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企業と連携しながら次世代育成! 新しい学びの場とは〈前編〉(HR高等学院)

2025.06.17

オカムラが宣言する「人を想い、場を創る。」―― オカムラはオフィスをはじめ商業施設、病院、学校、博物館や美術館、そして物流施設と多様な場づくりを展開しています。自分らしく「活きる」人を増やし、笑顔があふれる社会づくりの一端を担ったといえるようなエピソードを「オカムラの仕事を訪ねて」と題し紹介します。みなさんが訪れたあの場所や空間に、場づくりの段階で実はオカムラも携わっていた……ということがあるかもしれません。


オカムラは、2025年4月に開校した通信制高校サポート校「HR高等学院」の新校舎「YOYOGI BASE」の空間づくりを学校と一緒に進めました。同校は、社会全体で次世代を育てる新しい教育の仕組みを創ることに取り組んでおり、幅広いキャリアを目指すことができる教育機関です。企業PBLや探究に特化したカリキュラムが特長で、オカムラとの連携も決まっています。このHR高等学院と、そこでのオカムラの仕事について前後編でお届けします。前編は、HR高等学院 共同創業者の山本 将裕さんと成田 修造さんに、同校が実践する新しい教育のかたちについて話を聞きました。
2025年4月取材
 

HR高等学院

HR高等学院は、2025年4月に開校した通信制高校サポート校。オンライン・オフライン両方を活用した課題解決学習を通じ、非認知能力やキャリアへの探究心を育てるカリキュラムが特長。基礎学力を育てる教科学習も組み込むことで、高校卒業資格の取得や大学進学、海外進学などを視野に入れた幅広いキャリアを目指すことも可能。

 

HR高等学院が育成したいのは「人生を自ら動かす人」

HR高等学院は、2025年4月に開校した通信制高校サポート校です。オンラインとオフラインの両方を活用しながら、現在、一期生71名が学んでいます(2025年6月現在)。
 

HR高等学院 共同設立者/パートナー 成田 修造さん
HR高等学院 共同設立者/パートナー 成田 修造さん
HR高等学院を設立した背景について、共同設立者の成田修造さんは次のように説明します。
「学生時代から、既存の学校システムに違和感を抱いていました。中学受験をして中高一貫校に入学してみると、周りはすぐに大学受験の話をしていて、大学に入ると今度は就職活動の話をしている。誰かが敷いた既存のレールに沿った人生を送っている人が多い気がしました。でも本来、人生はもっと面白いはずです」
 
HR高等学院 共同設立者/CEO 山本 将裕さん
HR高等学院 共同設立者/CEO 山本 将裕さん
共同設立者でCEOの山本将裕さんも既存の教育システムに課題を感じており、中高校生向けキャリア探究サービス「はたらく部」を運営していました。その活動の延長として通信制サポート校の設立を進め、理念に共感した成田さんも「ぜひ一緒にやりたい」と参加を決めました。
HR高等学院が育てようとしているのは、「自ら人生を動かす人」。言い換えると「人生のレールを自分でつくれる人」です。
「大学受験はしてもいいし、しなくてもいい。結局は何がやりたいか。その先に大学が必要なら行けばいいだけ。あらゆる選択に寛容になることが大事で、何者かになる必要も、成果を出す必要もない。自分の人生を自分らしく生きることがすべて。それを実現できる場をつくりたいですね」(成田さん)

近年、日本は「世界幸福度ランキング2025(※1)」でも55位と低く、不登校の学生も増加していると言われています。こうした状況においては、「誰もが自分の人生に主体的に取り組むマインドを伸ばす」ことが学校の役割になると成田さんは考えています。

※1:世界各国の人々が自分の現在の生活について評価する調査結果(World Happiness Report)に基づき、国連の持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)が発表している

HR高等学院には、いわゆる先生がいません。学びに伴走するのは、さまざまな領域の第一線を切り開いてきたプロフェッショナルな大人たちです。
「学校の先生は社会とのつながりがどうしても限られているので、受験指導が中心になってしまうことがあります。しかし、現実の社会はとても広いもの。15歳という早い段階からさまざまな社会人と接することで、『この人は面白いな』『あんな生き方もあるのか』と多様なロールモデルを知るきっかけになる。そうした出会いが、若者が自分なりの目標を見つける原動力になるはずです」(成田さん)
 
取材日は、新学期初日。成田さんも授業を行った
取材日は、新学期初日。成田さんも授業を行った

学ぶ領域としては、ビジネス&アントレプレナーシップ、テクノロジー、デザイン、ソーシャル、グローバルの5つをコアに据え、アントレプレナーシップに関しては、成田さん自身が学生時代からの起業・経営経験を活かして講師も務めます。山本さんによれば、場の空気感を大事にし、「手を挙げやすく話しやすい雰囲気づくり」を意識しているとのこと。

初回の授業から次々に質問が出て、学生の真剣さや前のめりの姿勢が伝わってきました。成田さんも手応えを感じており、「すでに起業したいと思っている学生も多く、みんな何かしらの軸や志があります。それを理解し、適切に導くプロセスの一部になりたいですね。将来的にはHR高等学院から学生が自分のやりたいことを実現できる企業に直接就職するようなルートもつくりたいです」と展望を語りました。
 

HR高等学院 ギャラリー

 

サードプレイスとして機能する学びの場「YOYOGI BASE」

東京都渋谷区代々木にあるキャンパス「YOYOGI BASE」。多様性と創造性が融合するこの新たな学びの場づくりは、オカムラも一緒に進めてきました。

今回、学ぶ場をつくる上で大切にした価値観は、「探究 × 越境 × 共創」でした。これはHR高等学院のカリキュラムの軸でもあります。
「これからの時代に求められるコミュニケーション能力や課題解決能力、行動力を育むためには、自分の興味あることに飛び出す『越境』や、仲間と一緒に何かを創り上げる『共創』が大事。加えて、今学校でも必修化されている『探究』も重要です。この3つを掛け合わせています」(山本さん)
この価値観を空間設計にも反映させ、やりたいことにワクワクしながら向き合える、開かれた空間、かつ創造的になれる空間を実現しました。
 
「YOYOGI BASEは、単なる学習スペースではなく学生たちのサードプレイス」(山本さん)
「YOYOGI BASEは、単なる学習スペースではなく学生たちのサードプレイス」(山本さん)
YOYOGI BASEでの授業の様子
YOYOGI BASEでの授業の様子
「YOYOGI BASEは、学生たちが何かを表現し、仲間と語り合える『秘密基地』のような場所、安心して自分を出せるサードプレイスとして機能する空間を目指しています。仲間とワイワイ語り合い、自然に青春体験が生まれる場所になるようデザインしました」(山本さん)

もちろんオンラインのバーチャル空間も居場所として機能しますが、「雑談の質や感情の伝わりやすさは、やはりリアルに勝るものはありません。特に10代の多感な時期には、感受性を豊かにするリアルな場所での交流は大切だと思います」と山本さん。YOYOGI BASEでは壁の一部は学生たちがペンキを塗って仕上げ、一緒に創り上げました。
 
「学生は通年で募集しており、毎月入学の機会がある」(成田さん)
「学生は通年で募集しており、毎月入学の機会がある」(成田さん)

なかにはリアルな学びの場を求めて地方から移住してきた熱量の高い学生もいます。また、オンラインではマレーシアやフィジーなど海外からの入学者も参加しています。「従来の教育環境とは根本的に違う体験ができる場所です。少しでも面白いと思ったらぜひ検討してみてほしいですね。決して後悔はさせません」と成田さん。
 

本質的な課題解決力を育むPBL

カリキュラムの中では、大手やベンチャーなど、さまざまな企業と連携し、PBL(※2)と呼ばれる課題解決型のプロジェクト活動を行います。オカムラも今後、連携してプロジェクトを実施する予定です。

※2:Project Based Learningの略。学生自らが課題を見つけ、その課題を解決する力を身につける学習法

PBLの有用性は、溝上 慎一氏(元・京都大学教授、現・桐蔭学園理事長)の研究で明らかになっており、高校2年生がキャリア形成の重要なターニングポイントとされています。この時期に学校外での活動を経験した学生は社会人になってからも主体的な活動を継続し、キャリア満足度が高くなる傾向にあります。こうした研究を受け、高校で探求学習が必修化されましたが、現状では単なる調べ学習で終わってしまうことも少なくないようです。
 
「教育と企業の垣根をなくしていきたい」(山本さん)
「教育と企業の垣根をなくしていきたい」(山本さん)

山本さんは以前、「はたらく部」の活動で、建設会社とスマートシティについて考えるPBLを実施したところ、学生たちの目の色が変わることに気が付きました。リアルな課題に取り組むことで、学びの質が大きく変わることを実感したといいます。「PBLは民間企業出身だからこそできる取り組みだと思っています。企業はもっと子どもたちを育て、支えられると思っています」と声に力を込めます。

それを聞いた成田さんも、「多くの企業が社員に求めるのは、コミュニケーション力、自分で考える力、行動力などですが、本質的に受験勉強とは関係ないものです。これまで社会と教育の接点は限られていましたが、社会の側から教育に携わる責任があるはずです」と思いを述べました。
 
「HR高等学院が社会と教育の接点をつくるパイオニアになれたら」(成田さん)
「HR高等学院が社会と教育の接点をつくるパイオニアになれたら」(成田さん)

HR高等学院のカリキュラムは、トップランナー講師による講座とPBLの二軸で構成されています。社会の一線で活躍する講師が失敗や経験を伝え、学生の気づきを引き出す。同時に、PBLで課題解決能力や主体的に動く力を育む。この両軸が効果的に連動すると考えています。
 

教育の未来を切り拓くパイオニアを目指して

第一期生に期待しているのは、「興味のあるものを見つけて、自分なりに表現したり、行動に移したりしながら、ときには失敗しても突き進んでいくこと」と山本さん。次の入学者に「ここまでやっていいんだ」と可能性を示すムーブメントをつくってほしいし、そこに伴走していくとのこと。成田さんも「この3年は学校をつくる時期。自らの手でよりよいものにしてほしいですね。批判も大歓迎です。すぐに改善します」と意欲を見せます。

子どもたちが活き活きと過ごしている状況をつくれるかどうかは日本の未来に関わる大きな問題であり、企業にも跳ね返ってくるため、「当事者意識を持って、これまでとは違う教育のあり方を、企業と一緒につくっていきたい」と山本さんは考えています。また、今の学生たちは教育システムが大きく変わる世代です。AIを日常的に使いこなし、新しいツールで創造的なものをつくる力があります。「変化の時代を生きる若者が入社してくる状況で、企業側も自社の変化対応力について危機感を持ったほうがいい」と山本さんは指摘します。また、少子高齢化が進む中では、「上の世代が次世代を支える」という発想への転換も必要だといいます。

「次世代のために今何ができるかを日々意識することが大切です。子どもたちの目の色が変わる瞬間に立ち会うと、大人も多くのパワーをもらえます。世代間の違いに驚くだけでなく、互いに歩み寄り、理解し合うことが重要だと思います」(山本さん)
 
共同設立者の2人は、「日本一の学校を学生たちとつくりたい」と語る
共同設立者の2人は、「日本一の学校を学生たちとつくりたい」と語る

成田さんは「日本の教育は今、新しいかたちを模索している段階です。私たちの卒業生が自分の道を切り拓きながら社会で活躍する未来を楽しみにしています」と話します。
最後に山本さんは、民間が運営する学校を選ぶという選択肢はまだ少数派としながらも、「一つの選択肢として効果的だということを証明したい。日本をより元気にしていくような学校をつくり、教育のあり方のアップデートを牽引していきたい」と未来を見据えて語りました。
 
編集後記

話を聞いて、教育の新たな可能性にワクワクしました。自分が10代なら通いたかった魅力的なカリキュラムです。15歳という早い段階で多様なロールモデルに出会えれば、将来の選択肢は大きく広がるでしょう。YOYOGI BASEという秘密基地のような空間と、企業と連携したPBLの取り組みも、従来の学校にはなかったものです。今後、どんな人財が育成されていくか楽しみであるのと同時に、私たち大人も傍観者ではなく、日々の業務や後輩との関わりの中で次世代育成を意識していくだけでも、変化を生み出せるのではないかと感じました。後編では、YOYOGI BASEを訪ねます。(編集部)
 

Profile

山本 将裕

HR高等学院 共同設立者/CEO
2010年にNTT東日本に入社。初期配属である宮城県石巻支店では東日本大震災を経験。2016年大企業50社を中心とした企業内有志団体が集う実践コミュニティONE JAPANの共同発起人となる。2019年にはBEYOND MILLENNIALS2019、内閣府オープンイノベーション大賞経団連会長賞を受賞。2020年にNTTドコモに転職し、企業内大学ドコモアカデミーを立ち上げ学長として1000人以上の人材を社内起業家として育成。2024年に教育事業をスピンアウトし株式会社RePlayceを創業。 

成田 修造

HR高等学院 共同設立者/パートナー
慶應義塾大学経済学部在学中よりアスタミューゼ株式会社に正社員として参画。その後、株式会社アトコレを設立し、代表取締役社長に就任。在学中の2012年に株式会社クラウドワークスに参画、執行役員に就任。2014年には取締役COOとなり、2014年12月に創業3年で東証グロース市場への上場を果たす。上場後は同取締役副社長COOとして全事業の統括を行う。2022年12月に取締役を退任。2023年より株式会社RePlayce特別顧問。


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