オカムラは、お客様の“ありたい姿”を共に見つけ、それを「はたらく場」という形にします。今回ご紹介するのは、沖縄セルラー電話株式会社のオフィス全面リニューアルです。同社では、2022年の創立30周年を機に、さらなる成長と今後の30年を見据えて「沖縄セルラー新働きかた宣言~Challenge2.0~」を発表し、新しい働きかたに対応するオフィスの全面リニューアルを行いました。
2024年4月にはリニューアルした本社ビル「沖縄セルラービル」が、国内最高ランクとなる「WELL Building StandardTM v2(以下、WELL認証v2)」の認証ランク「プラチナ」を取得しました。オカムラはこのリニューアルで、オフィスづくりの考え方や空間デザインの提案・支援を担当しています。沖縄セルラー電話が“ありたい姿”とそれをサポートするオカムラの想いを紹介します。
WELL認証とは
人の健康とウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好であること)に影響を与えるさまざまな機能をパフォーマンスベースで測定・評価・認証する評価システムです。米国の公益企業IWBI(The International WELL Building Institute)により2014年にスタートしました。10のコンセプト(空気、水、食物、光、運動、温熱快適性、音、材料、こころ、コミュニティ)に基づき、書類および実地の審査を実施。評価ポイントによってランクが決まります。リニューアルした本社ビルが「WELL認証プラチナ」を取得
沖縄セルラー電話株式会社は、「沖縄のために」という声から生まれた総合通信会社です。1990年に、後にKDDIとなる第二電電企画の会長だった稲盛和夫氏が「沖縄のための携帯電話会社をつくる」と発言したところ、県内の多くの企業が賛同し、翌1991年に誕生しました。その想いは現在まで引き継がれており、「事業を通して、沖縄経済の発展に貢献する」など経営理念にもよく表れています。
創業30年を迎えた2022年には、今後の30年を見据えて「沖縄セルラー新働きかた宣言~Challenge2.0~」を発表し、働きかたを変革して沖縄をけん引するトップ企業を目指す姿勢を明確にしました。また、社長を室長とする「ウェルビーイング室」も設置しました。こうした動きの背景を沖縄セルラー電話株式会社(以下沖縄セルラー)コーポレート本部 総務部の松本 和也さんは次のように話します。
「コロナ禍では最大約9割の従業員がテレワークを活用し、ハイブリッドな働きかたへの対応は急務でした。また、数年前から新卒採用だけでなくキャリア採用も始め、人への投資の必要性も高まっていました。より多様な人材を採用し、働き続けてもらえるよう、新人事制度の導入やオフィス環境整備を進めていくことになったのです。ウェルビーイング室を人事の一部門ではなく社長直下の組織にしたのは、会社をあげて取り組むためです」
沖縄の労働生産性や県民所得は全国的に見ると低い水準に留まっており、行政も民間企業もDXや働きかた改革への課題感を強く持っています。とくにDXは通信会社である沖縄セルラーができることも多い分野です。「これまでの30年、沖縄県内の多くの企業に支援していただきながら経営を続けてきました。ここからはさらに沖縄経済をけん引していきたいと考えています」(松本さん)
本社ビル「沖縄セルラービル」は2013年に新築し、2022年に全面リニューアル。2024年4月には、WELL認証v2の認証ランク「プラチナ」を取得しました。「WELL認証の存在は、2022年末に東京の丸の内にある、point 0 marunouchi(※1)を見学して知りました。新しい働きかたに向けた取り組みとの親和性が高く、また対外的にもアピールできると考え、取得を目指すことにしました」(松本さん)
※1:オカムラをはじめ、多くの参画企業による協創/共創を目的としたコワーキングスペース。2019年オープン。詳しくは、こちらの記事を参照。
WELL認証の評価ランクは、加点獲得点数に応じてブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナと決まります。沖縄セルラーが取得したプラチナは80点以上が対象。同社の加点獲得点数は97点で、これは過去に国内で公表された中で最高の点数でした。
記者発表も実施
沖縄県初のWELL認証v2「プラチナ」取得について、沖縄セルラーとオカムラが共同でニュースリリースを発信。2024年4月26日には沖縄セルラービルにて、報道各社向けに記者発表も実施されました。まずは、WELL認証取得に向け支援を行ったpoint 0の副社長の豊澄 幸太郎氏とオカムラ オフィス環境事業本部の長谷川 修が、WELL認証や取得する意義について説明しました。続いて登壇した沖縄セルラー 菅 隆志社長(当時)は、これまでの具体的な取り組みを紹介し、「ウェルビーイングな働きかたをしっかり磨き上げていきたい。会社の業績が上がれば、地元沖縄にも還元でき、(沖縄経済の)課題解決につながる」と語りました。
ウェルビーイングにはソフトとハード、両軸の整備が必要
2022年以降、沖縄セルラーは新しい働きかたを実現するために、ソフトとハードの両軸で環境整備を進めてきました。ソフト面では、2023年に新人事制度を制定し、従来の年功序列からチャレンジを応援する実力主義へと変化しました。人材育成にも力を入れ、全従業員を対象としたDX研修、経営理念を学ぶフィロソフィ研修、各種e-ラーニングなどを用意。ほかにも、社長と従業員が直接対話するミーティングや定期的なエンゲージメントサーベイ(※2)を実施し、従業員のエンゲージメント向上にも力を注いでいます。また、新設したウェルビーイング室では、保健師と看護師を採用し、心身の健康にまつわる相談にのったり、セミナーなどを通じて積極的に情報提供したりしています。※2:従業員が会社や仕事に対して、どれぐらいのつながりを持っているのかを測定する調査のこと。
こうしたソフト面と同時に進めてきたのが、オフィス戦略としてのハード面の整備です。
「全席をフリーアドレスとし、業務に合った柔軟な働きかたができるようにしました。コミュニケーションを気軽に取れるミーティングスペースを随所につくり、座りっぱなしではなく立って仕事もできることで身体への負担を軽減する昇降デスクや、オンライン会議などができるワークブースも導入しています。最近は出社する人が増え、執務スペースが足りなくなってきたため、オカムラに相談し、2階に従業員が自由に使えるエリアを新たに設けました。家具を可動式にすることで、イベント用スペースなどとしても利用できるようにしました」(松本さん)
オフィスづくりの根底にあったのは「これまでより、もっと柔軟に働ける場をつくりたい」「行きたくなる/出社したくなるオフィスをつくりたい」という想いでした。
「多様な働きかたを実現するには、画一的なオフィスでは不十分だとわかっていました。ただ、具体的なアイデアがあったわけではありません。オカムラには『会議室が足りない』『可動式の家具を使いたい』など実現したいことを伝えただけですが、毎回それを具現化する最適なソリューションを提案してくれて、とてもありがたかったです」(松本さん)
オカムラ オフィス環境事業本部 フューチャービジネス推進事業部の長谷川 修は、2013年に沖縄セルラービルを新築したときから、同社のオフィスづくりに携わってきました。「単純にかっこいいオフィスをつくるだけなら、実は簡単です。でも、お客様の想いを理解し、お客様らしいオフィスをつくるのは非常に難しい。会社としての“ありたい姿”をどう実現できるか、そこをとことん考え、最良だと思う提案をしてきました」と振り返ります。
沖縄セルラーに特徴的なのは、物理的な「こんなオフィスをつくろう」ではなく、「経営理念を実現できる場を手に入れよう」という姿勢です。「その姿勢は10年前から変わっていません。社会や働きかたの変化、ウェルビーイングのようなその時々の経営課題と向き合い、アップデートし続けています」と長谷川。
現在、沖縄セルラーを担当している、オカムラ オフィス環境事業本部 沖縄支店 支店長の根岸 智之も、「空間と制度をバランスよくつくっているからこそ、10年以上経った今も、ビル竣工時に導入したシステムや設備がWELL認証の基準を多く満たし、今回最上ランクのプラチナを取得できたのでしょう」と述べました。
働きかたの変革やそれに伴うオフィスの全面リニューアルは、沖縄経済の課題である生産性の向上にもつながっています。たとえば、テレワークの導入は生産性に直結しますし、多様な人が集まりやすいオフィスではクリエイティビティも生まれやすくなります。「私自身がキャリア採用での入社ですが、前職と比べてかなり柔軟に働けています。最近はオフィス見学を希望する企業や自治体からの問い合わせも増えており、沖縄をリードする企業、という目指す姿を実践できつつあると実感しています」(松本さん)
働きかたでも沖縄をリードする沖縄セルラーですが、そもそもウェルビーイングな働きかたとは、「人によって違うもの」だと松本さん。「ライフイベントや考え方は一人ひとり違うので、会社が一つの型に当てはめられません。多様な働きかたやキャリアを選択できる環境をつくることが大事で、それが働きがいにもつながっていくはずです」と語ります。
今回のオフィス全面リニューアルでは、オカムラが提唱している心と体の調和が取れ活力が向上している状態である「WELL at Work(ウェルアットワーク)」の考え方も盛り込みました。
「ウェルビーイングの定義は、心身ともに健康な状態のこと。物理的な環境、すなわちハードだけでなく、制度や運用のソフトと両軸で回す必要があります。実際、WELL認証v2の評価項目も、半分程度はソフト面の評価であり、ハードを整えただけでは取得できません」と根岸が説明すると、「ハードだけでなく、ソフトも含めて働きかたを変えようとしているのが沖縄セルラーの特徴。オフィスをつくって終わりにしていない。ウェルビーイングを“推進”ではなく、“実現”している企業だと感じます」と長谷川も続けました。
沖縄セルラー “行きたくなるオフィス” ギャラリー
この先30年も進化し続けるオフィスであり続けるために
順調に新しい働きかたの実践へとシフトしている沖縄セルラー。「課題はまだたくさんありますが、ウェルビーイング室が先導して社内の課題を解決し、ひいては沖縄経済の発展・生産性向上へとつなげていきたいです」と松本さんは先の未来を見ています。リニューアル後のオフィスに対する従業員の声は、社長とのミーティングやエンゲージメントサーベイなどで随時ヒアリングしているとのこと。なかには「バランスボールに座って仕事をしてみたい」「オープンなコミュニケーションスペースでは打ち合わせがしにくい」といった声もあるそうですが、いろいろな意見があることは悪いことではありません。従業員の多様性の現れや、意見を言いやすい環境ということだと思えば、むしろ歓迎すべきことです。
「実際、できあがってみると意外と使われていないエリアや席もありました。そうした部分の改善は、できることからすぐ対応。引き続き、さまざまな声を聞きながら、より多様性をカバーできるオフィスにしていきたいですね。オカムラにも、実例の共有など多様なサポートを期待しています」(松本さん)
従業員のウェルビーイングや健康経営を実現したいという想いは、オカムラも同じです。
「オカムラが持つ『はたらき方』や『はたらく場』に関するノウハウや、少し先のトレンドもタイムリーに紹介していきたいです。私は最近まで福岡支店に長く在籍していましたが、オフィスの在り方は最新がすべてではなく、企業や地域によってさまざまだということを実感してきました。トレンドと地域で実践しやすい働き方が、必ずしも合致するわけではありません。全体的に、それぞれに合ったオフィスを自分たちでつくるという傾向になってきていると思います。これは終わりのない地道な活動でもありますが、とても大事なこと。沖縄という地域にあったオフィスの提案をしていきたいですね」(根岸)
今後はウェルビーイングと並び、イノベーションもますます大きな経営課題になっていくことが見込まれます。
「オカムラとしては、イノベーションを起こす活動や空間の在り方などの知見を積極的に提供していきたいです。沖縄セルラーは、新しいことに取り組み、従業員が最高のパフォーマンスを出せるよう、会社として最高の環境を用意するという意気込みを強く感じる会社です。従業員が出社したいと思うオフィスをつくろう、という姿勢が10年前から変わらないのがすばらしいと思いますし、今後も、目指す姿の実現に向けて、オカムラもご一緒できればと思っています」(長谷川)
格子状の外観が目を引く沖縄セルラービル。取材後に見学をさせてもらうと、執務スペースでは昇降デスクで立ち仕事をしている人、ミーティングスペースで気軽に立ち会議をしている人など、リニューアルしたオフィスが活用されている様子も見られました。執務スペース以外に、気持ちのよい光が差し込む食堂もにぎわっていました。栄養バランスに優れたメニューが日替わりで提供されており、毎日通う人が多いのも納得の充実ぶり。全体として働く人のことがよく考えられており、WELL認証v2で最高得点を取得したことがよく理解できました。オカムラにとっても、ウェルビーイングは大きなテーマです。今回の取材を通して、沖縄セルラーと同じゴールを目指しながら、今後も変わらず伴走していきたいというオカムラメンバーの想いも伝わりました。(編集部)