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冷凍空調技術で技能五輪銅賞、負けず嫌いを力に変えて未来を拓く

2025.04.24
オカムラで働く人に、仕事へのスタンスやエピソードを聞く「My Okamura Way」。オカムラが目指すのは、「人が活きる」社会の実現です。そこに向けてオカムラのメンバーが何を実践しているのか、担当する業務、働き方について思うこと、仕事以外の生活などについて聞きます。

My Okamura Way Vol.18

生産本部 アドバンスドテクノロジーセンターに所属する佐野 清尊(さの・きよたか)。高校卒業後の2021年にオカムラに入社後、「技能五輪全国大会」の冷凍空調技術職種に3度トライ。想像を超えるレベルの高さに苦しみながらも、諦めることなく技術を磨き続け、2024年「第62回技能五輪全国大会」では見事銅賞を獲得しました。現在、後輩の指導を担当する佐野のこれまでの挑戦と、これからの目標に迫ります。

2025年3月取材


野球で培った勝負魂を武器に、技能五輪へ挑戦

――最初に、オカムラに入社したきっかけと、技能五輪の選手になろうと決めた理由について教えてください。

佐野 清尊(以下、佐野):高校3年生のとき、所属していた野球部の監督から就職先としてオカムラをすすめてもらったことが、入社のきっかけです。社会人になっても野球を続けたいと思っていましたが、オカムラという会社を知り、ここでチャレンジしてみたいと思い、技能職で入社しました。
その思いを強くしたのは、入社後に技能を競い合う23歳以下の大会「技能五輪(※1)」の存在を知ってからのことです。小学3年生から続けてきた野球で培った「勝負に挑む心」や「技を磨く努力」が技能五輪にも通じると、魅力を感じたんです。もちろんスポーツとは異なりますが、自分を高めて大会で勝負したい気持ちが強くなり、選手になることを決意しました。

※1:国内の青年技能者(原則23歳以下)を対象とし、技能尊重機運の醸成を目的とした大会。競技職種は、機械系、金属系、建設・建築系など41職種に及ぶ。参考:中央職業能力開発協会「技能五輪全国大会とは」

アドバンスドテクノロジーセンター 佐野 清尊
アドバンスドテクノロジーセンター 佐野 清尊

――入社後は、どのような配属だったのでしょうか?

佐野:入社直後は、曲げ板金に取り組みました。最初は、工具の名前や用途を覚えるのに必死でしたね。それから間もなく、オカムラとしてはじめて「冷凍空調技術職種」の部門で技能五輪に挑戦することが決まり、アドバンスドテクノロジーセンターの大先輩から選手(※2)にならないかと声をかけてもらいました。
1年目の頃は選手として出場せずに、全国大会を見学するだけでしたが、冷凍空調技術のハイレベルな戦いに驚いたので、正直なところ自分が通用するのかどうか心配ではありました。1秒たりとも無駄にできない緊迫感や動きの速さ、目や体の位置の正確性など、とにかく他社の選手のレベルが高いんです。曲げ板金とは異なる厳しさに圧倒されましたが、せっかくの機会ですし、この部門で金賞を取れたらかっこいいなと思いました。

※2:技能五輪に出場して技能競技に取り組む青年技能者のこと

――レベルの高さを目の当たりにしながらも、挑戦してみたいと思えたというのは、佐野さんの向上心の表れですね。冷凍空調技術職種は、どのような課題が設定されているのでしょうか?

佐野:課題は3つあります。第一課題は「配管加工、制御機器組立、冷凍機運転(2時間50分)」です。とくに難しいのは、配管の加工です。冷凍空調で扱う銅製の配管は非常に柔らかく、扱いにくいんです。本番では丸く巻かれた配管が支給され、それを自分でまっすぐに伸ばしてから加工する必要があります。少しでも触れるとすぐに曲がってしまうため、神経を使います。冷凍設備の配管においては、まっすぐであることが非常に重要になるため、この加工には高い技術が求められます。
第二課題は「運転データ測定、冷凍能力計算(40分)」です。選手は自身が加工した配管を実際に冷凍空調機器に接続し、運転を開始します。計測器を用いて、機器の各部の温度を測定するのですが、数値を記録するだけでなく、その数値が示す意味を理解し、機器の動作状況を客観的に評価する能力が求められます。
第三課題は「制御仕様変更(30分)」です。選手は審査員から具体的な機能追加や性能改善、設計変更などを求める指示書を受け取ります。この指示書を読み解き、どの部分をどのように改造すべきかを自分で考え、判断し、そして実際に作業に移ります。
この3つの課題を通して、基礎的な技能だけでなく、臨機応変な対応力や問題解決能力も評価されます。

――どのような部分に、冷凍空調技術職種ならではの面白さがありますか?

佐野:配管をイチから自分の手でつなぎ合わせて、複雑な配線を一本一本取り付けていく作業が面白く、完成した時の達成感は本当に大きいです。そして、苦労してつくり上げたシステムが実際に動き出し、パネルが冷えて霜がついていく様子を目の当たりにした瞬間には、自分の手でつくり上げたものが機能している、その技術の面白さを改めて実感できます。 
 
実際に佐野が制作した冷凍空調技術の課題
実際に佐野が制作した冷凍空調技術の課題

立ちはだかった高い壁。銅賞獲得までの苦闘と成長

――選手として、全国大会に3回出場されたそうですね。各回で得られたことを教えてください。

佐野:今は御殿場事業所に勤務している入社当時の指導員だった先輩には、特に基本からいろいろと教えてもらいました。それから他社の状況を調べたり、テキストで学んだり、積極的に外部の情報を取り入れながら、1年間の訓練期間を過ごしました。
2年目のときに1回目の出場を果たしました。ただ、初めて出場した大会だったこともあり、緊張感に圧倒されてしまいました。プレッシャーに負けて焦ってしまい、訓練してきたことを出せずにメダルに届かなくて。実力不足を痛感し、すごく悔しかったです。
その翌年は、本番で動揺しないように、日々の訓練から本番を意識したルーティンをつくり上げたんです。朝早くから出社して、気持ちの面でも大会当日と同じような緊張感を持って取り組む姿勢を継続するのは、本当に大変でした。そして迎えた出場2回目の大会でしたが、重要なチェック項目の見落としにより、頭が真っ白に。普段は緻密な確認をしていたにもかかわらず、予期せぬミスを起こしてしまいました。
ラストの挑戦という強い気持ちで臨んだ大会でしたが、何か月もの厳しい訓練を乗り越えたにも関わらず、たった一つのミスで入賞を逃してしまい、本当に悔しい思いをしました。
 

「出場2回目の大会が終わってから2週間は立ち直れないほど落ち込んだ」(佐野)
「出場2回目の大会が終わってから2週間は立ち直れないほど落ち込んだ」(佐野)
――そこから立ち直り、3回目の出場を目指そうと思われたのは、なぜだったのでしょうか?

佐野:上長から「もう1回挑戦してみないか」と声をかけてもらったことが大きいです。2回続けて失敗していたので、きっと3回目も無理だろうという気持ちもありましたが、心のどこかではまだ諦めきれない自分がいました。
自分の気持ちがはっきりしなかったので、家族にも相談しました。両親から「この一年本当に自分に厳しくできたのか」と問いかけられて、自分の甘さに気づきました。というのも、「今日はもういいか」と妥協してしまうことがあったからです。実力が足りないのに、そのような気持ちになること自体が良くなかったと反省しました。
同時に「もしチャンスがあるなら、もう一度その機会のために頑張ってみたらどうか」という言葉をもらいました。両親含め、僕以外の兄2人、妹もスポーツをしている一家で、自分と同じく挑戦する気持ちが強いんです。両親の言葉にも背中を押され、もう一年、最後だという気持ちで挑戦することを決めました。

――そして、3回目の挑戦で銅賞を獲得されました。

佐野:金賞を目指していたので悔しかったです。計算ミスが大きな差となり、総合点に響いてしまいました。ただ、やりきったという達成感はありましたし、オカムラとして初めて挑戦した職種でメダルを獲得できたので、安堵感はありました。
 
オカムラとして初めて冷凍空調技術で3位入賞、銅賞を獲得した
オカムラとして初めて冷凍空調技術で3位入賞、銅賞を獲得した
――今振り返ってみて、どんな取り組みが結果につながったと思われますか?

佐野:どんなに辛くても、「まだまだいける」という気持ちを持ち続けたことで、技術の向上とともに、勝負に挑む精神力が身につき、それが結果につながったと思います。それまでは妥協していた部分もあったかもしれませんが、自分に厳しく、技術の研鑽に励みました。結果が出なくて焦り、辛いと感じることも何度もありましたが、その度に立ち直らなければ、また同じ結果になってしまうという危機感を持っていました。
そんなときは、上長や先輩に相談し、いろいろなアドバイスをいただきました。例えば、無駄な動きを指摘されたときは、その都度改善するように努めるなど、反省と改善を繰り返しながら、最後の挑戦に向けて全力で取り組んだ一年でした。僕は一人で抱え込んでしまいがちなところがあるので、誰かに話を聞いてもらうことは、精神的な支えになりました。同じ選手のメンバーと参加できたことや、社内の皆さんの応援も心強かったです。
 
アドバンスドテクノロジーセンター 佐藤 大
アドバンスドテクノロジーセンター 佐藤 大

入賞の先に見据える、未来を担う技術者の育成

指導員・佐藤 大
 

オカムラが技能五輪に出場する目的は、将来の戦力となる人財育成です。アドバンスドテクノロジーセンターでは、技術・技能に関連した人財教育を重視し、将来的に生産事業所で活躍する若手の輩出を目指しています。特に冷凍空調技術においては、新工場の建設など、商環境事業における冷凍冷蔵ショーケース分野の拡大を目指しており、そのために必要な人財を育成したいという意図があります。

オカムラとして出場実績がなかった冷凍空調技術職種の選手に佐野を選んだのは、人一倍強い気合と根性を評価したからです。また、彼の素直さや、積極的に質問し、新しいことに挑戦する姿勢から成長を期待できたことも理由です。技術・技能を磨くだけでなく、社内外の関係者とコミュニケーションを取り情報をインプットし共有していくことも大切です。これからは指導員として後輩に伝えながら、自身もさらに視野を広げていってほしいと思います。

 

精神を磨く指導がポリシー。金賞への執念を後輩に託す

――現在、選手を引退されて、指導員として新たな挑戦を続けているそうですね。

佐野: はい、現在はアドバンスドテクノロジーセンターで指導員として、冷凍空調技術職種の後進の育成に励んでいます。3回目の挑戦からは後輩の指導をするようになり、「自分が育てた後輩には本人が望む結果を残してほしい」と強く思うようになりました。それがきっかけですね。
自分の夢を追いかけるのも大切ですが、後輩が成長していく姿を見るのも嬉しいことだと気づきました。自分の経験と情熱を伝えていくって、すごくやりがいのあることだなと。僕が指導した後輩たちが、技術だけじゃなくて、僕の熱意とか気持ちも受け継いでくれたら、本当に嬉しいですね。
 
「冷凍空調技術で金賞を獲得できる選手を育てたい」(佐野)
「冷凍空調技術で金賞を獲得できる選手を育てたい」(佐野)

――指導において、どんなことを大事にされていますか?

佐野:後輩に教えたいのは、技術面よりもむしろ精神面です。精神的な強さは、勝敗を分けるカギだと思います。大会では、普段とは全く違う環境になるので、精神的な強さが不可欠です。そのため、高い志を持たないとどこかで挫折してしまい、中途半端な気持ちになってしまうと技術は決して身につきません。高い志があれば向上心が生まれ、自然と技術も向上していくと信じています。
僕自身の経験も踏まえて、目標を達成するためには精神を鍛えることが一番大切だと伝えています。加えて、これから力を入れていきたいのは、理論や学科の知識の充実です。講習会が年に数回あるので、積極的に参加したり、参考書で勉強したりと、指導員としてのレベルアップを図りながら後輩を育てていきたいと思っています。

――後輩たちの成長を願い、自らも成長し続けようとするその姿勢は、後輩たちにとってのロールモデルですね。今後、挑戦してみたいことはありますか?

佐野:冷凍冷蔵ショーケースに関わる業務に興味はあります。これまで培ってきた知識や技術を活かして、メンテナンスに関わる部門などで働いてみたいです。
オカムラは若い人が成長できる環境が整っていると感じています。周りの先輩方は親身になって指導してくださるので、安心して新しいことにチャレンジできます。粘り強い頑張りを応援してくれるので、この環境で成長を続けていきたいと思っています。
 
休憩時間に先輩たちと筋トレすることも
休憩時間に先輩たちと筋トレすることも

身体を動かすことが日々のルーティン。同僚とのゴルフが毎月の楽しみ

訓練中に集中すると体が硬くなることに気づいたので、毎朝欠かさずストレッチをするようにしています。出勤後に行う体操だけでは物足りず、高校時代の野球部でやっていたストレッチを思い出し、自分で5~6分のメニューをつくって続けています。今の趣味は、先輩に誘われて始めたゴルフです。月1回くらい頻度で、先輩や同期と千葉や静岡のゴルフ場に行くのが楽しみです。筋トレも自宅のダンベルで土日にやっていますが、最近ちょっとサボり気味ですね。それと、野球は見るのもやるのも本当に大好きで、読売ジャイアンツのファン。昔は硬式のクラブチームでプレーしていたんですが、怪我をしてしまってお休み中です。(佐野)

 

技能五輪の舞台で得られる学びと刺激が活力源

――選手として研鑽を積み、今は指導員という新しい仕事に取り組む佐野さんが「活き活きする瞬間」とは、どんなときでしょうか?

佐野:僕が一番活き活きするのは、やっぱり技能五輪の競技会場にいる時ですね。他の会社の選手たちと交流して、どんな訓練をしているのかとか、自分たちとは違う技術を見たり聞いたりするのが、本当に面白いです。特に、上位に入賞した人たちがどんな風に練習してきたのか、どんな考え方をしているのかを直接聞くと、自分のやり方を見直すきっかけになりますし、もっと頑張ろうと思えるんです。そういう自己研鑽を通して成長を実感できる瞬間に、自分が一番活き活きしているなと感じます。
 

 「ライバルでもある他社の選手から学ぶことも多い」(佐野)
 「ライバルでもある他社の選手から学ぶことも多い」(佐野)

インタビュー後記

今回のインタビューを通して、佐野の情熱と、それを支える精神力が伝わってきました。長年続けてきた野球で培われた、勝負へのこだわりと負けず嫌いな性格が、技能五輪で技術を磨く原動力になったようです。選手としての経験を活かし、これから指導員として後輩たちの育成に力を注ぐ佐野。その姿勢からは、自分の経験を伝えていきたいという思いが感じられます。技能五輪への挑戦、そしてこれからの指導者としての歩み。さまざまな経験を通じ、オカムラで活躍する人財としてさらにステップアップしていくことでしょう。(編集部)


OKAMURA 新卒採用情報

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