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ラボとオフィスを一体化!社員全員が共創する場で新しい働き方を実現!(株式会社サイフューズ)

2024.11.07

オカムラが宣言する「人を想い、場を創る。」―― オカムラはオフィスをはじめ商業施設、病院、学校、博物館や美術館、そして物流施設と多様な場づくりを展開しています。自分らしく「活きる」人を増やし、笑顔があふれる社会づくりの一端を担ったといえるようなエピソードを「オカムラの仕事を訪ねて」と題し紹介します。みなさんが訪れたあの場所や空間に、場づくりの段階で実はオカムラも携わっていた……ということがあるかもしれません。

 

オカムラの空間づくりの提案力は、研究者や技術者が働く場づくりにも活かされています。研究者の心身の健康に配慮し、働くモチベーションの向上やその組織のブランディングにも貢献していきます。今回ご紹介するのは、株式会社サイフューズが、今後の事業拡張を見据え、これまでラボとオフィスとが分かれていた東京の拠点を新たなコンセプトに基づいて「CYFUSE TOKYO」という新施設としてオープンした事例です。

オカムラではこの大型プロジェクトを企画から移転まで全面的にサポートしました。2022年に東京の研究施設(ラボラトリー、以下ラボ)とオフィスを一体化し誕生した「CYFUSE TOKYO」では、業務効率性やコミュニケーションの向上など、さまざまなコンセプトが実現しています。オカムラの新たな「場づくり」を通じて、サイフューズが実現した新しい「職場」について、それぞれの関係者に話を聞きました。
2024年7月取材

 

九州大学発!世界をリードする再生医療ベンチャー企業

九州大学発の再生医療ベンチャー企業として2010年に創業したサイフューズ。独自のバイオ3Dプリンティング技術を用いて、細胞のみからなる立体的な組織・臓器などの再生医療等製品を開発しています。サイフューズの秋枝 静香代表は、サイフューズが進める事業の社会的意義について次のように語ります。

「私たちの技術は、従来の治療方法がなかったところに、再生医療という新しい治療法の選択肢を提案できる、とても価値のあるものだと考えています。当社の製品はすでに人への移植を行う臨床開発の段階まで進んでいますが、ゲルなどの人工材料を用いない、細胞だけでできた立体的な臓器の移植に成功している事例は世界的にも例がなく、我々が先頭を走っている状況です。日本発の製品を海外へ展開していく新たな取り組みについては、国からもご支援を頂いており、これまでに文部科学省や経済産業省、厚生労働省の支援を受けながら製品実用化に向けた開発を進めてまいりました」
                        
株式会社サイフューズ 代表取締役 秋枝 静香さん
株式会社サイフューズ 代表取締役 秋枝 静香さん


サイフューズでは現在、神経・骨軟骨・血管の3つの製品について人への移植を行う臨床試験を進めています。たとえば神経を断裂してしまった患者に自分の細胞だけでつくった神経のチューブを移植すると、神経の再生が見られ機能も回復することが確認されています。骨軟骨の場合には、擦り減ってしまった軟骨は自然には再生しませんが、自分の細胞だけで作った骨軟骨を移植することで拒絶反応などのリスクも少なく再生が可能になっています。血管の場合も同様のアプローチが可能であり、現在は腎不全等で人工透析を繰り返し血管がダメージを受けてしまった患者に対して、自分の細胞でできた血管を移植する臨床研究が進められています。秋枝代表は「将来的には全身の臓器や組織を再生できると良いですね」と語ります。
 


ラボとオフィスのコミュニケーションや業務効率に課題

2022年、サイフューズは今後の事業展開と企業成長を見据え、これまで分かれていた東京のラボとオフィスの機能を新本社「CYFUSE TOKYO(サイフューズ東京)」に集約しました。オカムラはこの移転を全面的にサポートし、ラボとオフィスを一体化させ、機密性の維持と対外的な情報発信の拠点としての機能を両立した「クローズ×オープン」な環境を整備しました。
 
「CYFUSE TOKYO」は見学エリアからラボ内部を見ることができる
「CYFUSE TOKYO」は見学エリアからラボ内部を見ることができる

以前のサイフューズの東京の研究拠点は、大学構内の研究施設にラボを構えており、管理部門がいるオフィスから離れた場所にありました。この状況では、部門間のコミュニケーションが取りにくく、また研究拠点内でも実験室・居室・会議室が分かれていたため、研究者は実験や分析などの業務の都度移動が生じるなど、業務の生産性や効率性が課題となっていました。

取締役 CFO 経営管理部長の三條 真弘さんは移転の背景について、「今後の事業拡大に向けて、業務効率性やコミュニケーションのさらなる向上を図るため、オフィスとラボのような別個の施設の機能を集約する移転プロジェクトを発足し、以前からお付き合いのあったオカムラさんに声をかけました」と説明します。
 
株式会社サイフューズ 取締役CFO 経営管理部長 三條 真弘さん
株式会社サイフューズ 取締役CFO 経営管理部長 三條 真弘さん

オカムラの営業部門がメインで対応した移転を経て、現在移転後の調査研究を担当するのは、施設環境ソリューション事業部 ラボラトリー推進部の阿部 由紀子です。理系出身で大学院まで研究をしていた経験から、研究者が働くラボ環境にも一定の理解を示します。「一般的に研究者は実験が大好き。実験に没頭してラボにこもりがちな傾向にあります」との阿部の言葉に、秋枝代表もうなずきます。
 
オカムラ オフィス営業本部 施設環境ソリューション事業部 ラボラトリー推進部 プロモーション室 阿部 由紀子
オカムラ オフィス営業本部 施設環境ソリューション事業部 ラボラトリー推進部 プロモーション室 阿部 由紀子

阿部は研究者特有のコミュニケーション課題があるとみています。「研究者は、実験や機械で分析などをしている時間に、本来は自分の席で取り組める業務でも、移動の手間を惜しんですべて実験室内で行ってしまうこともあります。その結果、周囲とのコミュニケーションがとりにくくなってしまう傾向があるようです。ただ最近は、自身の研究分野を掘り下げるためにも、他分野の研究や異業種の方とコミュニケーションをとりたいという声を耳にすることも多くなってきました」

秋枝代表は、研究(培養)環境についても指摘します。「特に、移植用の細胞培養を行うときは、研究者は防護服を二重に着てクリーンルームに入り、密閉された空間で作業を行います。基本的には細胞の増殖に合わせてスケジュールを組み、ミスが許されない状況下で作業を継続して行うため、作業の後半になるにつれ疲労も溜まってきます。さらに、無機質で閉塞感があるような環境では、研究や培養に没頭したい思いがあっても、ストレスを感じやすくなります。そのため、クリーンルームの中を少しでも快適な空間にしたいという想いをずっと持っており、早くからオカムラさんら協業パートナーに相談をしていました」
 
お互いの研究者経験から、秋枝代表の語る研究者の働く環境に深くうなずく阿部
お互いの研究者経験から、秋枝代表の語る研究者の働く環境に深くうなずく阿部

サイフューズがラボとオフィスを一体化するにあたり、オカムラが提案で重視した点を阿部は、次のように話します。「実験と執務が安全に、スムーズに行える環境であること、それぞれの業務に集中して効率よく取り組めること、そしてチーム内、外部の方ともコミュニケーションが取りやすく、快適で心地よく過ごせる環境であることです。このような点をふまえ、営業担当者がメインとなり課題をうかがい、解決案を一緒に考えながら、オカムラとして提案をさせていただきました」

移転プロジェクトメンバーが語る「CYFUSE TOKYO」

完成した施設で特に目を引くのが、ガラス張りのラボです。サイフューズのラボは、細胞培養や製品製造を行う「クリーンルーム」、研究や検査・解析を行う「ウェットラボ」、バイオ3Dプリンタ等の装置や技術開発を行う「ドライラボ」という3つのエリアで構成されています。研究開発部のメンバーは当初、オープンな環境に戸惑いを感じたと言います。

「ラボ内の機密保持の観点からすると、ガラス張りのラボに最初は戸惑いがあったのは事実です。しかし、たくさんのメリットにも気づきました。ショールームのようなオープンラボは来社した人に私たちの取り組みを知ってもらえて、新しいアイデアの発信や協業がしやすくなり、それが事業成長にもつながります。さらに、開放感のある明るいラボで気分まで明るくなり、モチベーションも高まります。外部からの視線を意識することで、自分たちの働く場をキレイに保とうという意識が強くなったように思います」(研究開発部メンバー)
                   


一方、オフィスエリアで目を引くのは、オフィスの中心に据えたカウンタースペースです。「ここで昼食やおやつを食べたり、そこからちょっとした雑談が生まれたり、仕事中のリフレッシュになくてはならない場所になっています。また、モバイルロッカーの机上面を使った立ち会議もよく行われています。気軽なコミュニケーションを取りやすくなり、結果として業務効率が高まったのが大きな変化です」(研究開発部メンバー)

「ラボとオフィスが隣接しているので、部門間のコミュニケーションも取りやすくなりました。そうした中での会話が次の開発アイデアにつながることもあります」とメンバーも変化を実感しています。
 
社内だけでなく他社との交流にも使われるカウンタースペース
社内だけでなく他社との交流にも使われるカウンタースペース

オフィスエリアは、ABW(※)が取り入れられ、仕事の内容に合わせて場所を選べるようになっています。周辺の社員とコミュニケーションが取りやすいフリーアドレス席、リラックスしながらも集中して仕事ができるソファ席、機密性の高い話もできる「TELECUBE by OKAMURA(テレキューブ by オカムラ)」など、多様な働き方に対応できる環境が整っています。

※:Activity Based Workingの略。仕事の内容や目的に合わせてオフィス(オフィス外も含む)で「時間」と「場所」を自由に選択できる働き方のこと
 
モバイルロッカー机上面も打ち合わせに活用
モバイルロッカー机上面も打ち合わせに活用

移転プロジェクトには、現場で働くサイフューズの若手・中堅メンバーが研究・技術・管理部門それぞれから携わりました。その一人、経営管理部のメンバーは、オフィスワーカーの立場からプロジェクトに参加しました。「全員が快適に過ごせる空間にするために、導線やレイアウトの他にも、時間に合わせて照明を変更するなど運用の重要性や会社のブランディングとしてどこまでこのラボとオフィスが一体化した新施設をオープンに見せるか、アピールしていくかなど、移転プロジェクトに参加したことにより、いろいろな視点で考えられるようになりました。特に限られたスペースの中でのレイアウトや導線の検討は苦労したところです」と振り返ります。
 
オフィスとラボが一体化したことで利便性も大幅に向上しました。経営管理部のメンバーは、働く環境の変化による効果を次のように話します。
「以前はオフィスからラボまで徒歩で約10分。直接顔を合わせるのが久しぶりになってしまう、他部門の繁忙を理解する機会が少ないという課題もありました。今は同じ空間にいるので、互いの仕事の様子もわかりやすくなりました。業務が佳境になる時期にはさりげなく声をかけあうなど、少ないメンバーでのあたたかい気遣いを伴ったコミュニケーションが増えたように感じます」
 

研究者とオフィスワーカー、働き方を考えた空間づくり

移転プロジェクトを現場で働くメンバーに任せた理由について秋枝代表は、次のように話します。「実際に使う人達が快適だと思える場所になるのが一番良いと思ったからです。研究者は、細胞培養中及び製造期間中は出勤スケジュールも細胞次第。移植や出荷のスケジュールによっては、年末年始も関係なくなることもあります。このような状況では、やはり働く環境は大切です。メンバーは移転プロジェクトを通じて、労働環境を整備することの重要性や研究施設のファシリティに関する知見も深まり、そして他社との協業を通じて、さまざまなコミュニケーションを取ることで、自身の成長と会社及び業務への意識向上につながったのではないでしょうか」
 
「環境整備は、一緒にチャレンジする仲間を大切にする面からも大事だと考えています。人財は宝です」(秋枝代表)
「環境整備は、一緒にチャレンジする仲間を大切にする面からも大事だと考えています。人財は宝です」(秋枝代表)

こうした環境の整備は、組織の一体感醸成に寄与する面もあるようです。
「私たちの事業はずっと変わらず、『患者さまへの治療法の選択肢をひとつでも増やすこと』。それがメンバーにとっても仕事をする上での喜びややりがいとなっていると思います。長い研究開発期間を経て、この喜びややりがい、成功体験を研究者だけでなくエンジニアもバックオフィスメンバーも全員で実感できることが大事であり『CYFUSE TOKYO』で社内のコミュニケーションの機会が増えたことはその一助になるはずです。今後は細胞培養の自動化やDX化を進めて、例えばスマートフォンなど遠隔でラボや細胞の状況を確認できるようにしたいですね。研究者が都度、二重の防護服を着てクリーンルームに入らなくても細胞培養の様子などを確認できれば、患者さまも医療機関も弊社で働くスタッフも関係者一同、スムーズに情報を共有できるようになり、苦楽と喜びも共感することでTeamでの事業をより加速できるのではないかと思っています」(秋枝代表)
サイフューズでは研究者、エンジニア、オフィスワーカーの誰もが「自分ごと」として事業全体と向き合い、事業について同じ想いを共有することを目指しているそうです。

もちろん、研究者とオフィスワーカー、エンジニアでは業務内容が異なるため、全員が求めるものを一体化した施設には、「ハード面だけではなく、ソフト面も大事」と話すのは三條さんです。
「研究者とオフィスワーカー、エンジニアという働き方が異なる職種を一体化した施設ができたことで、コミュニケーションが円滑化し、よりやりがいを持って働きながらそれぞれの創造性を発揮しやすい環境となりました。これは『人を想い、場をつくる。』を掲げているオカムラさんと一緒に取り組んだからこそ実現できたことだと思っています」
 
「せっかく良い什器があっても、どう使うか、使われるかまで考えられていなければ働く場に活かされない」(三條さん)
「せっかく良い什器があっても、どう使うか、使われるかまで考えられていなければ働く場に活かされない」(三條さん)

移転をきっかけにサイフューズとオカムラは共同プロジェクトを立ち上げます。「私はこのタイミングからサイフューズ様とお付き合いさせていただいています。実際に働き方がどう変化したか、課題点が改善されたかなどの追跡調査を行い、レポートをまとめました」(阿部)

レポートでは、「(移転後の)職場環境が仕事のモチベーション向上に影響を与える」と考える人の割合が研究者の89%、オフィスワーカーの83%に達しました。主な理由として、フリーアドレスや空間の快適さ、コミュニケーションの取りやすさなどが挙げられています。また、他部門のメンバーとの職場でのコミュニケーションについては、「取れている」と答えた研究者が89%(56ポイント増)、オフィスワーカーが84%(84ポイント増)と移転前と比較して顕著な改善が見られました。こうした結果は、移転がモチベーション向上やコミュニケーション促進に大きく寄与したことを示しています。

「調査項目を一から検討するなど、双方で苦労して作り上げました。お客様から調査にご協力いただける機会は貴重でありがたいですし、常によりよい働く環境を考え、前向きに取り組んでいる姿勢に私たちも刺激を受けています。オカムラでは他にも全国の研究者を対象にした複数の調査を実施し、その結果を『ラボラトリーサーベイレポート』として公開しています。現状、研究者同士がお互いの働き方を知る機会は限られています。こうした調査やレポートが、研究者にとって自身の働き方に目を向けたり、新しい働き方を考えたりするきっかけになればと考えています」(阿部)
 
「ラボとオフィスを作って終わりではなく、オカムラさんはそのあとも伴走してくださり、共に寄り添ってくださります」(秋枝代表)
「ラボとオフィスを作って終わりではなく、オカムラさんはそのあとも伴走してくださり、共に寄り添ってくださります」(秋枝代表)
研究や業務自体は、移転に関わらず以前から変わらないものではありますが、環境を整備することは製品の品質、企業の価値向上にもつながると秋枝代表は考えています。「やっぱり細胞も生き物ですから、愛情を持って手をかけると、よりよい成果につながると思います。研究者が心豊かに、常に愛情をかけて細胞を取り扱うためにも働きやすい環境は大切です」

サイフューズは将来的には海外進出も視野に入れています。秋枝代表は、「この『CYFUSE TOKYO』のようなラボとオフィス一体化の展開を含め、次のステージに向けても、オカムラさんのサポート、協働を期待しています」と語ります。

「今後、共同プロジェクトとして、働く場や働き方などを考える新たな取り組みを企画中です。これからも研究者が力を発揮できる、そしてラボに関連して働くすべての人にとって最適な環境について一緒に考え、『人が活きる社会』を実現させていただけたらと思っています」(阿部)

編集後記

研究者とオフィスワーカー、エンジニアという異なる働き方の人がともに働き、コミュニケーションと業務効率を向上させることに成功したサイフューズ。適切に設計されたラボやオフィスは企業の成長やサイフューズ全員のモチベーション向上に大きく貢献することが、今回の取材や調査結果から明らかになりました。
オカムラ宣言の「人を想い、場を創る。」に共通する姿勢が、サイフューズの「CYFUSE TOKYO」からも感じ取れたように思います。(編集部)


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