「人が活きる社会の実現」を目指す、株式会社オカムラ。ここでいう「人」は、世間一般の人々、顧客、そしてオカムラで働く私たち自身も含みます。このシリーズでは、「人が活きる」組織となっていくための、オカムラの進化や変革にスポットをあてて紹介します。
エヌエスオカムラ サステナビリティ研修レポート
今夏、グループ会社の株式会社エヌエスオカムラの拠点である岩手県釜石市で、従業員向けサステナビリティ研修が実施されました。釜石ではグループ会社があることに加えて、釜石市、株式会社かまいしDMC、日鉄興和不動産株式会社、オカムラの4者によるワーケーション事業を展開しています。
今回、釜石という地からオカムラグループが関わる二つの取り組みについて二回にわたりお伝えします。
前編では2023年8月25日~26日に従業員向けに実施した「サステナビリティ研修 in 釜石・エヌエスオカムラ」についてレポートします。
鉄とラグビーの街 釜石市にて
「サステナビリティ研修 in釜石・エヌエスオカムラ」
近代製鉄業発祥の地として、またラグビー日本選手権7連覇(1979-1985年)を達成した新日鐵釜石ラグビー部でも全国的に有名な岩手県釜石市。オカムラグループはここ釜石にエヌエスオカムラ(以下、NSO)という生産拠点を1991年より構えています。2011年3月に発生した東日本大震災での被災により操業停止を余儀なくされましたが、翌2012年、日本製鉄の敷地内に事務所・工場を移転、操業を再開しました。NSOでは主にデスクや物品棚・書架などを生産しています。オカムラグループの各事業におけるサステナビリティ推進に向けては、従業員一人ひとりの意識向上と行動変容が重要です。参加者がサステナビリティというキーワードを通しグループ会社を知り、仲間を知り、釜石の自然を体感する。各自の知識・理解・体験から、次のアクションを考えるきっかけとしたいー。こんな目的で昨年から始まった「サステナビリティ研修」。営業、生産、設計などさまざまな職種のメンバー約20名がNSOを訪れ、記録的な猛暑の中での実施となりました。昨年から始まり2回目の開催ですが、今回も参加者それぞれが深い学びを得ることができたようです。
プログラム① 「鉄」を知る
オカムラにとって身近な「鉄」、そしてグループ会社NSOを知る
研修1日目はNSO会議室にてスタート。まず迎えてくれたNSOメンバーから釜石、そしてNSOについての説明がありました。
会議室には、震災当時の被害状況や再建への歩みを記録した写真が展示されています。旧工場は津波で壊滅。震災翌年の2012年5月には新工場で操業再開しましたが、工場整備のためのコストがのしかかる中でのスタートでした。そんな中「省エネ法」による規制対象にもなったため、コストダウンやエネルギー使用量の削減を図るべく省エネ対策活動を展開、塗装ライン工程の抜本的なプロセス改革によるCO2 排出量削減に取り組みました。これが評価され、平成28年度の「省エネ大賞」省エネ事例部門経済産業大臣賞と、環境省「循環型社会形成推進功労者環境大臣表彰」を受賞しています。
この省エネ・CO2排出量削減への取り組みを知ったうえで実際に工場を見学し、あらためて効率化や省エネを継続する姿勢を実感することができました。
また、釜石市 文化スポーツ部 世界遺産課の森 一欽さんによる、鉄についての講話も設けられました。鉄の起源から日本の近代化で果たした役割など「鉄の歴史館」に携わる、まさに鉄のエキスパートからのお話は大変興味深く、皆ひきこまれて聞き入りました。スチール家具製造を主な事業とするオカムラの従業員として、鉄の町での学びをスタートするにあたっても、貴重な機会となりました。
プログラム②「釜石の出来事」に学ぶ
釜石鵜住居復興スタジアム見学と漁業体験も
NSO工場見学後は、観光地域づくりに携わる株式会社かまいしDMCの外部研修プログラムを受講しました。はじめに「震災の記憶」研修として、「いのちをつなぐ未来館」にてかまいしDMC担当者ご自身の震災時の経験談を交えながら、釜石に起きたことやその後の復興対応について話していただきました。
鵜住居(うのすまい)は津波被害を大きく受けましたが、近くにあった釜石東中学校では、震災発生後中学生が自発的に隣接する小学校の生徒も誘導し、直ちに高台へ避難。学校にいた生徒は全員無事に避難することができました。
当時中学生だった、研修に参加していたNSOメンバーも、鵜住居とは別の地区ですが、同様に子どもたちと一緒に避難したといいます。「中学校から山側へ移動する途中にある保育園で人手が足りなかったので、生徒が手伝うことになりました。園児の手をつないで一緒に避難したんです。避難所についてからもしばらく僕たちが園児をみていましたが、子どもの体温は高くて暖かいので、皆で交代して抱っこしていたのを覚えています。鵜住居地区での対応も含めて『釜石の奇跡』というよりは、すぐ避難することを小さいころから教わっていたから、身についていたんですよ」と、見学後に、自身の経験を話してくれました。
一方で、鵜住居地区防災センターは指定避難場所ではなかったにも関わらず大勢が避難してしまい、約160人が津波で亡くなるという事態も起きました。
二つの「釜石の出来事」を、防災や教育という視点から知ることで、参加者それぞれの心に響く機会となりました。
そして、2019年ラグビーワールドカップの試合も行われた「釡石鵜住居復興スタジアム」も見学しました。ここにはNSOとオカムラが手がけたスタジアムベンチがあるため、もちろん全員がベンチに大注目。オカムラグループと釡石の深いつながりがあらためてわかりました。
最後に漁港へ移動、地元漁師の方の案内で漁船に乗り、海上でほたての養殖やいわしのいけすを見学。作業体験として、わかめの芯と葉の部分に分ける作業、芯抜きにもトライしました。漁業の現状についてのお話も聞くことができ、釜石の自然を実感しました。
グループ会社のある場所を訪ね現地メンバーから生産現場を知り、被災地としての出来事を学び、自然豊かな環境に触れる。盛りだくさんのインプットを得ることができた一日でした。
今回研修受講者を迎える側であり、研修冒頭のオリエンテーションでNSOと釜石についての説明を担当したNSOメンバーに感想を聞きました。
管理部 総務課
東梅 大
サステナビリティ研修は今年で2回目の開催になります。私は昨年は部分的に参加しましたが、今回初めて、事務局の一員としてオカムラグループからの研修参加者を迎える立場となり、全てのプログラムに参加しました。研修中は私自身、新たな発見が多く、釜石の鉄の歴史やNSOの震災当時の話、三陸漁業の現状など、普段釜石市に住んでいても知らなかったことが多くありました。また、今回の研修の本質的な部分である「NSOの取り組みとサステナビリティの関わり」についても、より理解を深められたと思います。
今回私にとってメインの役割は「釜石の魅力と活気を伝えること」だったと思っています。誰かに伝えるということは、自分が知っていなければ成立しないと思います。今以上に釜石を知り、会社を知るためにも、積極的に学ぶ姿勢を大切にし、全国のオカムラグループに向けて発信していきたいと思います。研修を通して得たこの「知る」という感覚は今後の業務に十分に活かせそうです。
プログラム③「震災当時」を知る
震災当時のNSO避難経路を歩く。さまざまな視点からの気づきをシェア
研修2日目は、移転前のNSO旧社屋へ。移転前の工場は釜石湾のすぐ近くにあったため、震災時に津波で一階部分はほとんど全壊しました。今は残った部分を補修し、一部を倉庫として利用しています。
そして、旧社屋から震災当日の避難経路をたどり、当時従業員が向かった高台にある「薬師公園」まで歩きました。案内をしてくれるNSOメンバーから「当時、私たちが大勢で街中を避難移動する様子を見て、やはり避難したほうがいいんだ、と影響されて行動した人もいたかもしれない」と聞き、前日の「いのちをつなぐ未来館」での学びが思い出されます。
個人ではもちろん、組織の一員としても危機管理への意識を高めておくこと。体験した人の言葉を現地で、様々な側面から聞くことで、より深く伝わるものがありました。
最後に、研修の主催部門であるオカムラ サステナビリティ推進部リードのもと、気づきや学びをグループでディスカッション。サステナビリティという側面から共有しました。環境や震災、NSOの業務、自然や働き方や暮らしなどについて、多くの意見が出ました。
研修に参加したメンバーからのコメントを紹介します。
石田 美奈
今回の研修は上司からの勧めを受け、参加しました。釜石市役所の方が話してくださった鉄の歴史、地元の漁師さんが話してくださった海の貝毒のお話は、とても興味深いものでした。その中でもやはり震災のお話は他人事ではないと感じました。私は今まで鉄についてはオカムラで扱う製品などの「材料」という認識しかありませんでしたが、リサイクル可能な割合の高さや、同じ重さで計算すると水より鉄の方が安価になることを知り衝撃を受けました。また貝毒の問題については、貝類のエサとなるプランクトンで有害なものが原因で、冬になっても減少しにくくなっていることなど、地元の漁師さんにとっては死活問題であることを実際に聞くことができました。
今回の研修で、NSOメンバー及び釜石市役所のみなさん、漁師の方々と交流し、直接お話を聞くことができたことで、SDGsやサステナビリティがより身近に感じられるようになりました。
研修を終えて
普段は遠方のためなかなか訪問機会がないオカムラグループ拠点現地に足を運び、グループの仕事や人、その地域を知る。さまざまな部署や職種のメンバーと一緒に体感することでこそ得られる学びが多くありました。それぞれが自分の仕事、業務以外の部分にも活かせる要素を得ることができました。--------
前編はここまで。釜石・オカムラグループ企業NSOに訪問してのオカムラ従業員向け研修をご紹介しました。研修参加者の中には釜石到着日にワーケーション施設「Nemaru Port(ねまるポート)」をテレワークに利用した人もいました。ここは、釜石市、株式会社かまいしDMC、日鉄興和不動産株式会社、オカムラで進めるワーケーション事業の一環としてつくったものです。後編では、オカムラが官民協業で釜石で展開するワーケーション事業についてお伝えします。