My Okamura Way Vol.8 「価値創造ストーリー」座談会②
2023年秋、オカムラはパーパスである「人が活きる社会の実現」をもとにした「価値創造ストーリー」を発表しました。この価値創造ストーリーは、オカムラグループの価値創造の仕組みをステークホルダーに伝えるものです。同時にオカムラのメンバーが日々の業務の中で価値創造に向けてどう取り組んでいくべきか、その方向性の指針として理解するための役割もあります。ストーリーの策定・検討にはさまざまな事業部の従業員が携わっています。前回に引き続き、策定メンバーへのインタビュー第2弾をお届します。今回は、社歴もキャリアもさまざまで立場や経験の異なるメンバーが集まりました。自分の仕事において「人が活きる社会の実現」につながると思うことや、新しい価値の創造に向けて今後チャレンジしてみたいことなど、ストーリーの根底にある「人が活きる」をふまえて、自分の言葉で語ってもらいました。
「価値創造ストーリー」とは
価値創造ストーリーは、経営理念「オカムラウェイ」をベースに、独自の価値観・強みを活かして新しい価値創造につなげていく取り組みの全体像を表現したものです。
源泉には、創業時より大切にしてきた「人を想う」という考え方があり、ここから「顧客との信頼関係」「顧客の課題を解決する力」「確かなものづくり」といったオカムラの強みが生まれてきました。これらの強みを活かして、オフィスをはじめ、店舗や物流倉庫、学校や病院など、社会のさまざまな空間に「人が活きる場」が日々つくられています。そして人が活きる場から、顧客、さらにはその先の社会へ「イノベーションの促進」や「働きがいの向上」などの価値が広がっていきます。このようにしてオカムラは新しい価値の創造、すなわち「人が活きる社会の実現」へチャレンジしていきます。
Profile
参加してくれたメンバーを紹介します。
川口 健太 (かわぐち・けんた)
働き方コンサルティング事業部
ワークデザイン統括部
リエイティブディレクションセンター
所長/クリエイティブディレクター
2005年入社。オフィスの空間デザイナーを経験後、タイ・Siam Okamura Internationalへ赴任、空間デザイナーのマネジメントも務める。現在はお客様に向けた働き方のコンサルティング、セミナーなどを通じた社内外への発信、組織開発など幅広く活動。プライベートでは、3人の子育てに苦労しながらも、楽しく奮闘中。
深野 竜志(ふかの・たつし)
商環境事業本部
リテイル・ソリューション本部
冷熱機器部 冷熱開発課 冷熱開発担当
2008年入社。商環境事業本部で、製品の企画・開発・デザインに従事。商品陳列什器やカウンターなどを手がけたのち、現在は冷熱機器部で冷凍冷蔵ショーケースを担当している。今ハマっていることは、子どもが参加するサッカークラブの試合観戦。
西原 眞子(にしはら・まさこ)
海外営業本部 海外東京支店 営業二課
2018年入社。オフィス営業本部 名古屋支店にて営業担当後、社内「グローバル人財育成制度」で実施する語学留学応募をきっかけに、海外営業本部へ異動。韓国や台湾、中央アジアなどのお客様へオフィス製品の営業を担当している。これからやってみたいのは、オカムラの華道部に入部して、いけばなにチャレンジすること。
「人を想う」が根底にあるから、誰かのために努力できる
――まず、みなさんが仕事をする上でベースとなる部分からお話をうかがいます。価値創造ストーリーで源泉となるのが、オカムラが創業時から大切にしてきた「人を想う」です。みなさんが考える「人を想う」とはどんなことでしょうか。
川口 健太(以下、川口):使う人を想いながら行動体験をデザインすることですね。かつては製品や空間をつくることがゴールになっていた時期もありましたが、やはりオフィス空間の主役は人ですから。
――意識が変化したきっかけはありますか。
川口:約6年半のタイ駐在です。希望して行ったのですが、行くからには現地へ何かしら価値を提供できければ存在意義がないと思い、本気で現地の従業員やチームのことを考えて行動することを心掛けていました。この経験をきっかけに、人という存在を一番に意識するようになりましたね。今は、私たちがデザインしたオフィスでお客様がいい仕事ができて、その企業が生み出す価値が向上し、結果的に社会がよくなるところまでイメージして仕事をしています。
深野 竜志(以下、深野):私は美大出身なので、制作した作品などを通じて相手を想って「伝える」ことは学生時代からやってきましたが、今思うと、学生時代は主観的な視点から伝えていただけだったかもしれません。
働くようになってから、お客様や一緒に仕事をするメンバーなど相手のニーズを把握したうえで、客観的にコミュニケーションをとることができるようになったと思います。
西原 眞子(以下、西原):製品を理解し、納得して購入してもらうために、営業としてできることの一つは「お客様のお客様は誰か」を意識することだと先輩に教わり、実践しています。
――西原さんの考える「お客様にとってのお客様」とは、具体的にどのような方ですか。
西原:お客様を企業単位で捉えればエンドユーザーですが、お客様を取引窓口のオカムラご担当者とすれば、その方の上司や決裁者も、ある意味でこの立ち位置にあると言えるのでは、と考えているんです。ご担当者をきっかけにオカムラ製品を購入いただくまで、企業内で多くの検討や手続きがあるはずです。窓口のご担当者から、その上司に「オカムラ製品を導入するとどんな効果があるか」わかりやすく伝えられるような資料を用意するなど、「お客様社内でスムーズに検討が通りやすくするために必要な情報は何か」「ご担当者の評価に貢献できるポイントは何か」などを、いつも考えながら提案をしています。
――立場や仕事で、想う相手や想い方はだいぶ違いますね。では、価値創造ストーリーの検討時、気づきや感じたことがあれば教えてください。
西原:事業部が違っても、みんな立ち返る先は「人を想う」だったので、同じ会社で働いている仲間であり、チームだと感じられました。これまで関わることのなかったいろいろな部門の人と意見交換できたのは、とてもよい経験でしたね。
深野:私が印象に残っているのは「オカムラは『いい人』が多い」という話。たしかに私も含め、周囲には職場を好きな人が多いと感じますが、それもお互いを想う気持ちがあるからかなと。だからこそお客様に寄り添おうとするし、こういった姿勢が、お客様から信頼につながっているような気がしています。
川口:「オカムラって、利他的だよね」という話も出ていましたね。実際、お客様の課題解決のために知恵と手間をかけ、新しい技術や製品を生み出してきた歴史があります。もしかすると「受け身」だと捉える人もいるかもしれませんが、個人的にはオカムラの利他的なスタンスは嫌いじゃないし、むしろ心地いい。誰かを想って努力し、その結果喜ばれて幸せを感じることは仕事の本質だとも思います。
「人が活きる場」は融合しながら多様になっていく
――「人を想う」、その先に生まれるのが、数々の「人が活きる場」です。オカムラは、オフィス、店舗、物流倉庫、公共施設、病院など多様な「人が活きる場」を手がけていますが、みなさんの今の業務にとってはどんな場所やシチュエーションでしょうか。深野:メインはスーパーマーケットです。商環境事業はスーパーマーケットやドラッグストアなど、オカムラ製品の入っているお店を買い物客として体験できるのがいいところだと思っていて、私も納品後の店舗へよく足を運びますね。最寄り駅から店まで歩きながら店舗の商圏(※1)を確認します。納品した製品や店の雰囲気が地域にマッチしていることを確認できると、改めて達成感を覚えます。
※1:小売店や飲食店などの店舗に来店する可能性が高いお客様が住んでいる範囲・エリア
西原:オフィス製品を担当することが多いですが、場としてはさまざまです。名古屋支店に所属していた時はオフィスだけでなく、病院や自治体施設も担当していました。海外営業本部では海外の空港のロビーや、美術館も担当しています。
事業部をまたいだ事例もあります。スーパーマーケットの売り場を商環境が、店舗スタッフ向けのバックヤードをオフィス環境がそれぞれ提案したり、物流倉庫は物流システム、オフィス部分はオフィス環境で提案したりといったケースです。
川口:私は「働く場」であるオフィスが主戦場ですが、コロナ禍以降、働く場所はオフィスに限らなくなっています。オカムラは「Work in Life」(※2)を提唱していますが、そう考えたとき、働く場はどうあるべきかという視点でデザインしています。ただ一方で、「オフィスで人を活かす」というのは少しおこがましいのかなとも思うんですよね。
※2:オカムラが提唱する「Life(人生)にはさまざまな要素があり、その中の一つとしてWork(仕事)がある」という考え方
――それはどういう気持ちからでしょうか。
川口:個人的には「仕事は人が活きる場そのもの」だと思っています。つまり、どんな場所にても、人は働いている時点で活きている。ただ、もし何か障壁があって、完全に活かしきれないのなら、それを取り除き、その人本来の輝きを取り戻せるようにするのが、オカムラの役割なのかなと思っています。
――そのために何をすればいいかを考えるには、「人を想う」ことがますます必要になりそうですね。では、この先、オカムラが手がける市場は、どんな風に広がっていくと考えていますか。
川口:点在する市場が増えていくというより、既存の市場が融合し、コラボレーションが増えていくと思います。最近だと、コワーキングスペースと託児所が一体化した施設などもありますよね。
深野:商環境事業部ではこれまでは「売り場づくり」をしてきましたが、これからは「売る場づくり」もしていきたいです。ちょうど今、「無人販売ケース」の企画検討を始めています。販売員がいなくても、買い物客がケース内の商品をキャッシュレス決済で購入できる仕組みで、とくにエンドユーザーとの接点が少ない地域の「作り手」と、日常の買い物に変化は欲しいがECだと実物がわからない不安のある「買い手」をつなぐものを想定しています。
――どんな使い方を想定したものなのでしょうか。
深野:例えばオフィスに設置することで、総菜といった食事などを提供でき、従業員の福利厚生が充実しますよね。同時に、地方の店舗が都市部で気軽に商品を販売する機会にもなると考えています。ふるさと納税などをきっかけに地方へ興味を持つ人も多い今、都市部との距離を縮め、地方創生への貢献にもつながります。まだ実証実験を開始という段階ではありますが、今後のビジネスに展開していけたらと、商環境のメンバーたちと取り組んでいます。
――なるほど。「売る場」の提案が、地域経済の活性化に貢献する可能性があるわけですね。では、西原さん、海外に向けての広がりはいかがでしょうか。
西原:オカムラの海外における存在価値はジャパンメイド、ジャパンクオリティの製品や空間デザインだと思うので、「オカムラ」というブランド名を聞いただけでそれを想起してもらえるよう、知名度を高めていきたいです。
利他的だけでない内発的な動機で、新しい価値を創造する
――この価値創造ストーリーは、みなさん自身の業務にどう活かせると考えていますか。川口:「人が活きる社会の実現」のためには、まずお客様に選んでいただき、実現する機会を得る必要があります。そして選ばれるには、個人レベルでも会社レベルでもいいので「共感」してもらうことが大事。そのために会社として語れるストーリーができたのはよかったと思います。私自身は外部向けのセミナー登壇やプロジェクトのキックオフなどで発言することも多いので、話す内容を考えるときの一つの指針にしていますね。
――普段の仕事で直接的に使えるのですね。
川口:はい。私のように直接使う機会はないオカムラのメンバーにとっても、価値創造ストーリーを自分の立場から見れば、普段の仕事が社会とどう関係しているかがわかります。どんな立場の人も自分の仕事が何につながっているのかが理解できれば、仕事に対する納得感が増すはず。日々の業務にプラスの効果をもたらすと思います。
西原:人によって価値創造ストーリーのどこに関わるかは違いますが、企業理念であるオカムラウェイというベースの上にいるのは同じ。今の仕事がどこに関わっているかを気にするより、価値創造プロセスの源泉である「人を想う」ことをしっかり続けていきたいです。
深野:製品の企画・開発も「人を想う」がブレなければ大きく間違うことはないと思っています。ただ、それを意識し続けるのは容易ではありません。価値創造ストーリーは意識の醸成に役立っていると思います。もちろん、意識するだけではダメで、大事なのはその先のアクションです。オカムラはチャレンジしやすい社風と言われるけれど、反面やって終わりということが少なくない気もしていて(笑)。今回は振り返りを継続しながら、最終的にはわざわざ意識しなくても、自然にオカムラメンバーそれぞれの中にあるものになっていったらいいですね。
――ありがとうございます。価値創造ストーリーは社外の発信や仕事をする上での意識醸成に役立ちそうですね。最後に、みなさんがこれから挑戦したいことを教えてください。
西原:営業はものづくりに直接携わるわけではないので、0から1の価値創造は難しいとしても、お客様に新しい価値観を提案することはできると思っています。今や多くの人の生活に欠かせないスマートフォンも、登場したての頃は価値をなかなか理解されなかったそうです。スマートフォン自体を開発したのはエンジニアですが、社会に浸透させていったのは営業やマーケティングでしょう。それと同様に、お客様に何らかの気づきを提供したり、新しい価値創造に向けたお手伝いをしたりすることが営業としての私の役割だと思っています。
――西原さんの立場だと、海外のお客様にも価値を提案できますね。
西原:そうですね。そのためにまずやりたいのは世界各地のオカムラのメンバーを横につなぐこと。「自分の仲間が世界中にいる」と思えると心強いし、オカムラで働いている意識が強くなって、「人が活きる」ためにどんな価値創造ができるか、そんな想いの底上げができると思っています。
川口:世の中にないものを創造するには、利他的だけでなく、ときには内発的な動機で動くことも必要だと思います。多様化するお客様のニーズにこたえるには、部門を超えていろんな人と話し、飛躍した発想を生み出すのが早道。今は部門を超えた連携や取り組みを推進していくことがミッションなので、引き続きしっかり取り組んでいきたいです。
深野:若い世代がもっと新しいことへ挑戦できる場をつくっていきたいです。新たなチャレンジをするには、日頃から自分たちの業務が関わる分野をよく観察することが大事。例えば、冷蔵コインロッカーのような新しくて、オカムラでまだ扱っていないものを目にしたとき、「オカムラでもできる、さらにいいものにできないか」と思えるかどうか。世の中全体を広く見て自由な発想を出せる人がもっと出てきてほしいですし、自分自身もそうなるために努力していきたいです。
インタビュー後記
3人が口をそろえたのは、オカムラで働く心地よさ。デザインでも、営業でも、国内でも海外でも「人を想う」姿勢は共通で、それが「従業員が活きる」ことにつながり、心地よい職場や働き方を叶えているのだと感じました。この先の価値創造に必要なものは「事業部を超えたコラボレーション」だというのも共通の認識です。顧客を思いやる利他的な動きに加えて、内発的な動機からのアクションが増えれば、オカムラが目指す「人が活き活きと働き暮らす」社会の実現に向けた、これまでにない価値のを創造につながるかもしれません。(編集部)
この記事で紹介した「価値創造ストーリー」を含む統合報告書は、こちらからダウンロードできます。