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ホテルの荷物預かり省人化で接客の質の向上と快適な手ぶら観光を実現(湯元「花乃井」スーパーホテル大阪天然温泉)

2025.02.21

オカムラが宣言する「人を想い、場を創る。」―― オカムラはオフィスをはじめ商業施設、病院、学校、博物館や美術館、そして物流施設と多様な場づくりを展開しています。自分らしく「活きる」人を増やし、笑顔があふれる社会づくりの一端を担ったといえるようなエピソードを「オカムラの仕事を訪ねて」と題し紹介します。みなさんが訪れたあの場所や空間に、場づくりの段階で実はオカムラも携わっていた……ということがあるかもしれません。


旅行やビジネス利用の宿泊先で、チェックイン前やチェックアウト後にスーツケースなどのかさ張る荷物を預けたいという人は多いはずです。そんなシーンでの荷物の預け方や受け取り方が、今後変わっていくかもしれません。オカムラでは、金融機関向けの全自動貸金庫システムや、物流の自動倉庫における搬送技術を応用して、自動搬送型荷物保管システム「BAGGAGE KEEPER(バゲッジキーパー)」を開発しました。省スペースと無人受付により効率化を図り、収納効率の向上や人手による手間を解消できることが特長です。

今回ご紹介するのは、湯元「花乃井」スーパーホテル大阪天然温泉(株式会社スーパーホテル)が、リニューアルを機にバゲッジキーパーを導入した事例です。導入によってもたらされた変化、オカムラが考えるこの製品の可能性などについて聞きました。
2024年12月取材

湯元「花乃井」スーパーホテル大阪天然温泉

大阪市阿波座にあるビジネスホテル。千日前線、中央線「阿波座駅」より徒歩約5分、京阪「中之島駅」より 徒歩約8分。地下1000メートルから温泉が湧き出ている本格温泉型ホテル。

https://www.superhotel.co.jp/s_hotels/osakaspa/

リニューアルを機に、荷物預かりの課題を解決

都市にいながら、地下1000mから湧き出る本物の天然温泉を楽しめる、湯元「花乃井」スーパーホテル大阪天然温泉。30年近い歴史があり、コロナ禍では宿泊療養施設として稼働した後、一時休館を経て2024年2月にリニューアルオープンしました。現在のホテルの稼働状況について、支配人の芦村 尚悟さんは次のように説明します。

「客室は388室あり、多くのお客様にご利用いただいています。最近は3~4割が海外からのお客様です。近隣には京セラドーム大阪や展示会や会議が開催されるグランキューブ大阪(大阪国際会議場)もあり、観光とビジネス両方の需要があります。リピーターも増えてきました」

湯元「花乃井」スーパーホテル大阪天然温泉 支配人 芦村 尚悟さん
湯元「花乃井」スーパーホテル大阪天然温泉 支配人 芦村 尚悟さん

海外からのお客様はリニューアル前から多く、チェックイン前やチェックアウト後に預かるスーツケースなどの荷物は増えていたそうです。従来は1階にあった会議室をバゲッジスペースとして、番号札で管理するという一般的な荷物預かりの方法をとっていました。

「平置きしかできず、収納量には限界がありました。また、見た目が似た荷物も多いので、預かり荷物が多いときは探すのに時間がかかり、お客様をお待たせしてしまうこともありました。預かるときも、荷物が複数個あれば紐でくくるなどの作業が追加で発生します。さらに、決められたエリアに入りきらない荷物はロビーの端に置くこともあり、美観を損ねるのも気になっていました。ネットなどを掛けてはいましたが、人目に触れる場所に置かれることを不安に思われた方もいたかもしれません」(芦村さん)
 
取材時もスーツケースや大きなキャリーバッグを持った利用者は多かった
取材時もスーツケースや大きなキャリーバッグを持った利用者は多かった
そうした課題を解決するために、リニューアルのタイミングでバゲッジキーパーの導入を決定。エントランス脇のスペースはもともと会議室があった場所ですが、お客様の利便性を優先し、思い切って転用したそうです。

「設置にあたって耐荷重などは考慮しましたが大きな問題はありませんでした。どの程度利用されるか、どれくらいのスピードで出し入れできるのかなど、正直実際導入されてみないと、事前にはなかなかイメージできなかったです。なによりも、省スペースで多くの荷物を預かれることや、人の手間が緩和されることへの期待が大きかったですね」(芦村さん)
エントランスを入ってすぐの場所にバゲッジキーパーを設置
エントランスを入ってすぐの場所にバゲッジキーパーを設置

収納数は117個(大型荷物78個、小型荷物39個)となり、リニューアル前からおよそ倍増。初めての方や高齢者の方には従業員が使い方を説明したり、規格外の大きさの荷物をバックヤードで預かったりすることはあるものの、預かる際に使い方の説明を受けたお客様が、取り出し時には自身で操作できるようになることも多く、以前に比べると対応時間は大幅に短縮したそうです。

「他店舗のスタッフが来ると『うらやましい』と言われます。手作業による万が一の取り違えなどの可能性がなくなり、常時見張っていなくてもよいのでセキュリティ面でも安心感があります。また預かり荷物がロビーのスペースを占めることもなく、美観的な面も大きいですね」(芦村さん)
 
「荷物管理の負担が軽減され、エントランスをすっきり保てるようになった」(芦村さん)
「荷物管理の負担が軽減され、エントランスをすっきり保てるようになった」(芦村さん)
利用率も高く、「リニューアルオープン直後の大阪マラソンのときは、ドームのイベントも重なり、小型荷物用のボックスが埋まりました。グランキューブ大阪での学会をはじめ、近隣施設でのイベント開催時にもお客様によく利用されています」と芦村さん。

2025年4月から始まる大阪・関西万博ではスーツケースの会場への持ち込みはできず、預かり数も限定されています。「バゲッジキーパーによって宿泊施設に気軽に荷物を預けられれば、混雑緩和につながるはずです。多言語に対応しているので海外からのお客様も使いやすいと思います」。ホテルとしても外国語対応ができる従業員の配置やピクトグラムなど多言語案内を進めており、バゲッジキーパーもその一助となっています。

現場の声で進化を重ねるバゲッジキーパー

バゲッジキーパーは、ホテルの従業員が介在してバックヤードに保管していた荷物預かりをセルフ化し、高さ方向に荷物を積み上げることで省スペース化を図るシステムです。金融機関向けの全自動貸金庫システムや物流の自動倉庫などを開発してきたオカムラの搬送技術がベースになっています。オカムラの担当の一人である、セキュリティシステム製品部の上野 敬介は、開発の背景を次のように説明します。
 

オカムラ セキュリティシステム製品部 金融セキュリティ開発グループ 上野 敬介
オカムラ セキュリティシステム製品部 金融セキュリティ開発グループ 上野 敬介

「製品の構想を開始した2018年当時は海外からの旅行者が激増していた時期です。海外からの観光客の荷物は大きくて重いことが多く、観光地や宿泊先での取り扱いも大変。街なかでも大きな荷物を持った旅行者を目にすることが増え、もっと気軽に荷物を預けられる環境が必要だと思ったのです。発売直後にコロナ禍に見舞われてしまい、インバウンド需要はなくなりましたが、非接触ニーズの高まりによって注目されることもありました。今は海外のお客様にも使われるようになり、反応を見ていると、空港の自動手荷物預け機のようなスマートな技術だと感じてもらえているようです」(上野)

今回の導入は、オカムラが各社に送ったダイレクトメールにスーパーホテル本部の担当者から問い合わせがあったのがきっかけです。フューチャービジネス推進事業部 営業推進部 新商材グループの小林 広弥は、早速ショールームを案内し、実物を確認してもらった上で、プランを提案。観光庁の「インバウンド受入環境整備高度化事業」の補助金の申請もサポートしながら導入を進めました。収納数やカラーは設置場所に合わせてカスタマイズができ、今回はエントランスになじむ黒を採用しています。
オカムラ フューチャービジネス推進事業部 営業推進部 新商材グループ 小林 広弥
オカムラ フューチャービジネス推進事業部 営業推進部 新商材グループ 小林 広弥

「要望を伺いながら、仕様を改善した点もあります。現場の声を聞くと、ほかのホテルでも同様の課題を抱えていると気づかされます。のちに標準化したものもあり、例えば収納数の残数表示機能もその一つ。残数がわかるほうがお客様に親切ですし、ホテル側は夜間に当日の荷物がゼロになったかを確認できます。そのほか運用開始後には、待ち時間の目安がわかるように内部のリアルタイム映像を映すモニターも追加しました」(小林)

お客様から事前に送られてくる荷物の保管にも利用しています。「キャリーバッグのほか、例えば、海外からのお客様がオンラインなどで購入した商品が先に届く、といったケースもあり、荷物の管理が煩雑でした。そうした荷物の保管用に開閉用カードを用意してもらい、チェックイン時にお客様にカードを渡して荷物を取り出していただく運用にしました」と芦村さん。これは当初は想定していなかった使い方ですが、相談する中で生まれた運用の工夫です。

駅や空港からの配送サービスとの連携もスタートします。空港や駅で預けた荷物がホテルへ届く、あるいはホテルで預けた荷物が駅や空港まで届くもので、すでにサービス自体は導入されています。現在は、ホテルの従業員と配送業者が受け渡しをしていますが、ここにバゲッジキーパーを活用します。

「バゲッジキーパーのカギとして機能するQRコードを配送業者と宿泊者で直接やり取りすれば、ホテルの従業員が介在せずに荷物の受け渡しができます。宿泊者はチェックアウト後にホテルへ預けた荷物を取りに戻る必要がなくなり、街で過ごす時間が増えるので、地域の消費拡大にもつながるでしょう。ホテルではチェックインのセルフ化も進んでいますが、荷物の預け入れはまだ人の介在が多く、ぜひここもセルフ化を推進していきたいです」(小林)
スマートフォンを使ってチェックインも自動化
スマートフォンを使ってチェックインも自動化
湯元「花乃井」スーパーホテル大阪天然温泉でも、リニューアルを機にスマートチェックインシステムを導入しています。荷物の配送については管理や計量などホテル側の作業が多く、特に海外からの旅行者は配送伝票を書くのも不慣れなことが多いため、配送サービスと直接連携できれば両者に大きなメリットがありそうです。
                                 

バゲッジキーパーギャラリー 

※スーパーホテル様の納入事例動画ではありません。


                                 

ホテル従業員の働きがいと顧客満足度ともに向上、「手ぶら観光」推進へ

今後、宅配便や各種配送との連携をはじめ、新しい使い方や役割が増えれば、荷物預かり業務にかかる時間はますます減り、注力できる業務の選択肢が広がります。

「スーパーホテルでは技術に任せられるところは採用して効率化し、その分、お客様とのコミュニケーションを大切にしたいと考えています。バゲッジキーパーを導入したことで、荷物預かりに伴う事務的な確認が減り、かわりに『どちら方面にお出かけされる予定ですか?』とか、『コンサートに行かれるんですね、楽しみですね』など、お客様との親しみが増すような会話が増えました。従業員も接客業ならではのやりがいを感じていると思います。実際にお客様からのアンケートでもポジティブな声が増え、さらにそれが従業員のモチベーションにつながるという好循環が生まれています」(芦村さん)
 
「お客様とのコミュニケーションを大切にしたい」(芦村さん)
「お客様とのコミュニケーションを大切にしたい」(芦村さん)

今後バゲッジキーパーのニーズはますます広がるだろうと小林はみています。「国は2030年に向けて訪日外国人旅行者を6000万人に増やす目標を掲げています。街なかの混雑緩和のためにも手ぶら観光の推進はさらに重要になるでしょう。また、多くの業界で言えることですが、ホテル業界も人手不足ですから、省人化への取り組みも欠かせません」
 
二人は、バゲッジキーパーが観光や物流の課題解決にも貢献できると話す
二人は、バゲッジキーパーが観光や物流の課題解決にも貢献できると話す

バゲッジキーパーが活躍できる場所はホテルに限りません。「理想はバゲッジキーパーが街のあちこちにあり、空港や駅、ホテルなどで気軽に利用できるようになることだと思っています。また、利用状況などを集計できるので、将来的にはデータを活用して出し入れが混雑する時間を事前に知らせるなど、運用の効率化につなげられるかもしれません」(上野)

芦村さんによれば、「もう少し小さいサイズもあると、さらに多くの施設で導入しやすくなるのでは」とのこと。「他のスーパーホテルでも導入できれば、従業員もお客様も利用する機会が増え、広まりやすくなるでしょう。オカムラのみなさんは相談にいつも前向きに対応してくれるのがありがたく、さまざまな提案を期待しています」

芦村さんの言葉を聞いて、上野は「現場の声から気づきを得られることが多く、標準の仕様にも反映してきました。ホテルでの荷物預かりについては、運用の全体像も見えてきたので、今後も改善を進めていきます」と応え、小林も「ホテルで働くみなさまや宿泊されるお客様の体験価値向上に貢献していきたいと思います」と続けました。
現場の課題を解決しながら、お客様を大切に思うスーパーホテルとオカムラの取り組みは続いていきます。
 
編集後記

今回の取材で印象的だったのは、荷物預かりの省力化が、それ以上の効果につながっていたことです。従業員がお客様とのコミュニケーションを楽しめるようになった結果、お客様からの満足度や評価も高まり、それがまた従業員のモチベーションアップにもつながるというのはまさに理想的な好循環であり、オカムラ宣言の「人を想い、場を創る。」ことだと感じました。配送サービスとの連携やデータの活用など、今後の展開にも期待が高まります。(編集部)
 

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