予測が難しく、変化が著しい現代。次々と生まれる新しいニーズや課題に素早く柔軟に対応するためには、デジタル技術を活用して、社会の変化に合わせてトランスフォーメーションを行うことが欠かせません。経営理念「オカムラウェイ」の根幹にある「人が活きる」という考えに基づいた、オカムラのDX戦略や取り組みをご紹介します。
DXリテラシーの高い従業員を育成することで、現場からDXアイデアが湧き上がる文化を醸成することを目指した社内の取り組み「DXLP」。ここでの提案から生まれたプロジェクトの一環として、2024年4月23日に社内イベント、題して「真剣しゃべり場『若害vs老害』編 ~覆面討論!世代間ギャップの本音に迫る~」が開催されました。プロジェクトリーダーのWORK MILL統括センター 前田 英里に、イベントの模様をレポートしてもらいました!
WORK MILL統括センターの前田です。「最近の若者は常識が通用しない!」「ベテラン社員は考え方が古臭い……」など、世代の異なる相手と仕事をする中で、ギャップに困惑した記憶はないでしょうか?メディアではこうした世代間ギャップを「若害」「老害」という言葉で一括りにして、ことさら対立を煽っているようにも見えます。
ただ実際は、職場で無用な波風を立てないために本音をグッと飲み込む……。そうしたオトナな対応をしている方が多いのではと思います。正直なところ、部下から上司には立場的にも言いにくいですし、上司から部下にもハラスメントを考えるとやっぱり言いにくい。結果として、「あいつは若害/老害だ!」と型にはめた愚痴を言うことはあっても、モヤモヤは解消されないままくすぶり続けているかもしれません。
ではもし、そのモヤモヤを「安全に」共有できる場があるとしたら?
普通なら言いにくいことを言え、聞きにくい本音を聞けるとしたら?
無いならつくってみよう!! ということで実現したのが、社内イベント「真剣しゃべり場『若害vs老害』編 ~覆面討論!世代間ギャップの本音に迫る~」です。
こちらのイベントは、「メタバウスパ(仮)」というDXLPプロポーザルから生まれた取り組みの一環です。デジタルを活用して、部門や距離の垣根を越えたコミュニケーションの活性化、さらにはその先にある価値をめざし、多様なイベントや活動を企画・運営しています。DXLP1期生と2期生、そして有志メンバーが一緒になって活動中です!
――という開催背景はこのくらいにして、さっそく本題へ移りましょう。
DXLPとは?
オカムラグループ内の幅広い領域でDXリテラシーの高い従業員を育成することで、現場からDXアイデアが湧き上がる文化を醸成することを目指した取り組みです。各自が日々の業務で感じている課題に照らし合わせて、どのようにデジタルを活かしていくことができるかを考えることで、ただD(=デジタル)を学ぶだけではなく、X(=トランスフォーメーション)を生み出すことを目的としています。
DXLPでは約半年間の学習の成果として、デジタルを活用した業務改善や新しいビジネスのアイデアについて提案する「DXプロポーザル」の提出が必須です。なかでも特に優れたものは社長・役員へのプレゼンを経て、実現に向けてプロジェクト化しています。2021年のスタート以来、「日々の業務を理想の形に変えたい」「新しい価値を生み出したい」という想いを持つオカムラ従業員ならではの発案により、たくさんの成果が生まれています。
メタバースが生み出す「覆面」効果
今回の醍醐味は、何と言っても「メタバースを使った覆面座談会」だということ。全員カメラOFF&匿名(ニックネーム)&アバターで参加するため、リアルに会って話す場合と異なり、相手の顔も名前もわかりません。メタバースを通して覆面状態にすることで、肩書きも人間関係への影響も気にせず本音を出せる環境にしています。声バレが心配な人は、チャットで意見を投稿できるようにしました。
そしてもちろん、安心安全な場づくりのため、これだけは守る「グランドルール」も最初にしっかり確認しておくのが大事です。
あなたは「若者」? それとも「ベテラン」?
みんなでルールを確認した後は、いよいよグループ対話へ突入します。
まずは第1ターム「自分の本音を出す」。若者同士、ベテラン同士でそれぞれ集まって、普段感じていることや疑問に思うことを存分に吐き出します。
ここで少々問題になるのは、いったい自分は「若者」なのか「ベテラン」なのかということ。もちろん年齢で分けることもできますが、それでは単純すぎますよね。そこで、参加者には前もって5つの質問に答えてもらいました。
例えば、こんな場面。あなたならどちらに共感しますか?
山口さんの部署に配属された、たった一人の新入社員であるクマモト君。歓迎会を開催したところ、肝心のクマモト君は挨拶もそこそこに帰宅してしまいました。
山口さん 「歓迎会で同僚とコミュニケーションを取れば仕事にも役に立つのに。出席しないなんて意味がわからない……」
クマモト君 「コミュニケーションは飲み会以外でも取れるはず。飲み会を強制するなら残業代出してほしい」
山口さんに全面賛成の人もいれば、絶対クマモト君派という人も、両方に共感できてすぐには答えられない人もいるでしょう(悩むように作ってあります笑)。こうした考え方・感じ方は、必ずしも年齢で分かれるとは言えません。20代で「老害」的な感覚を持っている人もいれば、その逆もまた然りなのです。
だからこそ今回は、上のようなアンケートでどちら寄りの感覚かを直感的に答えてもらい、その結果にもとづいてチーム分けを行いました。実際に内訳を見てみると、若者チームにもベテランチームにも20~40代まで幅広い年齢層の方が参加しています。
飲み会はギャップの宝庫?! ベテランのお悩み
お待たせしました。まずは第1ターム。ベテランチームの様子を見てみましょう!
おや……? なんだか皆さん大人しい。遠慮気味なのか、なかなか発言が出ませんね。
でも大丈夫です! しばらくして一人が口火を切ると、他のベテラン勢からも少しずつ言葉がこぼれ出てきました。
まず話題に上ったのは、「どんなときに世代間ギャップを感じるか」。中でも、飲み会での記憶が強く思い出されるようです。
「最近若手が企画した飲み会に参加したとき、『主役の挨拶のタイミング』とか『座席の上下』といったマナーを知らないのでは? と感じてしまった」
「マナーを教えるとハラスメントだと思われそうで、言えない」
ベテランの間では常識のビジネスマナー。コロナ禍の影響もあって、これまでは順当に若手から次の若手へと受け継がれていたものが断絶してしまっているのかもしれません。「自分の若手時代は飲み会のセッティングを通して教えてもらったこともたくさんあるのに、このままで大丈夫なのか?」という心配がひしひしと伝わってきます。
ここまではギャップを感じたときの話ですが、そもそも「ギャップに気づけないこと自体が怖い」との声も。確かに、自分ではギャップを感じていないにもかかわらず、若者側から見ればギャップだらけだったとすると、恐ろしいことですね。
全体的にベテランチームの皆さんは、自身の思いをきちんとオブラートに包んでから外へ出している様子。さすがベテランとも言える大人な態度ですが、言いたいことが本当に言えているのか少々心配になりました。
ここで最初のタームは終了。第1タームで出た意見や質問は、ファシリテーターが代弁者となって、次のタームで相手チームへ伝えます。
「イマドキの若者」が語る胸の内とは
第2ターム「相手の本音を知り、自分の本音を返す」では、相手チームで出た意見や質問を聞き、そのうえで考えたこと・感じたことを自チーム内で出し合います。それでは、ベテランチームの言葉を携えて、今度は若者チームに潜入です!
例えば「入社1年未満での転職」について。こちらは事前アンケートでも触れた話題なのですが、ベテラン側から出た「1年未満しか仕事をしておらず、周りのサポートを受けなければならない状態で転職してもちょっと……」という意見に対して、怒涛の反論が押し寄せてきました。
「そんなことはわかっている。心のうちにとどめておいてほしい。他の人が口を出すことじゃない」
「3年間やったらよくなるわけでもないだろうに。自分で考えて決心しているのだから問題ない」
「転職した人が『1年以上いたほうがいい』というのなら、素直に聞く。転職してもいない人が言うことではない」
結構な鋭利さですね。震えます。
という個人的な感想はさておき、こうした言葉が出てくるのは真剣にキャリアを考えているからこそ。慣例にとらわれず、デメリットも加味したうえで、さまざまな選択肢を持つ。そんな柔軟で力強い「イマドキの若者」の姿が見えてきます。
続いては、またもや「飲み会」の話題です。ベテランからの「部門内の勤務時間外のコミュニケーション(歓送迎会など)は無駄だと思いますか?」という質問に対しては、若者チーム内でもさまざまな意見が出てきました。
「必要なら仕事をするのが組織の人間なので、飲み会に左右されるほうがナンセンス」とバッサリ切り捨てる人もいれば、「無駄ではないと思うけど、仕事の話はしたくない。仕事に関係ない趣味の話などがいい」という人も。
さらには「『じゃ、雑談しましょう』と言っても話しにくいので、自然と仕事の話になってしまう」「何を話したらいいかわからず気まずいから行かない」など、話題が無いせいで雑談に困ってしまうという声が多く聞こえてきました。職場の人と「共通で話せる何か」が仕事しかないというのは、意外と深刻な問題なのかもしれません。
こうして盛り上がっているうちに時間は経ち、まだまだ話は尽きませんが次のタームへ移ります。
実はお互い様? 若者・ベテランに共通する課題感
ついに若者とベテランが相対する時を迎えました。最後となる第3タームでは、これまでのすべての話を受けて、若者もベテランも一緒になって対話します。
飲み会での雑談について、さきほど若者側でも「話す内容に困る」という話が出ていましたが、同じ悩みはベテラン側も感じているようです。
「何を話していいか分からなくて、仕事の話しかできない。変にプライベートのことを聞いてもハラスメントとか言われそうだし……」
「若い子と会話が続かなくて、仕事の話からの昔の話になってしまう」
上司の昔話や武勇伝に辟易するというのはよく聞く話ですが、あの振る舞いの裏側に、まさかこんな葛藤を抱えているとは。内心困っているのはお互い様だと思うと、「なんであの人は○○なんだろう、もっと△△してくれたらいいのに……」と相手ばかりに責任を押し付けるような考え方は改める必要がありそうだと自戒しました。
そして、もう一つ意見が集まったのが、マネージャーのあり方について。
「プレイヤーがマネージャーになったからといって、マネジメントはできていない気がする」
若者からベテランへ、刺すような指摘が突きつけられます。いま目を背けたあなた、ひょっとして心当たりが?笑
これに関しては「たしかに優秀なプレイヤーと優秀なマネージャーに求められる資質は違う。優秀なプレイヤーだった人がマネジメントしても、初心者だから、適切なマネジメントなんて急にはできないよね」と、ベテラン側からも肯定する声が出てきました。
この課題自体は世代を問わず認識していて、やはり頭を悩ませているということなのでしょう。
世代で一括りにせず、「その人」と向き合う
これまでピックアップした以外にもさまざまな意見が出てきた中で、とくに印象的だったものがこちら。とあるベテランの参加者が、チャットに投稿した一文です。
まさしくその通りだと思います。世代間ギャップと言いつつも、本当は「若者」「ベテラン」と一括りにすること自体に無理があって、若者にもベテランにも多様な考えを持った人がいる。さらには、一人の人間の中にも白黒つけられないグラデーション部分がある。こうしたことが、今回の対話を通してじわじわとわかってきた気がします。頭でっかちになりすぎず、いろんな方と話してみることが、実感を伴う理解や発見につながってくるのだと強く感じました。
参加者の方々からも、こんな感想が。
「メタバース空間なので身バレに関して意外と気にせず参加できました」
「面白かったですし、直接話してみたいと思えるくらい共感できるメンバーでした」
「ベテラン勢が優しくてびっくりしました。もっと文句を言われると思っていました」
「他の人のことを理解するのは難しい」
(振り返りアンケートより)
今回は「若害VS老害」というテーマでイベントを開催しましたが、今後も興味を持ってくれる人を巻き込んで、さまざまな切り口で本音を語り合う場や、部門や距離の壁を越えてつながる機会をつくっていきたいと考えています。
メタバースを活用した有志による社内イベントの模様を、企画メンバーのリーダーよりお伝えしました。「若害」も「老害」も、お互いが思うことを自由に発信できるのは、メタバースという環境が大きかったことがよくわかります。オカムラの直接のビジネスにとどまらず社内コミュニケーション活性化にもDXが寄与していること、またさまざまな側面からDX活用を提案し実践するオカムラメンバーが増えていることを、頼もしく感じました。「真剣しゃべり場」イベントは継続予定とのこと、今後の話題も楽しみです!(編集部)