予測が難しく、変化が著しい現代。次々と生まれる新しいニーズや課題に素早く柔軟に対応するためには、デジタル技術を活用して、社会の変化に合わせてトランスフォーメーションを行うことが欠かせません。経営理念「オカムラウェイ」の根幹にある「人が活きる」という考えに基づいた、オカムラのDX戦略や取り組みをご紹介します。
今回は、2024年4月15日にオカムラの共創空間・Open Innovation Biotope “Sea”で行われたイベント「DXプロジェクトをボトムアップで創出する仕組み ~DXLPから生まれた業務改善/新規事業の現在~」についてイベントに登壇したメンバーよりレポートします。
オカムラ DX戦略部
DXアカデミー担当
施工部門でのAV・ICT・内装の手配・工事管理や、共創型コワーキングpoint 0 marunouchiの担当などを経験し、現在はDXLPの運営を担当。
こんにちは。DX戦略部の宇高です。このイベントでは、オカムラのDX人財育成の取り組みの一つである「DXラーニングプラットフォーム」(通称DXLP)と、DXLPから生まれたプロジェクトを紹介しました。
取り組みを紹介するにあたり、ゲストとして一般社団法人チャレンジドLIFE代表の畠中 直美さんをお迎えしました。オカムラからは、DXLP第1期メンバーであり、現在自分で提案したプロジェクトを担当業務として推進しているメンバーが登壇。私もDXLP運営担当として参加しました。
畠中さんとDXLPのメンバーで、キャリアを主体的に捉えることの重要性や、DXLPに参加してプロジェクトを推進してきた想いなどについて、語り合いました。一緒に登壇したメンバーを紹介します。
一般社団法人チャレンジドLIFE 代表
チャレンジドLIFEの活動とともに、キャリアコンサルタント、ダイバーシティコミュニケーターとして、企業・官公庁での研修講師、コンサルティングを行う。また、企業と企業、企業と学校をつなぐ様々なプロジェクトの立ち上げに関わるとともに、今シーズン放送の日本テレビドラマ『厨房のありす』に取材協力という形で脚本制作の過程から関わるなど、多岐にわたり活動中。
オカムラ オフィス環境事業本部
事業戦略部
セールスナレッジ推進グループ
DXLP第1期生。15年間営業職を経験後、DXのプロジェクトを専任で推進するため現部門に異動。異動前の1年は営業職と本プロジェクトを兼務した。
髙塚 佑介(右)
オカムラ オフィス環境事業本部
営業支援部 第一営業支援センター
DXLP第1期生。営業を担当後、17年にわたり見積作成業務に従事。現在は営業支援センターのマネジメント業務とDXのプロジェクトを兼務。
オカムラ DX戦略部
先進テクノロジー共創担当
DXLP第1期生。営業、社内監査、業務統括など複数部門の業務経験を経て、DXLPでメタバース参入を提案。2023年7月に現部門に異動。
DXLPとは?
オカムラグループ内の幅広い領域でDXリテラシーの高い従業員を育成することで、現場からDXアイデアが湧き上がる文化を醸成することを目指した取り組みです。各自が日々の業務で感じている課題に照らし合わせて、どのようにデジタルを活かしていくことができるかを考えることで、ただD(=デジタル)を学ぶだけではなく、X(=トランスフォーメーション)を生み出すことを目的としています。
DXLPでは約半年間の学習の成果として、デジタルを活用した業務改善や新しいビジネスのアイデアについて提案する「DXプロポーザル」の提出が必須です。なかでも特に優れたものは社長・役員へのプレゼンを経て、実現に向けてプロジェクト化しています。2021年のスタート以来、「日々の業務を理想の形に変えたい」「新しい価値を生み出したい」という想いを持つオカムラ従業員ならではの発案により、たくさんの成果が生まれています。具体例として、今回のイベントに登壇した福永・髙塚が担当する見積作業軽減化に向けた「Smart Sales DX」や、灘地が携わるメタバース事業にむけた取り組みなどがプロジェクト化され実施されたり、事業化に向けて検討されたりしています。
キャリア・オーナーシップの重要性
イベントの冒頭、畠中さんから「人財育成に必要なポイント」について講演いただきました。以下、内容を紹介します。
畠中さんは、「さまざまな面で右肩上がりに成長してきた今までの時代は、経営層が正解を知っていることが多かったため、若手従業員には上司の指示を忠実に遂行することが求められていた」とおっしゃいます。
しかし、今は成熟した時代となり、答えを持っているのは、お客様だと考え方は変わってきたそうです。「環境が激変する中で顧客に近い現場で働くことが多い、おもに若手の従業員こそが、正解のヒントとなる情報を得る立場となったのです。得た情報を共有し、それを経営に対して提案し反映させることが求められています」(畠中さん)
そこで今、重要になっているのが、自身のキャリアにオーナーシップを持ち、主体的・能動的にキャリア開発をする「キャリア・オーナーシップ」の考え方です。「そのためには、そもそも自分が何をしたいのかを自己認識することと、環境や社会へ自ら適応していく力が必要となります」(畠中さん)
このように、畠中さんからはキャリア・オーナーシップが生まれるきっかけや、続いて自分が主導権を持って能動的に取り組むことで仕事が面白くなったという事例をいくつも取り上げて、DXLPもキャリア・オーナーシップにつながる取り組みであることを説明いただきました。
オカムラ登壇メンバーからは、私からDXLP概要を、DXLPでの提案から生まれ、福永と髙塚がリーダーを務めるオフィスの見積自動化をめざす「Smart Sales DXプロジェクト」、灘地が携わるメタバース関連プロジェクトや企業公式3Dデータ販売サイト「RoomieTale」などについて紹介。その後、全員でクロストークを行いました。
やりたいことを進めるために必要なこと
続いて、クロストークの様子を紹介します。
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畠中:DXLPに参加したことで、自分の考え方や、周りの環境に変化はありましたか?
福永:私は営業支店から事業戦略部へ異動したので、まずこれが大きな変化でした。営業を担当しながらずっと抱えていた課題の一つをDXLPで解決しようとしていますが、他の課題もまだまだ残っています。今年の繁忙期にヘルプという形で営業支店の現場に一時戻っていたのですが、営業を担当していた時は当たりまえだと思っていた業務フローに大きな違和感を感じ、異動したことで視座が大きく変わったと気づきました。今の部門でそういった課題を解決できる業務に携わっているので、これからもいろいろなプロジェクトを立ち上げて改善したいです。
髙塚:自分の業務に関連して今日のようにイベント登壇すること自体、これまではなかったことです。DXの知識を得られたと同時に、視野が広がりました。私が所属する部門は比較的受け身のスタンスの業務、というイメージを他部門だけでなく部門メンバー自身にも持たれているようです。ですが、「今の仕事や部門では新しいことに挑戦できない」とか「他部門のあの人はかっこいい仕事をしていていいな」と捉えて諦めないでほしいんです。私がDXLPや関連プロジェクトに参加することで、やりたいことを実現できる、自分でチャンスを掴めるということを伝えられたらと思います。
灘地:仕事の内容自体が今までとは全く違って、手探りではありますが、それがとても面白いです。今日は、人とのつながりができたという点にフォーカスして伝えたいのですが、DXLPに参加して、生産本部や商環境事業、物流システム事業など、自分が所属する事業部を超えた接点ができました。DXLPには自ら率先して手を挙げて参加する、熱意も能力もある人達が集まるので、社内にこんなすごい人がいたんだという発見がありました。
宇高:DXLP運営をやってきて、高い志と能力を持つ人達がこんなにたくさんいるのだと、私も感じています。頭が下がると同時に、とても心強く、自分も頑張ろうと勇気をもらっています。
畠中:今は異動してDX関連業務を専業にしている方もいますが、本業を抱えながらプロジェクトを進行してきた時期もあったと聞きました。大変なことだと思いますが、乗り越えてきた秘訣や、意識していたことを教えてください。
灘地:どうやって時間をつくったかというと、正直、残業するしかなかったです……。でもDXLPから出たプロジェクトは、自分のアイデアが新規事業になるとか、業務改善になるといった大きなモチベーションがあるので、私は全然苦しくなかったです。
福永:私も灘地さんと同じで、めちゃめちゃ大変でした。でもこれはずっとやりたかったことで、大きな熱量があったので、進んでこられました。今振り返っても、やってよかったなと感じています。
髙塚:私は今も兼業しながらですが、マネジメントの立場として、このプロジェクトでどのような効果が出るのか、今の業務がどう効率化するのかといったことを、メンバーに意識的にフィードバックするようにしています。また、メンバーの改善要望をダイレクトにプロジェクトに反映させることも心掛けています。
畠中:誰も達成できなかった新しいことをやるというのは、本当に大変なことだと思うのですが、それを超えるだけの熱量が皆さんにあったのですね。ただそうは言っても、私はこのようにはなれないとか、今はやりたいことが具体的になっていない、という人もいると思います。そんな人に向けて背中を押せるような言葉や考えがあれば教えてください。
髙塚:私にはアイデアが思い浮かばない、という人もいるかもしれませんが、仕事で使う業務フローやシステムに対して、誰でも何かしらの不平不満や愚痴はあるはず。それがアイデアの種になると思います。また、性格的にリーダーとして進めるのは難しくても、サポーターなど、いろいろな役割があります。チャンスは順番に回ってくるのではなく、自分から行かないと掴めないものです。機会を利用して自らチャレンジすることで、新しい展開につながるはずです。
福永:声をあげること。この一択だと思います。私もそうなのですが、社内には内向的な人も多く、内に秘めたものがあってもなかなか外に出さない人が多い印象があります。でも思っていることを自分から言わないと、周りには伝わりません。「私はこれがやりたいです」と言い続けることで、すぐには無理かもしれませんが、誰かが見てくれていて、しかるべきタイミングで声をかけてくれることもあります。声を上げるだけならスキルは必要なく、誰でもチャンスがあります。ぜひ声をあげていただければと思います。
灘地:DXを進めるために必要な人財像の一つに、「熱意のある若手」という役割があります。その分野に詳しいスペシャリストや、理解ある上司ももちろん必要ですが、「私はこれがやりたいです」と熱意をもつ人が上層部に訴えて初めて周囲の人が動き、組織が動きます。これは現時点でスキルがなくても、誰でもなれる役割です。また今はVUCAの時代で、今までの常識に従ってものを作っているだけではなく、ゲームが好きとか、写真撮影が好きとか、個人の趣味のニッチな部分を仕事に活かして、商品やサービスを生み出すという観点も必要だと思います。私には特別なスキルがないと考えてしまうのではなく、これが好きという分野を活かし、熱意を持って前に出ていくことが大事だと感じています。
宇高:やりたいことが見つからないという人もいるかもしれませんが、DXLPのように、平常業務とは少し離れたところで他事業部など普段関わらない人たちと活動していく中で、「そういえば自分はこういうことをやりたかったんだ」と思い出したり、「これをやってみたい」と発見したりすることもあると思います。たくさんの人にDXLPに参加してもらいたいです。
畠中:ありがとうございました。今日はオカムラ以外の人にも大勢参加いただいていますが、それぞれの所属組織で、不満が何もないという人はいないと思います。その不満の種をこのように能動的に組み上げることで、それぞれの組織にとってのチャンスにつながると思いますし、働く本人のキャリア・オーナーシップや前向きなキャリアにもなっていくはずです。こういった取り組みが、多くの組織で広がっていくといいですね。
イベントを終えて
自らのキャリアに主導権を持って仕事を進めているメンバーが活き活きと話す姿を見て、想いを持った従業員がチャンスを掴める場にするために、DXLPをより広く、深く、おもしろいコミュニティにしたいと気持ちを新たにしました。
これからもオカムラのDXの取り組みについて社内外に発信していきたいと考えています。トランスフォーメーションしていくオカムラに、ご期待ください!