育振興と地域活性を目的とした包括連携協定」を結んでいます。6年生は昨年度、同社とラベンダーを使った商品の企画から販売までに取り組んだそうです。

「オカモトヤさんは、万年筆のインクづくりもしているので、子どもたちに中富良野にたくさんの人に来てもらうためのインクを考えてもらいました。子どもたちが選んだラベンダーの紫色をオカモトヤさんに提案したら、『それだけだと買ってもらえないですよ』と言われたんです」(三谷さん)

その商品ならではのストーリーや付加価値が必要だというアドバイスでした。子どもたちは「中富良野にいる人しかわからない色にしよう」と意見を出し合い、ラベンダーが朝日に照らされている色を再現した「初夏~朝日に照らされて~」という名前の万年筆インクが製造販売されました。
 
「こうした取り組みは、『創る人』を育てるアントレプレナーシップ教育の一例」(三谷さん)
「こうした取り組みは、『創る人』を育てるアントレプレナーシップ教育の一例」(三谷さん)
「子どもたちが商品づくりに携わることは、他の地域の『総合的な学習の時間』でもやっていると思いますが、商品化して、販売して、売上げの一部を子どもたちの活動資金として還元していこうとしているケースは珍しいのではないでしょうか。ふるさと納税の返礼品にすることも検討していて、今後も継続していきたい活動です」(三谷さん)

 

職員室は「校務センター」へ
オカムラ製品が後押しする、教職員の新しい働き方

小学校と中学校が一体となるなかふらの学園では、小学校の教職員と中学校の教職員が同じ職場で働くことになります。従来「職員室」と呼ばれていた空間は、「校務センター」と名付けられています。
 
フリーアドレスを取り入れた校務センター
フリーアドレスを取り入れた校務センター

「小学校の先生は基本的に全教科を担当するので、担任を持っていると朝教室に行って、夕方までほとんど職員室に戻ってきません。中学校の先生は特定の教科を受け持つ教科担任制なので、授業がない時間帯は職員室で過ごすことになります。そして、小学校の先生が職員室に戻ってくるころには、中学校の先生は部活動の指導で職員室にいないんです。そう考えると、必ずしも全員分の席が必要ではないかもしれないですよね」(三谷さん)
 
「ある程度の席数があればフリーアドレスで対応できると考えた」(三谷さん)
「ある程度の席数があればフリーアドレスで対応できると考えた」(三谷さん)
その後、オカムラのショールームなどを見学してフリーアドレス(※)の有効性を確信したと三谷さんは話します。

「オカムラのハイデスク(WORK ISLE)ハイチェア(Sylphy)は、目線の高さが合ってコミュニケーションしやすいとショールームで体験したときに感じました。ポータブルバッテリー『OC』は、近隣企業のオフィス視察で目にして、取っ手があって使いやすそうだと感じました。また、デザインもよかったのでOCの導入を決定しました」(三谷さん)

※:オフィス内で固定席を持たず自由に席を選んで働くスタイル
 

他にも「なかふらの学園」では、技術室や家庭科室など名前のついた特別教室はなく、101や201などの数字で呼んでいます。

「技術室や家庭科室と名前が付いていると、その授業でしか使われなくなります。しかし、校内はすべてWi-Fiがつながっているので、広いテーブルで作業したいときは、そんな特別教室にパソコンやモバイルバッテリー『OC』、資料などを持ち込んでもいいかもしれません。先生たち自身にも、校務センターの中で仕事を完結しなくていい発想を持ってもらえたらと思っています」(三谷さん)

大人たちが自由な働き方を体現し、その様子を子どもたちに見えるようにする。そうすることで、子どもたちが将来の働く姿やオフィスを想像してほしいと三谷さんは言います。

「子どもたちが社会に出て働き出すころには、フリーアドレスのオフィスは当たり前になっているでしょう。教室の黒板をやめてホワイトボードにしたのは、プロジェクターを投影しやすい利便性も要因でしたが、社会に出たら黒板はほとんど使う機会がないですよね。先生たちとも話し合って、子どもたちが早くから実社会で働く環境を身近に感じられるようにしたかったんです」(三谷さん)
 

校務センター ギャラリー

 

「創る人」を育むため、大人に求められるスタンス

「なかふらの学園」がコンセプトに掲げる「創る人」を育むために、周囲の大人たちが果たす役割は少なくありません。三谷さんは、まず「校務センター」で働く教職員(大人たち)が率先してチャレンジする姿を見せてくれることを期待しているそうです。

「校務センターがフリーアドレスになると、クリアデスクが基本になります。つまり、その日にやることをその日に終わらせる、ということです。『今日はここまで。あとはデスクをきれいにして帰ろう』という意識になりますよね。仕事の整理がしやすく、働き方としても効率的だと思うんです」(三谷さん)

また、Nプロジェクトでは教職員だけでなく、生徒に関わるすべての大人に向けて「創る人を育む大人のスタンス」を打ち出しています。
 
「なかふらの学園 School Guide book」から
「なかふらの学園 School Guide book」から

2025年8月には小中学校が新しい校舎に移り、2026年4月には小学校と中学校が一体となった義務教育学校としてのスタートを切る「なかふらの学園」。教育環境の変化は、子どもたちだけでなく、子どもを取り巻く教職員、保護者、地域住民にとっても新しいチャレンジになるはずです。
 
「『創る人』を育む大人は教職員だけでない。保護者や地域の人たちも含まれる」(三谷さん)
「『創る人』を育む大人は教職員だけでない。保護者や地域の人たちも含まれる」(三谷さん)
「どうしても大人は『こうしたらいいいよ』と先回りしてしまうことが多いと思うんです。そこは少し余裕を持って、子どもたちに主体的に考えてもらって、それでも困っていたら手を差し伸べるような意識で、子どもたちと関わっていきたいですね。スクールガイドブックにも『Nプロジェクトは常に成長し続けるものです』と書きましたが、まずは試してみて、学校、家庭、地域のそれぞれで、より良い形に変えていければいいと思うんです。今後、地域向けの説明会や見学会でも、そんなメッセージを伝えていきたいです」(三谷さん)
 

なかふらの学園 ギャラリー

なかふらの学園が教育と地域のつながりを強くする

最後に、「なかふらの学園」が目指す将来像について、三谷さんは次のように答えてくれました。

「当初、母校がなくなるのは寂しいという声もありました。でも、複数あった学校が1つになることは、むしろ、町中の力や視線がここに集まることだと思うんです。そうすれば、これまで以上に深い地域との関わりが生まれ、活動への理解や支援も多く得られると期待しています。町全体で子どもたちの成長を見守るというか、そういうふうになっていくといいですね。始まりは『50年前の校舎をどうするか』ですから、当然50年先も使われることを想定して準備してきました。一部の教室は可動式の間仕切りがあり、児童生徒数にあわせて教室の広さを変えられるようになっています。未来を見据えた結果、こういう学校ができたと思っています。町の未来を担ってくれる社会のつくり手が、この学校から育ってくれることを期待しています」(三谷さん)
 
「新しい義務教育学校が町の未来をつくる」(三谷さん)
「新しい義務教育学校が町の未来をつくる」(三谷さん)

編集後記

今の小学生も中学生も、大人になったら社会に出て働きます。子どもたちにとって身近な大人(教職員)が、どんなふうに働いているのかを見てほしい、将来自分が働く場所をイメージしてほしい、という三谷さんの発言が印象的でした。教職員の働き方を広げてくれるであろう「校務センター」が、どのように活用されていくのか。そして、新校舎でどのように学びの場が広がっていくのか。自分らしく「活きる」人が増えていくように、オカムラも引き続き支援していきたいと感じました。(編集部)
 

なかふらの学園の校務センターで使用されているおもな製品
ポータブルバッテリー OC
オフィスシーティング Sylphy(シルフィー)
オフィスシーティング CG-M
オフィスデスク Aption Free2(アプションフリー2)
オフィスデスク Pro Unit(プロユニット)
クリエイティブファニチュア WORK ISLE(ワークアイル)
ユニットソファシリーズ Bresta(ブレスタ)
ファニチュアシリーズ Lives(ライブス)
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