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物流倉庫のリモートワークを実現!物流ロボットで効率化を実現する新たな物流ソリューション

2022.11.15

「人が活きる」社会の実現を目指す、株式会社オカムラ。そんなオカムラの最新トピックをお伝えするのが、この「オカムラを知る!」です。新製品の開発時のエピソードから、社内のちょっとした活動まで、オカムラグループのさまざまな取り組みを紹介していきます。

コロナ禍を経て、EC需要の伸びは右肩上がり。それにともない、物流倉庫も増えています。一方で、物流倉庫の人手不足が多くの企業で課題になっているといわれています。そんな課題をテクノロジーで解決しようとしているのが、オカムラのハイブリッド型の物流自動化ソリューション「PROGRESS ONE(プログレスワン)」です。

今回はPROGRESS ONE開発チームのインタビューをお届けします。話を聞いたのは、プロジェクトを率いる 執行役員 物流システム事業本部 マーケティング部長 山下佳一と、開発を担当する製品開発課 橋詰真太郎。PROGRESS ONEの特長や物流業界が抱える課題、さらにオカムラがめざす物流の未来まで語ってもらいました。
 

ロボットを遠隔操作! これまでにない発想の物流ソリューション

――まずはPROGRESS ONEがどのようなものか、橋詰さんにうかがいます。これまでの物流ロボットとはどういう点が違うのでしょうか。

橋詰真太郎(以下、橋詰):最初にお伝えしたいのが、PROGRESS ONEはロボット単体を指すのではなく、遠隔でもピッキング作業※1を行うことができるハイブリッド型の「物流自動化ソリューション」の総称だということです。自律動作をするだけの従来の物流ロボットと違い、オペレーターによる遠隔操作もできるハイブリッド型であるのが最大の特長。ロボット本体、ロボットに搭載するAI、オペレーターが操作する遠隔操作システムという3つの要素で構成されています。

※1:物流倉庫で出荷指示をもとに保管場所から対象の商品を選び出し、出荷用に集めること。
 
AI搭載ロボットを操作するオペレーターは遠隔操作が可能。物流倉庫の新しい働き方を実現
AI搭載ロボットを操作するオペレーターは遠隔操作が可能。物流倉庫の新しい働き方を実現

――なぜ、遠隔操作をできるようにしたのでしょうか?

橋詰:自律型ロボットの場合、ロボットがピッキングに失敗すると、人が現場へ行ってピッキングし直さなければなりません。PROGRESS ONEならオペレーターが遠隔で対象範囲を指定してピッキングを補助したり、ゲーム機で使うようなコントローラーでアームを操作してピッキングができたりします。つまり、オペレーターは物流倉庫にいなくてもよく、離れた場所でも働けます。これにより、従来は時間や場所、身体などの制約によって現場へ行って働くことが難しかった人に、働く機会を提供できるようになります。
 
物流システム事業本部 マーケティング部 製品開発課 橋詰真太郎
物流システム事業本部 マーケティング部 製品開発課 橋詰真太郎

――物流倉庫での働き方が変わるわけですね。オカムラの考える「人が活きる」環境づくりにもつながりますね。

橋詰:そうです。複数の物流倉庫を、自宅などの離れた場所から同時に管理できるため、オペレーター人員も少なくてすみます。なお、遠隔操作の動作データはクラウド上のグローバル学習サーバーに集約され、ロボットに搭載したAIが機械学習を継続的に行うため、失敗したものもいずれはピッキングできるようになります。使えば使うほど効率が上がり、さらなる業務効率化が図れる仕組みです。
 
開発中のPROGRESS ONE。右のアームには多指ハンド、左には吸着を装備
開発中のPROGRESS ONE。右のアームには多指ハンド、左には吸着を装備

――遠隔操作ロボットというと、なんとなく人型をイメージしていました。この形状にした理由はありますか?

橋詰:どちらかというと産業用ロボットのイメージで開発しています。現状、ECを想定し、物流倉庫業務の中でもとくに負荷が高いピッキング作業に特化させているので、脚はつけていません。とくに注力したのは2本のアームで、多指ハンドと吸着を使い分けて、さまざまな対象をつかめるようにしています。
 
多指ハンドは、対象を正確につかみとる
多指ハンドは、対象を正確につかみとる

橋詰:今後もピッキングの精度を高めていくために、この「つかむ」部分の開発には非常に力を入れています。いずれはピッキングだけでなく開梱や荷姿変換、検品、梱包など前後工程も開発していきたいですね。最終的には、自社開発のロボット以外にもこのAIを搭載できるようにして、利用シーンを広げていく想定です。
 

物流倉庫の人手不足、その要因のひとつはロケーション

――次に山下さんから、PROGRESS ONE開発のきっかけや物流現場が抱える課題をお話しいただけますか。
 
山下佳一(以下、山下):PROGRESS ONEの検討を始めたのは、2016年末です。EC市場が成長し、物流倉庫が全国各地に建てられていた頃です。物流倉庫は広大な面積を必要とするため、都市部ではなく、住宅地からも離れた場所に建てられることが多いのですが、そのロケーションから働く人がなかなか集まらないという問題がありました。物流倉庫を運営する企業によっては、カフェやコンビニ、託児所を併設するなど環境整備に力を入れていますが、日本は人口減少も進み、圧倒的な働き手不足。オカムラの物流システム事業で解決できることがあるのではと思ったのが発端です。
 
執行役員 物流システム事業本部 マーケティング部長 山下佳一
執行役員 物流システム事業本部 マーケティング部長 山下佳一

――コロナ禍以降、EC需要の増加に加えて、働き方も急速に変化しましたね。
 
山下:そうです。コロナ禍でリモートワークやオンライン会議は当たり前になりました。しかし、物流業界は基本的に現場に行かなければ仕事ができません。物流業界全体で人手不足は深刻です。私たちはマテハン(マテリアルハンドリング)機器メーカーですから、まずはイントラロジスティクス(社内物流)※2の効率化によって、物流業界の課題を解決し、社会に貢献したいと考えています。実際、コロナ禍以降、お客様からも「倉庫内の作業をできるだけ自動化したい」という相談が増えました。

※2:工場内での移動、工場から倉庫への輸送など、販売工程にのせる前の屋内における物流のこと。
 
ORVは、物流倉庫でカゴ車搬送が可能な自律移動ロボット
ORVは、物流倉庫でカゴ車搬送が可能な自律移動ロボット
――ここからはお二人に、そうした課題にどう対応しているかうかがいます。
           
橋詰:ロボットは倉庫業務の自動化に大きく役立ちます。すでに提供しているソリューションとしては、カゴ車を使った整列配置を自動化する自律移動ロボット「ORV(オーアールブイ):Okamura Robot Vehicle」のようなものもあります。

山下: 次の一手が、今回のPROGRESS ONEなのです。遠隔操作でリモートワークが可能になれば、子どもが小さくて数時間だけ働きたいという人が自宅でも働けますし、それこそ地球の裏側に住む人だって働けるようになるでしょう。地方にある物流倉庫の人手不足を解消するだけでなく、働きたいと思っている人に、その機会を提供できるようになります。
 
橋詰:加えて業務の内容も変えられます。倉庫業務には、バーコードの読み取りのような、比較的単純な作業も少なくありません。こうした作業をロボットで自動化・機械化できれば、今までその業務を担当していた人が、もっと別の仕事で能力を発揮できるはずです。
ロボットのようなソリューションが、物流現場の「人が活きる」に貢献すると二人は話す
ロボットのようなソリューションが、物流現場の「人が活きる」に貢献すると二人は話す

山下:PROGRESS ONEは物流倉庫の省人化に貢献できるソリューションですが、もちろん導入後も「人」が関わることがなくなるわけではありません。たとえば、AIを活用してロボットに学習させるのは人の仕事ですし、機械化の計画を立てる人や戦略を練る人も必要です。ロボットで自動化を進めることが、人の仕事を奪うわけではありません。むしろ、より創造的な仕事、より「人が活きる」仕事を生み出せるのです。
 

物流システム事業に息づく、ロボット開発のDNA

――なぜ、オカムラがロボット開発に挑戦しているのでしょうか?

山下:オカムラはオフィス家具のイメージが強いと思いますが、すでに1970年代に産業用ロボットを開発し、自社の生産ラインに使っていたのです。そうした知見を持った優れた技術者たちが、そのスキルを活かして世界初の多段式独立水平回転棚「ロータリーラック」を開発しました。1978年のことです。ロータリーラック※3はあらゆる業界に導入され、現在もオカムラの物流システム事業の成長を支えています。近年では、多数のロボットがコンテナを入出庫する「AutoStore(オートストア)」など、自動倉庫も積極的に展開しています。

※3:ロータリーラックについては、「オカムラDNAタイムライン 自動倉庫からロボットまで! 合理化・省人化をめざすオカムラの物流システム」を参照

――そうした流れの先に、PROGRESS ONEの開発があったわけですね。

山下:そうです。動く製品をつくるDNAやスキルは社内で受け継がれていましたから、時代にあった形でロボット開発を再スタートしたわけです。ロボットの活用をはじめとする「物流DX※4」は、今や物流業界に必須の流れであり、取り組まなければ生き残っていけないでしょう。SDGsに取り組むオカムラとしても、こうしたテクノロジーの活用には大きな意味があります。たとえば、PROGRESS ONEは、物流倉庫の生産性や持続可能性を向上させますし、リモートワークで誰でも働ける環境を実現することで、働き方改革やダイバーシティ採用にも貢献できると考えています。

※4:ロジスティクス・デジタルトランスフォーメーション。機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでの在り方を変革すること。

 

オカムラが切り拓く物流の未来とは?

――この先の物流事業についてうかがいます。今後の物流現場はどう変化していくと思いますか?
 
山下:これから注目を集めるキーワードのひとつに「Lights out warehousing(ライツアウト・ウエアハウジング)」があります。「明かりの消えた倉庫」という意味で、ロボットによって完全自動化された無人の倉庫を指します。ただ実際には完全な無人化は相当難しく、実現はかなり先になると思いますが、極限まで減らすことはできるでしょう。PROGRESS ONEは、この実現に大きく寄与できるものだと考えています。世界の潮流に乗り遅れないために物流倉庫の完全無人化をめざすというよりも、むしろオカムラならではの最適かつユニークなチャレンジで業界をリードしていきたいと考えています。
 
「物流業界のトップ企業ではできない、斬新な発想で挑戦し続けたい」(山下)
「物流業界のトップ企業ではできない、斬新な発想で挑戦し続けたい」(山下)

―――具体的に、どのような事業展開を考えていますか?

山下:物流システム事業は、オフィス環境事業、商環境事業に並ぶオカムラの3大柱のひとつですが、オカムラの事業において、また物流業界の立ち位置としても、トップを守るのではなく、攻めていく「チャレンジャー」という立場。だからこそ、思い切った挑戦をし、ゲームチェンジャーになりたいと思っています。他社がやらないこと、誰もが未体験なことを真っ先に考えて、お客様にとって最適でユニークな提案をしていきたいですね。PROGRESS ONEも他社の追随を許さない独自性の高いものだという自負があります。

――物流システム事業には、どこかベンチャー的なマインドがあるのですね。

山下:そうですね。ただ、「人が活きる」環境づくりをめざすオカムラとしては、企業にとって最も重要なリソースは「人」であるというのが大前提です。「人が活きる」ためにどうやってつくっていけるか。それが私たちの開発やすべての仕事のベースになっています。
 
――橋詰さん、PROGRESS ONEのこの先について教えてください。
 
橋詰:今はPROGRESS ONEの要であるAIの物体認識の精度を高めている段階です。この先、実証実験を経て、事業化に向けて進んでいます。
 
「最先端を自分で切り拓いていけるのが、この仕事の最大のおもしろさ」(橋詰)
「最先端を自分で切り拓いていけるのが、この仕事の最大のおもしろさ」(橋詰)


――PROGRESS ONEの開発に参加して、どんな可能性を感じていますか?

橋詰:PROGRESS ONEは物流業界を越えていろいろな活躍をする可能性を秘めていると考えています。私自身、ロボット開発はまったく未経験ながら、社内公募を見て2年前に参加しました。現在も試行錯誤の日々ですが、世の中にまだないものをつくっている実感を得られて、とても充実しています。こうした未来をつくることに興味がある、貢献したいと思っている人が、私たちの仲間になってくれたらうれしいですね。
 

PROGRESS ONEは、事業化に向けて、日々進化し続けている
PROGRESS ONEは、事業化に向けて、日々進化し続けている

インタビュー後記

実はインタビュー中、「PROGRESS ONEの進化のために、社内にもっと仲間がほしい」「PROGRESS ONEを活かせる協業先も増やしたい」と、二人は何度も語っていました。そこからは感じたのは、記事で山下が語っているように「物流業界のチャレンジャー」としての情熱です。また、印象的だったのが、二人が「人」の重要性を強調していた点です。ロボットによる省人化は、働く人を排除するのではなく、人の働き方を変えることにつながります。ついつい「ロボット」や「AI」など、先進的な言葉が先行しがちですが、PROGRESS ONEという新たな物流ソリューションの本質は、物流倉庫における「人の働き方」を再提案する点にあると実感しました。(編集部)
 

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